「沖縄」と「全国」の間に横たわる深刻なギャップ

日本復帰50年、計4500人を対象にした世論調査で分かったこと

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1972年5月15日、復帰を祝う横断幕がかけられた那覇市の国際通り

 沖縄が日本に復帰した1972年5月15日から、50年が経過した。復帰前年に、後の初代沖縄県知事は「基地のない平和な島を強く望む」と日本政府に伝えたが、望みはかなわないまま。半世紀たった今も在日米軍施設の負担がのしかかっている。共同通信はこの機会に、沖縄県の1500人と、47都道府県の3千人を対象にそれぞれ世論調査を実施した。その結果を見ていくと、「沖縄」と「全国」との間に横たわる、深刻なギャップが浮かび上がってきた。(共同通信=明石謙一)

 ▽復帰は良かったけれど、満足な歩みではなかったという沖縄

(沖縄調査)

 世論調査はいずれも郵送で実施し、3月1日に調査票を発送、4月11日までに届いた分を集計した。有効回答は、沖縄県民対象(沖縄調査)で905人、全国では1958人だった。47都道府県の調査(全国調査)結果にも沖縄県分の回答が含まれているが、その割合は非常に小さい。「沖縄調査」と「全国調査」の2つの調査結果を比較してみた。

 沖縄調査でまず聞いたのは「日本に復帰して良かったと思うか」。「良かった」は94%を占め、「良かったとは思わない」は5%だけだった。

 次の質問は「復帰後の沖縄県の歩みに満足しているか」。すると、「満足していない」が55%と過半数。「満足」は41%と少数派だ。

 なぜ満足していないのか。理由を問うと、最多は「米軍基地の整理縮小が進んでいない」の40%。次いで「日本国憲法の下でも、人権が尊重されない状況が続いている」が23%。3番目は「期待したほど経済が発展していない」の20%、「子どもの貧困が深刻なままだ」の13%と続いた。

基地負担が他の都道府県に比べて不平等と思うか(沖縄調査)

 米軍基地の存在に沖縄県民が大きな不満を持っているのは当然と言える。沖縄は国土面積の0・6%に過ぎないが、在日米軍施設の約7割が集中する。

 他の都道府県と比べて「不平等だと思うか」を4択で尋ねると「不平等」「どちらかといえば不平等」を合わせて計83%。「思わない」「どちらかといえば思わない」の計16%を圧倒した。

 沖縄県民の思いを集約すると次のような感じになる。

 「日本復帰は良かったが、その後の歩みには満足できない。理由は進まない基地の整理縮小が大きく、本土と比べて不平等」

 ▽総論賛成も…全国調査

 ただ、この不平等感は沖縄の人々だけの思いではなさそうだ。47都道府県民が答えた全国調査で同じ問いをしたところ、「不平等」「どちらかといえば不平等」は計79%に上った。

沖縄県の基地負担は不平等だと思うか(全国調査)

 不平等と感じているのであれば、是正するべきではないだろうか。そこで「米軍基地の一部を他の都道府県で引き取るべきか」を全国調査で尋ねると、「賛成」「どちらかといえば賛成」が計58%と過半数に達した。ところが、「自分の住む地域への移設」に対する賛否を質問すると、「反対」が計69%に上る結果となった。

(全国調査)

 ここまでの国民の意識を要約すると、沖縄の過重な基地負担には胸を痛め、本土への移設にも賛意を示すが、自分の近所に来られては困る―と読み取れる。米軍基地だけでなく「迷惑施設」全体に共通する感覚と言えそうだ。

 ▽2つの特徴 

 2つの世論調査結果からは、沖縄と全国の間に存在するギャップを少なくとも2点挙げることができる。

 一つ目は「基地をどうするか」という点だ。基地の扱いについて次の4択で聞いた。「全面撤去するべきだ」「大きく減らすべきだ」「現状のままでよい」「増やすべきだ」

 すると、全国調査、沖縄調査ともに最多は「大きく減らす」でいずれも過半数(全国51%、沖縄58%)だった。ただ、問題は「現状のままでよい」が沖縄調査では26%だったのに対し、全国調査では40%も占めた点だ。

 この傾向は、住宅や学校が周囲に密集し「世界一危険な米軍基地」と言われる米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に関する回答でも共通する。

