福井大学医学部附属病院に不妊治療施設「高度生殖医療センター」 体外受精や顕微授精…全国的に珍しい生殖治療専門

高度生殖医療センターの機器などを説明する折坂誠副センター長(左)と吉田好雄センター長=5月13日、福井県永平寺町の福井大学医学部附属病院

 福井大学医学部附属病院(福井県永平寺町)は5月13日、福井県内の不妊治療の中核施設となる「高度生殖医療センター」を院内に開設した。県内で実施機関が少ない体外受精や顕微授精などを中心的に担い、かかりつけ医と連携しながら「地域完結型」の不妊治療を目指す。

 同病院によると、全国で約3組に1組の夫婦が不妊を心配した経験があり、約5.5組に1組は実際に治療や検査を受けたと推定されている。日本産科婦人科学会によると、2019年に体外受精で生まれた子どもは14人に1人という。

 県内に高度な不妊治療の実施機関は同病院を含め3施設しかない。県によると県内では約千人が不妊症で通院し、うち約4割は県外で治療を受けている。長期間にわたって遠方に通院する場合、仕事との両立は難しく、退職するケースもみられるという。

 同センターは中央診療棟3階に整備。事業費は県の補助金約2億980万円を充てている。産婦人科医3人、泌尿器科医1人、胚培養士2人らの計9人体制でスタート。採卵室と培養室があり、精子の機能をデジタル解析する装置や質の高い胚を選別できる胚培養器、卵子へのストレスが少ない顕微授精システムなど最新機器を導入した。

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 不妊治療は本年度から公的医療保険の適用が拡大され、希望者の増加も予想される。開所式で吉田好雄センター長は「全国的にも珍しい生殖治療専門の施設。診療だけでなく研究分野でも中心的な役割を果たしたい」とあいさつ。杉本達治知事は「安心安全に子どもを産み育てる『ふく育県』を進める上で、働きながら治療を受ける女性たちに負荷がかからない体制づくりはとても重要」と述べた。

 福井大は同日、同センターと地域のかかりつけ医が医療情報を共有し、効率的に不妊治療に当たるための「医療連携システム」の構築に向け、クラウドファンディング(CF)を実施することも発表。治療経過や検査結果を双方がスムーズに把握することで、患者の早期の妊娠、出産に導きたい考え。CFサイト「レディーフォー」で、6月30日まで寄付金を募っている。

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