新幹線一択の東京 ↔ 静岡間をあえて高速バスを使うワケとは(京王バス)

新幹線での移動が便利な東京~静岡間ですが、高速バスも毎日複数ルート運行されています。
どのような需要があるのか、実際に乗車して確かめてみました。静岡発 → 新宿行き 高速バス・夜行バスの最安値便はコチラ!## 高速バスなら乗り換え不要 バスタ新宿~静岡便

東京と静岡市内を公共交通機関で移動する場合、ほとんどの人は新幹線を利用すると思います。JR静岡駅の新幹線の時刻表は、上下線とも日中は1時間に3本の列車が停車します。この内訳はひかりが1本、こだまが2本です。のぞみが止まらないのはもちろんですが、実はひかりも1時間に1本しか止まりません。

コロナ禍以前、実はこの静岡停車のひかりに乗客が集中し、午前中の下り指定席はかなり混雑、ということも珍しくありませんでした。対するこだまは自由席が多いこともあり、指定席を取らなくても座り放題のことが多いようです。東京駅と静岡駅間の所要時間はひかりがほぼ1時間、こだまでも約1時間20分で、体感よりも差がありませんね。

このように「新幹線一択」と思われがちな東京〜静岡駅間ですが、高速バスも、静岡駅~バスタ新宿間だけに限っても、京王バス・ジェイアール東海バス・JRバス関東・しずてつジャストラインの4社が運行しています。本数も、上下線とも各社あわせて14便も運行されています。その内訳は上り便は午前中に8便、対する下りは午後から夜にかけてが11便です。午前中の便で東京に出て用事を済ませ、夕方の便で静岡に帰る、という使い方を想定しているのかもしません。

目的地が新宿の場合、新幹線は東京駅で中央線に乗り換える必要がありますが、高速バスの場合は、もちろん乗り換え不要で直接新宿駅(バスタ新宿)に到着します。

3,000円で東京に行くことが可能

今回は実際に静岡 → バスタ新宿便を利用し、どんな客層でとのような需要があるのかを、実際に乗車して確かめて見ました。

乗車したのは、京王バスが運行する4328便です。4328便は、新静岡バスターミナルを17時30分に発車し、バスタ新宿に19時12分に到着します。その運賃は3,000円(土休日と金曜日は3,100円)。静岡駅 → 東京駅 → 新宿駅を新幹線の自由席と中央線で移動した場合は5,940円ですので、約半額で移動できることになります。更に、「特割」を利用すると2,600円(土休日と金曜日は2,700円)で乗車できるので、その差は更に広がります。

高速バス新幹線 ※1出発17時30分(新静岡バスターミナル)17時41分(静岡駅)到着21時12分(バスタ新宿)19時13分(新宿駅)※2所要時間3時間42分1時間32分 ※2運賃3,000円5,940円

※1・・・新幹線ひかり514号・東京行 ※2・・・東京駅乗換の場合

快適に過ごせる新静岡バスターミナル

静岡便の始発はJR静岡駅ではなく、静鉄ジャストラインの駅である商業施設、「新静岡セノバ」内にある「新静岡バスターミナル」です。新静岡駅は、JR静岡駅から徒歩5分程度ですので、今回は始発の新静岡バスターミナルから乗車しました。

静岡駅新幹線改札から北口を望む(上)。地下通路でH出口へと進む。

JR静岡駅から新静岡バスターミナルへ向かう場合は、JR静岡駅北口から地下通路を利用します。階段を下りそのまま進み広場を抜けます。その先にある松坂屋を左に曲がり、H出口から地上にでます。道なりに進み御幸町の交差点を右折、次の三叉路を渡ると正面奥に新静岡セノバの建物が見えます。

新静岡セノバ。

商業施設である新静岡セノバの1階にはローソンが、地下1階にはしずてつストアやファストフード店があるので、乗車前の準備もここだけで済ますことができます。

新静岡セノバ右手が新静岡バスターミナル。

新静岡バスターミナルは1階の右側に位置します。

新静岡バスターミナルののりば案内図。

のりばは全部で6つあり、1番のりばから5番のりばは、しずてつバスが路線バス用として使用しています。6番のりばが、静岡県内外に向けての高速バス用ののりばです。

新静岡バスターミナルの待合室。

前述の通り、新静岡バスターミナルは商業施設内にあり、外と通路もガラスで仕切られているのため、雨の日や風が強い日でも快適です。また、待合室も完備しているので早めに着いてもゆっくりバスを待つことができます。