住宅地に取り囲まれた沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場=2月

 政府が進める移設先の名護市辺野古について、2019年の県民投票で「反対」が7割を超えた後も工事を続ける政府を「支持しない」は、沖縄調査で67%、全国調査で64%と似たような数字になった。ところが、支持しないと答えた人に代案を尋ねると、普天間を「引き続き使用」と回答した人は、沖縄調査では5%だったが、全国調査は20%に上った。

米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古沿岸部=2月

 ▽衝撃的な数字

 ギャップの二つ目は、経済格差だ。この点に関する認識の違いは、基地問題以上と言える。

 沖縄県は1人当たり県民所得が全国最下位の状況が続く。原因として、27年間の米国統治の影響で製造業が発達しなかったといった指摘もある。

 沖縄調査では、他の都道府県との間に格差が「あると思う」と回答した人は93%にも上った。一方、同じ質問を全国調査ですると、「思う」は53%。「思わない」という回答も47%もあった。この数字には、専門家も驚いた。熊本博之・明星大教授は「衝撃的だ。この意識のずれが、基地問題が解決しない要因の一つではないか」と指摘している。

 ▽温度差は沖縄にも

 今回の世論調査の結果、ギャップは「沖縄」と「全国」との間だけでなく、沖縄の中にも存在していることが見えてきた。世代による違いで、特に日本復帰前、米軍統治下の沖縄を知っている60代以上と、下の世代の意識の差は大きい。

 前述の通り、沖縄調査で、復帰後の歩みに満足していない理由について尋ねたところ「米軍基地の整理縮小が進んでいない」(40%)が最多だった。これを年代層別でみると、高年層(60代以上)では51%だったのに対し、中年層(40~50代)は36%、若年層(30代以下)は30%にとどまった。

(沖縄調査)

 若年層が基地問題に次ぐ2位に挙げたのは「子どもの貧困が深刻なままだ」で26%だった。中年層では「期待したほど経済が発展していない」で27%で2位になっている。ちなみに、高年層は貧困が6%、経済は10%であり、年層による違いが大きいことが分かる。

 ▽若年層、中年層は経済や教育も重視

 沖縄調査では「沖縄発展のために何に力を入れるべきか」(二つまで回答)も尋ねた。すると、全体では教育が48%と最多。「米軍基地の移設や撤去」は32%で、3位だった。

(沖縄調査)

 ここでも年層別に見ると明らかな違いがある。「教育」と回答したのは若年層の57%、中年層の48%に上ったが、高年層のトップは「基地」の49%だった。

 全国最悪レベルとされる貧困を解消するためには、教育によって人材を育てること、という若・中年層の思いがうかがえる。

 沖縄調査では、さらにこんな2択も投げかけた。「沖縄の経済にとって米軍基地の存在は、雇用などを生み出すメリットと、発展の邪魔になるデメリットのどちらが大きいか」。メリットと答えたのは46%、デメリットは51%と意見が割れたが、ここでも年層による違いは出た。「メリット」と答えた高年層は36%にとどまった一方、若年層では58%、対照的な結果になった。

 ▽終わりに

 「あなたは、沖縄県が太平洋戦争で米軍の統治下に置かれ、1972年に日本に復帰したことを知っていますか」。どちらの調査も、導入部でこう質問した。全国調査では「知っている」92%に対し、「知らない」が8%に上った。

沖縄の日本復帰後も継続使用された米軍嘉手納基地で、金網越しに爆撃機を見つめる住民ら=1972年10月

 この「知らない」と答えた人々に注目し、ほかの質問に対する回答をみてみた。すると、沖縄と本土の経済格差が「あるとは思わない」と答えた人が65%に上り、本土への基地受け入れに「賛成」と答えた人は計40%にとどまった。いずれも、有効回答全体の傾向と大きく異なっている。地元移設への「反対」も計84%に上った。

 そして、この「知らない」層は全国の若年層では14%を占めている。 今回の2つの世論調査では、沖縄復帰を巡って、とりわけ基地問題について、沖縄県民や国民の世論をすくい取る試みをした。目に留めてくれた皆さんが、興味を持つきっかけになり、沖縄問題について知っていただければ、ありがたいと思う。

