復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月13日「1ドル=350円で交換」―琉球新報アーカイブから―

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年5月13日の琉球新報1面のトップは、「1ドル=305円で交換/平均相場に『政治加算』/免れぬ経済混乱/給付金は309億円」との見出しで、政府は復帰に伴う沖縄のドル-円通貨交換に伴う交換レートを正式に閣議で決めたことを伝える記事を掲載している。記事では「360円を訴え続けた県民の要求にほど遠く、基準レートの308円以下のため、県民の不満は強い」と沖縄側の受け止めを伝えている。
 関連記事で隣接には「沖縄は新たな復帰不安/一般庶民は二重の痛手」との見出しで、記者の解説記事を載せている。記事の中では「今回の交換レートは、資産の減価を一層進めることになり、沖縄経済は復帰によってさらに混乱と地盤沈下を余儀なくされている。これは単なる経済問題にとどまらず復帰に対する県民感情をさらに暗いものにする重大な政治問題といえる」と指摘している。
 さらに関連で「県民無視に怒り/通貨交換県民要求協/政府の措置に抗議」との見出しで、1ドル=360円での交換レートを求めていた沖縄の通貨交換要求県民協議会(会長・平良良松那覇市長)が政府決定に抗議声明を出したことを伝えている。屋良朝苗主席も「要求通らず遺憾」と語ったことも紹介している。
 毎日新聞社が琉球新報の協力を得て実施した沖縄の世論調査の結果も掲載している。「根強い自衛隊への不信/生活不安訴える/『沖縄政策に不安』が67%」との見出しで、県民の不安が依然根強い様子を伝えている。「沖縄の人と本土の人とは者の見方、考え方が同じか」との質問には、本土では「同じ」「ある程度同じ」が合わせて56%だったのに対し、沖縄は「あまり同じではない」「同じではない」が合わせて52%となっており、本土と沖縄の意識の落差を示している。
 また「米民政府が解散式」との記事のほか、「〝沖縄統治は成功〟ラ弁務官が記者会見/返還後も基地機能不変」との見出しで、最後の高等弁務官、ランパート氏が離任に先立った会見で米国による沖縄統治の成果を強調したことを紹介している。記事の中で「在沖米軍部隊の機能は安保の条項に従って行われる。しかし、現在もたれている米軍の諸活動は復帰後、たいした変化はない」との発言を紹介している。
 
 
 
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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。

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