【橋下徹研究⑥】音喜多議員に告ぐ――無理な擁護は怪我のもと|山口敬之【永田町インサイド WEB第6回】 なぜ、音喜多参議院議員は本来「入札」と訳すべき単語を「提供」と改竄したのか。音喜多氏が上海電力の日本語サイトと中国語サイトの矛盾を知った上で無理な擁護をするために「提供」と意訳したのであれば、音喜多氏は橋下徹氏のみならず上海電力まで擁護したことになる――。

「陰謀論」と決め付け、橋下徹を擁護

日本維新の会の国会議員が、上海電力の大阪市のメガソーラー事業に関する参入問題について、橋下徹前大阪市長を擁護する発言をし始めた。

私はてっきり、日本維新の会と橋下氏は現在は基本的には関係がないと認識していた。だから上海電力の咲洲メガソーラーへの不透明な参入経緯などについて、橋下氏を名指しで批判する一方、「維新」には一切触れて来なかった。今のところすべての疑惑が市長時代の橋下氏に収斂されていたからだ。

ところが、この問題について音喜多駿氏や足立康史氏といった日本維新の会所属の国会議員が、橋下市長(当時)には責任も問題もないと主張し、音喜多氏に至っては私の主張を「陰謀論」と決め付けた。

事実を示して問題点を指摘している私の記者活動を「陰謀論」というのであれば、私はその国会議員と徹底的に戦わざるを得ない。

そして、上海電力を咲洲メガソーラーに参入させたことを「全く問題がない」と主張している橋下氏を擁護し、外国企業のインフラ事業参入について何の対策も講じようとしない国会議員や国政政党は、日本のインフラ事業を守るという政治家としての最も大切な仕事よりも、政党の創立者の肩を持つことを優先する「エセ保守政党」と見做す。

大阪市長としての橋下氏の不適切な行動については、私はいくつもの証拠と証言を得ている。今後順次公開して、公論に是非を問う所存だ。

それでも日本維新の会の所属議員が橋下氏擁護を続けるのであれば、橋下氏のしたことを是認・追認したものとして遠慮なく批判させていただく。

音喜多議員の誤った主張

音喜多氏は5月10日、YouTubeに動画をアップロードしたが、その内容は橋下氏を徹底的に擁護する内容だった。例えば、こんな具合である。

・上海電力が大阪に招致されたとホームページに記載している点について

「大阪がわざわざ中国の企業を招き入れているじゃないか(という疑惑)については、単なる翻訳の問題。Google翻訳をかけるとこのプロジェクトは大阪市から提供されたものですという翻訳文になります」

「外国語翻訳の幅の中の問題なので、しかも、上海電力側が自分で言っているだけ。大阪市が我々が上海電力を招致したという記録が残っているんだったら問題。上海電力と維新や橋下徹が裏で繋がって悪い企みをしている根拠にはなり得ない」

この音喜多という人物の主張は、多くの点で根本的に間違っている。

音喜多議員のトンデモ弁明①

上海電力のHPの日本語サイトを見てみよう。

上海電力日本株式会社(以下「上海電力」)は、日本の法務局に登記した日本で事業を行う企業である。

日本の企業のプレスリリースは日本語が原本となる。そこに「大阪市によって招致いただいたもの」と明記してある。

日本で事業をする企業なのだから、中国語のサイトに何が書いてあろうと、原本たる日本語での表現とは無関係だ。例えばSONYやトヨタがアメリカで事業を展開する場合、英語表記に誤りがあったからといって、「日本語サイトには本当のことを書いています」と言って済まされるはずがない。