新静岡バスターミナル6番のりば。

17時21分発のしずてつエクスプレスの相良営業所行きが出発した次の便が、今回利用予定の17時30分発の4328便です。のりばには10人程度人が待っていましたが、その次に出発する浜岡営業所行きの利用客のようです。

新静岡バスターミナルで出発を待つ京王バス(中央)。(敷地外より撮影)

場内にある待機所から、京王バスの三菱ふそうのエアロエースが出てきました。停車位置を合わせた後、運転手が降りてきて「バスタ新宿行き利用のお客様~」と声をかけます。私が名乗り出てスマホの予約画面を見せ、乗車名簿と照らしあわせた後、乗車します。どうやら新静岡バスターミナルから乗車するのは私だけのようです。(一人貸し切りバス状態でウキウキしていたのは内緒です。)

4列シートながら快適な車内

車内は、4列シートの一般的な高速バスの車両です。ヨコ4名×9列で乗客は36名乗車できます。最後部にはパウダールーム(お手洗い)が設置されており、万一のときも安心です。余談ですが、以前別の高速バスに乗車した際「安全面の考慮し、一般道を走行中はお手洗いの使用はお控えください」といったアナウンスがありましたが、今回はありませんでした。同様に、飲食に関するお願いなどもありませんでした。

京王バスの車内。標準的な4列シートだ。奥はトイレスペース。

座席は1D、運転手のすぐ後ろの席です。この席は、運転席との仕切り板があるためつま先が狭いことがありますが、切り欠きでスペースを確保しており狭さは感じませんでした。ちなみに、座面先端からこの仕切り板までは約35cmあり、膝周りも余裕がありました。今回は隣の席も後ろの席にも乗客がいなかったため、より快適に過ごせました。

シートピッチは標準的ながら特に不満はない。

各席には100Vのコンセントがありました。ACアダプターなどがあれば、スマホやPCの充電も可能です。

各席に装備されるACコンセント。2口タイプなので更に便利だ。

[(https://ryohi.guide/bus/search/shizuoka-tokyo/shizuoka-shinjuku/bus-code_288/)

静岡駅 → バスタ新宿の京王バスを予約する

定刻どおり新静岡バスターミナルを出発

バスは定刻17時30分に出発しましたが、車内の時計はまだ17時29分で、「あれ?早発?」と思いましたが、時計が30秒ほど遅れていたようです。

すぐに次の停留所である静岡駅北口に到着します。バス停は北口のロータリーにあります。運転手が車外でチケットの確認と大きな荷物を収納します。ここからは6名が乗車しました。サラリーマン風の方、ご年配の女性など客層は様々で、多くはひとりでの乗車でしたが、夫婦とおぼしき方も一組いました。バスは定刻どおり17時35分に出発しました。

収納されていた液晶モニターが降りてきて停留所が表示される。

国道1号線を東に10分ほど進み、次の停留所である東静岡駅南口に停車します。ここで乗車する人はいませんでした。この時漠然と「このあと静岡インターから東名にのるのかな?」と考えていましたが、一向にその気配はなく、ひたすら東へと進みます。後でわかったことですが、途中のバス停が少なくすぐに東名に乗るルートの便もあるようです。

次の停留所は草薙駅南ですが、ちょうど帰宅ラッシュ時ということもあり、道が混んでいます。定刻を5分ほど過ぎた18時00分に到着しました。ここからは1名が乗車しました。

次の停留場である草薙一里山を通過し、桜橋駅前へと向かいます。混雑する道を進みますが、ここでも乗車する人はいませんでしたが、時刻は18時10分、すでに40分間乗車していることになります。

清水駅前に停車する。

次の停留場は最後の乗車場所となる清水駅です。ここからは4名が乗車しました。こちらの客層も様々ですが、うち2名は夫婦での利用のようです。おそらくですが「東京に行くために、一度静岡へ出て新幹線に乗り換えるのが面倒なので、高速バスを使う」層が一定数いるのかもしれません。清水駅は定刻の9分遅れ、18時20分に発車しました。

東名を一路東京へ

18時28分に清水インターチェンジを通過し、東名高速道路を走行します。途中、車内の自動音声で足利サービスエリアで休憩することが伝えられています。夜の帳が下りた東名の交通量は、やや混雑程度でしょうか。エアロエースはときおり追い越し車線を走行するなどし、ペースを確保します。

19時14分に御殿場インターチェンジを通過、19時15分頃に足柄サービスエリアに到着しました。サービスエリアの慢性的な駐車場不足が話題となる昨今、高速バスの駐車スペースの確保はどうするのだろうかと思っていたのですが、カラーコーンで仕切られた高速バス専用の駐車スペースが用意されており、そこに駐車しました。

