長崎県内 コロナ自宅療養 大幅増 「薬の配送」費用、人手足らず薬局悲鳴

発熱や喉の痛みなど症状に合わせて処方されている薬。費用や人手の不足などで配送が課題になっている

 新型コロナウイルス感染者の増加に伴い、自宅療養者が1月中旬以降、大幅に増えている。投薬は症状悪化を食い止める鍵になっており、感染者宅へ薬を配送する頻度は高まっている。そのため長崎県内で最も感染者が多い長崎医療圏の調剤薬局では、配送にかかる費用と人手が足りない状態に陥っている。
      ◇
 「夜7時半に(医療機関から)処方の指示を受け、配送し終わったのは10時という日もあった」「患者さんの自宅まで片道30キロ、車を走らせたこともある」
 長崎市で調剤薬局を経営する薬剤師の男性は、少し疲れた表情ながら「大変だが、感染して体調が悪い人に薬を届けるのは使命と思っている」と続けた。
 長崎医療圏では、今年3月から1年間の配送費用として前年の実績を基に国の予算がついた。車が横付けできる場合はタクシー、狭い場所ならバイク便に配送を依頼。夜間や交通の便が悪い場所には薬局スタッフが直接届けており、患者に負担がかからない対応を心がけてきたという。
 ただ、流行第6波は感染者がこれまでと比較にならないほど多く、高止まりした状態で長期化。入院が必要になる重症、中等症の患者の割合が少ない一方、自宅療養者は第5波(公表数で県内最多は400人台)までと比べ桁違いに増えた。このため1年間の予算は約2カ月でほぼ底をついた。県によると、11日午後7時現在の自宅療養者数は3395人に上る。
 県薬剤師会は県に、長崎市薬剤師会は長崎市に現状を報告すると、市は1回につき上限1500円の補助を約束した。関係者は「素直にありがたい」と話すが、課題は残る。
 最も懸念されるのは日曜や祝日の対応だ。休日の当番薬局は長崎市内で5~10カ所ほど。感染者と診断し自宅療養で投薬が必要と判断した医師は、自宅近くの調剤薬局に処方を依頼する。ただ休日は当番薬局が近くにない場合があるという。
 遠距離の場合、配送料は1500円では足りず、差額は患者の自己負担となる。薬剤師からは「負担が大きくなると『薬はいらない』という患者さんが出かねない。服薬せずに症状が悪化してしまわないか」と危惧する声が上がる。現状では薬局側が配送するケースが多く、休日はスタッフの人数が限られ、夜間の配送も生じている。患者や家族に取りに来てもらうことも可能だが、感染症という性質上、あまり現実的ではない。
 薬剤師の男性は「予算が底をついた以上、患者さんにも協力してもらいながらやれることをやっていくしかない」。ただ薬局側の努力だけでは限界がある。さらにゴールデンウイークが終わり、新規感染者は増加傾向。男性は「これ以上増えると必要な薬を必要なタイミングで受け取れない人が出てきかねない」と懸念する。


© 株式会社長崎新聞社