マスク着用緩和巡り岸田首相揺れる 野党議員「統一見解を」

 新型コロナウイルス感染予防対策のマスク着用で緩和の方向性を巡り、岸田文雄首相が揺れている。きっかけは11日の「人との距離がとれれば屋外では必要ない」との松野博一官房長官の会見発言。首相は12日の国会審議で「緩和は現実的ではない」と距離を置いたが、13日は「屋外では必ずしもマスクは必要ない。それは従来からの方針」と説明。国会内外で「政府は統一見解をワンボイスで伝えるべきだ」(野党議員)との声が高まっている。

 「総理は昨日の参院厚生労働委員会での審議で『今の段階での着用緩和は現実的ではない』と答弁した。官房長官発言と異なるのでは」。13日の衆院内閣委員会の審議で立憲民主党の泉健太代表は閣内不一致の可能性を指摘した。

 首相は「もともと屋外で2メートル以上の距離があれば必ずしもマスクは必要ない。それは従来からの方針で何ら変わっていない」と答弁。長官発言は「新たな緩和策ではない」との認識を掲げて反論した。

 また、見直しが取り沙汰される2歳以上の保育園児へのマスク着用については「政府としてそもそも着用を推奨したことはない」と否定。「可能な範囲で着用を推進」とした政府の有識者会議である新型コロナ感染症対策分科会の提言内容(今年2月)を無視する説明に終止した。

 泉氏から「聞いていて分かりづらい。方向性も見えづらい。整理して説明を。政府発信の窓口の一本化も必須だ」と促されたが「私もマスコミ報道には戸惑っている」などと「自身の非を絶対に認めない答弁」(野党議員)に終止した。

 「一昔前なら国会審議が止まったやりとり」と評した自民党の国会対策委員会関係者は「マスク疲れで一日も早く外したいのが党派を超えた本音。国民の願いでもある。総理はそんな流れに救われている」と説明した。実際、13日の審議では泉氏以外からも首相や政府に対し着用緩和の方向性や時期を早く示すよう求める質問が続いた。

 世間の最大関心事の緩和時期については政府内でも意見が分かれる。島村大厚労政務官(参院神奈川選挙区)は9日、自民党横浜市連の会合でマスク着用のガイドラインの策定に言及。一方で「タイムラグを踏まえ大型連休を受けた感染状況をまずは見極めたい」と時期の明言は避けた。

 同日の会合後に記者団の取材に応じた山下正人市連幹事長は「マスク着用緩和の内容が自治体ごとにまちまちとなってはおかしい」と指摘。「政府は方向性を定めた上で統一して発信すべきだ」と地方の思いを代弁し注文を付けている。

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