老舗旅館「つるや」が加賀屋グループに事業譲渡…福井県のあわら温泉 事業承継打診し合意、屋号変えず雇用継続 

加賀屋グループに事業譲渡したあわら温泉旅館の「つるや」=5月10日、福井県あわら市温泉4丁目

 あわら温泉の老舗旅館つるや(福井県あわら市温泉4丁目)は5月10日、石川県七尾市の和倉温泉で旅館を経営する加賀屋グループに事業譲渡したと明らかにした。後継者不在のつるや側が事業承継を打診し合意した。従業員の雇用は継続し、屋号「つるや」として営業する。

 つるやは、芦原温泉開湯翌年の1884(明治17)年創業の老舗旅館。三笠宮家や常陸宮家といった皇室のほか、多くの著名人が宿泊した。客室は20室で定員120人。

 加賀屋は1906(明治39)年に創業。加賀屋グループとして石川県内に5軒の旅館事業を展開し、手厚いもてなしで知られる。

 つるやによると、社内や身内に後継者がおらず、人手不足も十数年前から慢性的に続いていた。5代目の平山泰弘さん(66)が社長に就いた25年前には40人以上の従業員がいたが、現在は4割減少。新型コロナウイルス禍により、単年の売り上げが3~4割減となるなど、経営状況も悪化していた。

 事業承継先として、2年ほど前から加賀屋グループを含め、県外数社を検討。その中で、つるや従業員や取引先、歴史あるもてなしなどを継承してもらえ、人材や営業力に秀で、旅館経営のノウハウが豊富な加賀屋グループと協議を進め、合意に至った。

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 売却額は明らかにしていてない。同日付で新社長には加賀屋グループの小田與之彦社長が就任し、つるやの平山社長は会長に就いた。

 平山会長は福井新聞の取材に「あわら温泉の中で旅館を廃業させることなく、つるやの屋号を残し従業員を守りたかった。営業が支障なく継続可能なうちに、事業承継したかった。タイミング的にも新幹線開業前に行えてよかった」と話した。

 加賀屋グループが石川県以外で旅館を運営するのは初めて。担当者は「加賀屋より長い歴史を持つ、つるやのもてなしを評価した。経営方針を変えず運営していきたい」と述べた。

 ■加賀屋 和倉温泉で1906年(明治39年)創業。旅館事業は加賀屋、松乃碧、あえの風などを経営。全国で日本料理店8店舗、洋菓子の製造販売なども展開する。グループ全体の年商は140億円、従業員800人。加賀屋は地上20階、約1450人の収容人員を持つ全国最大級の旅館。全国の旅行会社が選出する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」では計40回1位を獲得した。

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