  ▽調査の方法

 層化2段無作為抽出法により、沖縄調査は沖縄県の有権者の縮図となるように、県内125地点から18歳以上の男女1500人を調査対象者に選び、郵送法で実施した。

 返送総数は955。記入不備や、対象者以外の人が代理回答したと明記されたものなどを除いた有効回答は905で、回収率は60・3%。

 全国調査は全国250地点から18歳以上の男女3千人を選んだ。返送総数は2025。有効回答は1958で、回収率は65・3%だった。 

 ▽全国世論調査結果

(数字は%。小数点第1位を四捨五入。このため合計は100%にならないことがある。「0」は0・5%未満。かっこ内は沖縄調査の結果)

 問1 あなたは、沖縄県に対してどのようなイメージを持っていますか。最も強いものを選んでください。

 米軍基地の島  16

 多くの人が悲惨な体験をした戦地  25

 海などの自然を楽しむ観光地  34

 独特な伝統文化が残る街  23

 歌手や俳優など有名芸能人の出身地  0

 その他  2

 無回答  0

 問2 あなたは、沖縄県が太平洋戦争で米軍の統治下に置かれ、1972年に日本に復帰したことを知っていますか、知りませんか。

 知っている  92(96)

 知らない  8(4)

 無回答  0(0)

 問3 あなたは、沖縄県と他の都道府県との間で経済格差があると思いますか、思いませんか。

 経済格差があると思う  53(93)

 経済格差があるとは思わない  47(7)

 無回答  1(0)

 問4 沖縄県には在日米軍専用施設の約70%が集中しています。あなたは、沖縄県にある米軍基地をどうするべきだと思いますか。

 全面撤去するべきだ  6(14)

 大きく減らすべきだ  51(58)

 現状のままでよい  40(26)

 増やすべきだ  1(1)

 無回答  2(1)

 問5 日本は戦後、米国と日米安保条約を結び、同盟関係を築いてきました。あなたは、日米の同盟関係をどう思いますか。   

 今よりも同盟関係を強化するべきだ  22(21)

 今の同盟関係のままでよい  65(50)

 同盟関係を薄めるべきだ  11(22)

 同盟関係を解消するべきだ  1(4)

 無回答  2(3)

 問6 あなたは、沖縄県の基地負担が他の都道府県と比べて不平等だと思いますか、思いませんか。

 不平等だと思う  34(53)

 どちらかといえば、不平等だと思う  46(30)

 どちらかといえば、不平等だとは思わない  11(8)

 不平等だとは思わない  8(9)

 無回答  2(1)

 問7 沖縄の米軍基地の一部を他の都道府県で引き取るべきだという意見があります。あなたは、どう思いますか。

 賛成  15(38)

 どちらかといえば賛成  43(37)

 どちらかといえば反対  29(15)

 反対  11(9)

 無回答  2(1)

 問8 あなたの住む地域に米軍基地が移設されてくるとすれば、どう思いますか。      

 賛成  6

 どちらかといえば賛成  23

 どちらかといえば反対  42

 反対  27

 無回答  2

 問9 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡っては2019年、沖縄県の県民投票で反対が多数を占めましたが、政府は移設に向けて埋め立て工事をしています。あなたは、政府の姿勢を支持しますか、支持しませんか。   

 支持する  34(30)

 支持しない  64(67)

 無回答 3(3)

 問10 (問9で「支持しない」と答えた人に聞く)あなたは、普天間飛行場について、どうするべきだと思いますか。

 沖縄県内の名護市以外の場所に移設する  9(3)

 沖縄県以外の日本国内に移設する  23(30)

 日本国外に移設する  26(28)

 移設工事を中止し、普天間飛行場を閉鎖する  21(35)

 普天間飛行場を引き続き使用する  20(5)

 無回答  2(1)

 問11 あなたは、現在の中国に対して親しみを感じますか、感じませんか。

 親しみを感じる  1(1)

 どちらかといえば親しみを感じる  7(8)

 どちらかといえば親しみを感じない  38(39)

 親しみを感じない  50(47)

 無回答  3(5)

 問12 あなたは、尖閣諸島周辺で中国船が領海に侵入していることについて危機感がありますか、ありませんか。

 大いに危機感がある  57(60)

 ある程度、危機感がある  34(32)

 あまり危機感はない  6(7)

 まったく危機感はない  1(1)

 無回答  2(1)