しかし、この音喜多なる日本維新の会の国会議員は、中国語のサイトの記述を引き合いに出して日本語サイトを全否定し、「招致ではない」と主張しているのである。

上海電力が中国企業であることを前提に、中国語サイトがオリジナルであり、日本語サイトは従属的なものだとの認識の上で誤記を容認したのだ。

音喜多氏は日本で事業をする中国企業が、中国の言葉と論理で事業を行うことを是認したと言える。
なぜ音喜多氏はここまで露骨に上海電力寄りの姿勢を示すのだろうか。

音喜多議員のトンデモ弁明②

上海電力の中国語サイトでは、咲洲メガソーラーについてはこんな表記になっている。

上海電力は中国語サイトでは「招标」と書いてある。これは「入札」「入札を募集する」という誤解のしようのない単語である。

だから音喜多氏が中国語の原文の「招标」を「招致」と誤訳したと主張するなら、「大阪市の入札」とするのが正しい。

念のためGoogle翻訳にかけてみても「招标=入札」。

「招标」には「提供」という意味はない。ところが、音喜多氏は「招标」を「提供」と、Google翻訳が表示したと主張している。

念のため当該文をGoogle翻訳にかけても、提供ではなく入札と出た。

なぜ、音喜多氏は本来「入札」と訳すべき単語を「提供」と改竄したのか。

それはもちろん、私がかねて指摘しているように、上海電力は入札には参加しておらず、中国語サイトの表示が虚偽記載だからだ。

上海電力は中国語サイトでは参加してもいない入札によって咲洲メガソーラーに参加したかのようなあからさまなウソを書く一方で、日本語サイトでは正直に「大阪市に招致された」と書いていたのだ。

音喜多氏が上海電力の日本語サイトと中国語サイトの矛盾を知った上で無理な擁護をするために「提供」と意訳したのであれば、音喜多氏は橋下氏のみならず上海電力まで擁護したことになる。

一体、音喜多氏と橋下氏はどういう関係なのだろうか。そして音喜多氏と上海電力はどういう関係なのだろうか。

いずれにしても、音喜多氏はウソの上にウソを塗り固めて、その上で私の取材結果を陰謀論呼ばわりしたのであって、全く看過できない。謝罪と訂正を要求する。

トンチンカンな主張で露呈した2つの闇

音喜多氏の主張は、全く筋が通らないだけでなく、2つの重大な疑惑を顕在化させた。

音喜多氏が「上海電力は大阪市に招致されていない」「招致という表記は入札の誤り」だと主張するのであれば、動画を撮る前に上海電力側に抗議して日本語表記を「招致」でなく「入札」と訂正するようを求めるのが筋だろう。

なぜ上海電力の誤記を正しく書き直させるというアクションを取らないまま、上海電力の日本語表記の誤りを擁護するような動画を撮影して公表したのか。音喜多氏は上海電力に何か弱みでも握られているのだろうか。

もうひとつの闇は、国政政党「日本維新の会」と橋下氏の関係である。

橋下氏は3月末まで維新の法律顧問を有償で務めていたが、4月以降は「無関係」という立場を橋下氏も維新側も表明している。

しかし、音喜多氏の動画を見る限り、橋下氏を擁護する意図は明白だ。例えばこんな部分だ。

上海電力をはじめとした外国企業が、重要なインフラ産業・事業に参入しているのは大阪だけでなく全国で起こっていることは多くの人が認めていることであります。もし、これを防ぎたい。外国企業が入ってくるのは問題だというのであれば、大元の国の法律、制度設計に問題があるわけですから、自治体として出来ることは限られている。

ちょっと待って欲しい。音喜多氏は日本維新の会所属の国会議員だ。

2019年7月から国会議員をやっている音喜多氏は、上海電力が日本全国で次々と大規模メガソーラー事業に参入している事態に対して、3年間何をしていたのだろうか。

言うにこと欠いて「外国企業が入ってくるのは問題だというのであれば、大元の国の法律、制度設計に問題があるわけですから、自治体として出来ることは限られている」というコメントが、国会議員の口から飛び出してくるとは、呆れてものも言えない。

音喜多氏は、国会議員として日本のインフラを守る意思も行動力もないことを自ら明らかにしたのだ。

音喜多氏の国会議員としての本性についてはよくわかった。

問題は、他の日本維新の会所属の国会議員だ。橋下氏を擁護するあまり「問題は自治体レベルでなく国政」と言いながら何のアクションも取らないのであれば、その政治家と政党は上海電力の日本での事業拡大を是とし、日本のインフラの安全を確保する意思のない集団だと自ら明らかにしていることになる。

私は、橋下氏が上海電力を参入させた経緯について、数多くの情報を持っている。そして上海電力は大阪市の招致なしには咲洲メガソーラーに参入することは不可能だったことも把握している。この詳細は、近々順次公開する。

今後、橋下徹氏を擁護しようと考える国会議員や有識者は、その行動がどういう結果を招くか、よく考えてから行動することをお勧めする。
(つづく)

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山口敬之

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