
和紙の原料となるフキとコウゾを混ぜた水に簀(す)桁を5、6度くぐらせる。水が滴り落ちる音が響く中、繊維が薄い真綿のように桁の上に残り、日差しに輝いた。「温度や湿度で出来栄えが変わる。一期一会です」。札幌市の「蝦夷和紙工房 紙びより」の東野(とうの)早奈絵さん(49)は紙すき作業を終え、笑顔で話す。
道内に自生する植物の繊維を主に使う「蝦夷和紙」をつくる職人。「北海道ならではの素材でつくり、和紙をもっと身近に感じてほしい」との思いを込める。深緑色が美しいフキ、野性味ある茶色が特徴のオヒョウニレ、ベージュ色に近い光沢を放つ亜麻…。紙をすき、乾燥させて完成するはがきやA3判の大きさの蝦夷和紙の表情は豊かだ。