足柄サービスエリアの高速バス専用駐車場に駐車する。

駐車する前に、「出発時刻は19時35分です」と運転手からアナウンスがありました。標準的な休憩時間は20分間のようです。私が見た限り、10名が降車して休憩をとったようです。

設備充実の足柄サービスエリア

足柄サービスエリアには24時間営業のおみやげコーナーにくわえ、同じく24時間営業のローソンもありますので、買い物に困ることはありません。

足柄サービスエリア。

特筆すべきは、おみやげコーナーのとなりにあるレストラン時之栖。一般的な定食などのメニューに加え、静岡名物の「しぞ~かおでん」のバイキングコーナーが設置されており、お好みのネタをテイクアウトできます。

足柄サービスエリアのしぞ~かおでんコーナー。

実際、休憩した乗客のうち2組がしぞ~かおでんをテイクアウトし、車内に持ち込んでいました。もしかすると、この便のヘビーユーザーなのかもしれません。

誰ひとり集合時刻に遅れることなく、バスは予定通り19時35分に出発しました。

無料Wi-Fiの実力を試す

このバスには無料Wi-Fi(無線LAN)が提供されています。実際に試しましたが、接続は非常に簡単で、スマホのネットワーク設定画面から「HighwayBUS-Wi-Fi」を選択するだけ。パスワードを入れる必要もありません。

Wi-Fiの設定画面。「インターネットに接続」を押して右の画面が出れば接続成功。

ただしこのWi-Fi、この日は速度が遅く、足柄SAを出発直後の山間部で条件は悪かったものの、数回計測したスピードテストでは軒並み「低速」「非常に低速」でした。

スピードテストの計測結果。複数計測したが結果は変わらず。

具体的には、Twitterのタイムラインの画像が表示されたりされなかったり、という感じでした。ちなみに、計測場所はやや東京寄りでしたが、手持ちのLTE端末では「高速」で接続されました。

東名から首都高へ

途中、東名江田バス停で1名が下車し、東京料金所を20時30分に通過しました。自動アナウンスで用賀パーキングでも降車できることが伝えられますが、前後して運転手からは「何らかの理由により、一番左のETCレーンが閉鎖されている場合は通過します」とアナウンスされました。確実に下車できる保証がないのは辛いですが、こちらを利用する方はいなく、20時35分頃に通過し、首都高3号線へと入ります。

池尻ランプで246号線におり、渋谷方面へ進みます。道玄坂上交差点を左折し、渋谷駅(渋谷マークシティ)に到着しました。

渋谷マークシティで3名が下車した。

時刻は20時48分、定刻は20時47分ですので、遅れをほぼ取り戻した計算になります。ここでは、3名が下車しました。20時50分に渋谷マークシティを出発し、旧山手通りから新宿へと向かいます。甲州街道を通り、終点の新宿バスタに無事到着しました。

バスタ新宿に到着した京王バス。よく見ると号車とナンバーの数字があわせてある。

時刻は21時07分、定刻は21時12分ですので、遅れを完全に取り戻しました。下車時、運転手さんに話を聞くと、平日の乗車人数は「だいたいこんなもの」だそうで、根強いニーズがあることがわかりました。

乗車時間は約3時間半で、「思ったよりあっという間」というのが正直な感想でした。おしりや腰が痛くなることもなく、何よりもトイレがあることは、大きな安心でした。1列目の席だったこともあり、走行中は多少の揺れを感じましたが、中央部にであればまた違った乗り心地だったと思います。またバスには定員36名に対して実際には12名前後の乗車でしたので、シートを広く使えてリラックスできました。

乗車記はバスの運行や他のお客様の迷惑にならないよう、気をつけて撮影を行っております。
予約時のナゾが解けた??

乗車前にネットで席の予約をしたのですが、そこでひとつの疑問が生じました。どの日も、たとえ数ヶ月先であっても、4人までしか予約できないのです。コレは京王バスのサイトを見ても同じ状況でした。残りの32席はどうするのだろうと思ったのは当然です。

実際に乗車するとその疑問が解けました。「新静岡バスターミナルから乗る人の定員が4名」だったのです。どうも乗るバス停によって座席を区分けしているようで、例えば静岡駅から乗車した方は皆A・B列の前方から中程に乗車していました。もしかすると、足柄SA停車時の点呼をやりやすくする配慮なのかもしれません。
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