「完全島原産アサリ」養殖へ道筋 来年度から生産本格化 物産市で試験販売

ワカメ養殖いかだにつるされていたアサリ入りの籠を水揚げする島原漁協組合員ら=島原市沖

 長崎県島原市の島原漁協(吉本政信組合長)は、有明海で採取したアサリの浮遊幼生から稚貝を育てて養殖する「完全島原産アサリ」の生産に道筋をつけた。2023年度からの本格養殖を目指し、今月14、15日に開かれる物産市「島原城大手門市」(市役所周辺)で試験販売する。
 漁業者の所得向上と自然環境の再生、水産資源の回復へつなげる狙い。市耕地水産課などによると、外国産の稚貝を使わない完全国産のアサリ養殖は国内でも珍しいという。
 同漁協の若手組合員たちが18年、島原市沖のワカメ養殖いかだを活用し、アサリの稚貝を籠に入れて海中につるす「垂下式養殖」を提案。アサリは毎年4~5月ごろと9~10月ごろにかけて産卵し、海中で受精した卵は幼生となる。約2週間、海を浮遊して着底するが、外洋に流されると多くが死滅する。
 同漁協は19年、県などの技術協力を得て、有明海での幼生採取を開始。砂利を入れた網袋「採苗器」(縦50センチ、横30センチ)を浅瀬に設置し、幼生の効率的な着底と生息場所の確保を促す。採苗器内の密度を調整し、浅瀬の場所を移しながら、約1年半かけて稚貝に育てる。採苗器での育成は、鳥やエイの食害を防ぎ、波や潮流による幼生の流失を抑える効果もある。現在、約100個を据えている。

アサリを選別する関係者=島原市宮の町

 約2~3センチの稚貝に成長すると、籠(直径約40センチ、高さ約20センチ)に移し替え、ワカメ養殖いかだでの垂下式養殖に移行する。海中の不純物を吸着するアサリによって、ワカメの色が良くなる効果があるという。
 同漁協は昨年10月、5キロ入りの籠20個をいかだに初めてつるした。4月上旬、大半の籠を水揚げした後、冷凍処理。実入りが良く、砂抜きが不要な点が関係者に好評だった。
 吉本組合長は「2年後の春に販売を始め、新たな島原の特産品にしたい。アサリは海を浄化する役割もあり、養殖で有明海の環境が良くなれば一石二鳥も三鳥もある」と期待する。
 試験販売は50袋限定。1袋200グラム入り300円。


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