昨年、25年ぶりにパ・リーグチャンピオンに輝いたオリックスが、今季は一転苦戦を強いられている。
5月12日現在チームは16勝22敗の4位。首位の楽天とは11.5ゲーム差をつけられている。
チーム打率(2割6厘)と同本塁打12は12球団ワーストで、チーム防御率(3.01)もリーグ5位だから、現在の順位もうなずける。
中嶋聡監督も、どこから手をつければいいのかお手上げに近い状態だ。
現時点でエースの山本由伸、昨季13勝を挙げてブレークした宮城大弥をはじめ、打線の中心である吉田正尚、杉本裕太郎、T・岡田ら主力が軒並み1軍を離れている。
山本と宮城は疲労を考慮した一時的離脱だからいいが、吉田はコロナ感染、T・岡田は右ふくらはぎの故障、杉本に至ってはコロナに加えて打撃不振の抹消だ。
昨年は首位打者の吉田に、本塁打王の杉本がライバルチームを悩ませたが、クリーンアップ不在では得点力も上がらない。
目につくのが戦力の底上げの失敗である。昨年の優勝から1段階、チーム力のアップを目指す球団は、新外国人選手の獲得と若手の成長に期待する。
ところが、ふたを開けてみると期待の新外国人であるブレイビック・バレラは打率2割台と低迷。投手でもジェイコブ・ワゲスパックは未勝利、11日の日本ハム戦では、クイックモーションができず5回までに5盗塁を許すお粗末ぶりを露呈した。
ジェシー・ビドルこそ中継ぎで3勝しているが、チームの救世主とまではいかない。
加えて、昨年レギュラーの座をつかんで優勝に貢献した紅林弘太郎、宗佑磨らの若手野手が伸び悩んでいる。
中でも「中嶋チルドレン」の秘蔵っ子と言われる20歳の紅林は、今季のクリーンアップ定着が期待されたが、現在地は打率1割台と低迷している。
なぜここまで誤算が続くのか。たどり着くのは連覇の難しさだ。
前年最下位のオリックスがリーグ覇者になった昨年はいくつもの奇跡のドラマがあった。夏前のセパ交流戦から始まった11連勝はチーム37年ぶりの出来事だった。
シーズン終盤には山本が投げれば勝利の無敵状態が続き、ゴールテープを切った。前年まで2軍暮らしの長かった杉本が32本塁打でタイトルを獲得できるなど予想もできなかった。
そこには2軍監督を経験した中嶋監督の巧みな用兵と人心掌握術があった。
しかし、伏兵的存在だった昨年と、チャンピオンチームとして迎える今季では立場が大きく異なる。
優勝チームは日本シリーズを戦う分、他の球団より疲労が残りオフのトレーニングにも工夫が必要となる。お祝いやマスコミへの出演なども増える。
山本や宮城らのエース級が5月の時点で疲労を考慮されて、一時的とはいえローテーションを外れるのは、そうした事情があったのだろう。
杉本の打撃不振は、自らの打撃をもう一段階上げようと打法改造に取り組んだのが裏目に出た格好だ。
去年の日本シリーズでヤクルトの徹底した内角攻めに苦しんだ。そこで苦手克服のため自主トレからキャンプと、バットを内側から出す新打法に取り組んだが消化不良のまま泥沼にはまっていった。
相手球団のマークも当然厳しくなる。4月10日のロッテ戦では佐々木朗希に完全試合を喫した。ライバルチームは当然エース級をぶつけてくる。これも前年覇者の宿命だ。
早くもペナントレースの正念場を迎えたオリックスだが、希望のデータもある。
昨年の同時期(38試合消化)の成績は14勝17敗7分けで、今季同様に借金生活に苦しんでいた。再び流れをつかんで反転攻勢に出る可能性は十分にある。
荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル
スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。