「6月までが危ない」コロナと飢餓で金正恩政権に最大の危機

北朝鮮の朝鮮労働党は12日、金正恩総書記の司会の下、中央委員会第8期第8期第8回政治局会議を開催。首都・平壌で新型コロナウイルス感染者が発生したことが確認された。北朝鮮が、国内での感染者発生を認めるのは初めてだ。

朝鮮中央通信によれば「国家非常防疫指揮部と当該の単位では去る5月8日、首都のある団体の発熱者らから採集した検体に対する厳格な遺伝子配列分析の結果を審議し、最近、世界的に急速に伝播しているオミクロン変異株『BA.2』と一致すると結論した」という。

そして、金正恩氏はこの席上で「全国の全ての市、郡で自分の地域を徹底的に封鎖し、事業単位、生産単位、生活単位別に隔絶した状態で事業と生産活動を手配して、悪性ウイルスの伝播空間を抜かりなく完璧(かんぺき)に遮断することについて述べた」という。

北朝鮮は新型コロナの世界的流行の当初から、極端に厳しい防疫措置を敷いてきた。コロナ感染が疑われる家族を自宅に閉じ込めたり、市民に食糧確保の時間も与えないまま都市封鎖を強行したりして、多数の餓死者を発生させた。

また、防疫規定の違反者に対しては、処刑を含む厳罰で臨んだ。

そして、遂にはそのような都市封鎖が、全国規模で行われるのだ。阿鼻叫喚の様相を呈すであろうことは想像に難くない。

ただでさえ、北朝鮮国民は未曽有の困難の中にある。

北朝鮮では、毎年春から初夏にかけて春窮期に突入する。前年の収穫の蓄えが底をつき、人々が飢餓に苦しむ時期だ。合法、非合法の貿易や国内の商業活動が盛んに行われていた数年前なら、市場で食べ物を買い求め、乗り切ることもできた。しかし、コロナ以降に状況は一変した。

政府が国境を封鎖し、貿易を停止させたために、食糧や農業に必要な物品などが外国から入ってこなくなり、この時期の食糧不足がより深刻化したのだ。そして上昇傾向にある穀物価格が、人々をさらなる飢えへと追いやっている。

韓国デイリーNKが行っている定期物価調査によると、今月1日の時点で、コメは平壌で5100北朝鮮ウォン、新義州(シニジュ)で5300北朝鮮ウォン、恵山(ヘサン)5500北朝鮮ウォンで取引されている。(※いずれも1キロの価格、1000北朝鮮ウォンは約20円。以下同)

コメ価格は先月初旬に5000ウォンを突破して以降、高止まりしている。

コロナ鎖国に入った2020年、その翌年の春季(3月初旬〜5月初旬)の穀物価格と比較しても、今年が最も高い。2020年春にはコメ1キロの価格が、平壌4700ウォン、新義州4680ウォン、恵山4991ウォン、2021年春には平壌3720ウォン、新義州3890ウォン、恵山4200ウォンだった。

デイリーNKの内部情報筋によれば、巷では「6月までが危ない」「最大の危機だ」との声が上がっているという。

食糧不足と高値により、都市・農村を問わず餓死者を出すほどの状況になっているが、人々はジャガイモや麦の収穫が始まる初夏まで耐えるしかないのだ。

「人民班(町内会)は、6月にジャガイモが出回り始めればコメ価格が下るだろうから、それまで何とか耐えようと言っている。ジャガイモを国家がすべて持っていくのではなく、庶民に少しでも配給されるのか。それによりコメやトウモロコシの価格が下がるかが重要だ」(デイリーNK内部情報筋)

もしかしたら金正恩政権は、これから最大の危機を迎えることになるのかもしれない。

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