帰国から20年…地村保志さんが進展せぬ拉致問題に危機感「歴史の話になる」  福井県で救う会総会、北朝鮮の現状にも言及

総会後、報道陣の取材に応じる地村保志さん(右)と森本信二会長=5月11日夜、福井県の小浜市働く婦人の家

 福井県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(66)が5月11日夜、小浜市働く婦人の家で開かれた北朝鮮による拉致被害者・特定失踪者の支援組織「救う会福井」の総会に出席。帰国から20年が経過しようとする中、拉致被害者家族だけでなく、北朝鮮に残された被害者自身の高齢化が進んでいると指摘し「今解決しないと歴史の話になってしまう。政府は『拉致問題は最重要課題』というが、(具体的な)動きは見えない」と危機感を示し、迅速な行動を求めた。

 10月に帰国から20年を迎える地村さんは「北朝鮮での生活が本当にあったのかという錯覚に陥るくらいの歳月がたった」とあいさつ。「政府が動かないと拉致問題は進展しない」と述べた上で「家族会の思いや、拉致被害者の立場に立って救出を訴えたい」と力を込めた。

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 地村さんは総会後、報道陣の取材に応じ、北朝鮮の現状について「軍事パレードを見ると、自分がいたころと変わっていない」とし、指導者が代わっても体制に変化がないとの見方を示した。自身の今後の活動については「拉致問題を知らない若い世代に向けた啓発講座を引き続き行いたい」と話した。

 総会には森本信二会長(66)をはじめ、顧問の松崎晃治小浜市長ら約30人が出席。冒頭、保志さんの妻の富貴恵さんの兄で、4月に亡くなった浜本雄幸さんに黙とうをささげた。本年度の活動計画として、新型コロナウイルスの影響で開催できなかった福井県集会を11月、3年ぶりに開くことを決めた。森本会長は「決して諦めないという思いで、拉致被害者と家族の皆さんに帰国の喜びを味わってもらえるよう頑張っていきたい」と話した。

 総会は新型コロナ禍で中止が続き、3年ぶりに開催された。

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