新型コロナウイルスが猛威を振るい、2020年に東京で開催される予定だった国際大会をはじめとした様々な大規模イベントの中止・延期が決定し、旅行や宴会など様々な行動の自粛が要請され、これによる経済への影響は多大なものになると予想されています。
特にこのような緊急事態において、非常に重要になってくるのが政治における意思決定です。
毎日のように政治における様々な意思決定がなされる中、 度々話題に上るのは若い世代の政治に対する不信感です。
例えば、2018年に読売新聞と早稲田大学が共同で実施した「政治に対する信頼」についての世論調査によると、日本の政治の仕組みに対する信頼についてのアンケートでは、「あまり信頼していない」が47%、「全く信頼していない」が9%で全体の半数以上が「信頼していない」と回答しました。
政党については信頼していないが約60%、政治家については、「信頼していない」が計73%と全体の3/4近くを占める結果となりました。さらに、18~39歳の若い世代の回答者のみに絞ると政党を「信頼していない」が計70%、政治家を「信頼していない」が計83%と全体の平均よりもさらに信頼度が低いという結果が出ました。
では、なぜ若い世代が政治に対してこのように不信感を募らせているのか、その背景を探るため今回は、政治と年齢について様々なデータを集めてみました。
INDEX
そもそも日本の平均年齢はどのぐらい?
政治と年齢の関係に入る前にそもそも日本の平均年齢自体が一体どのぐらいなのか、調べてみました。
今回は国連が発表している人口動態調査「World Population Prospects 2019」をもとに日本の中位年齢(0歳時から数えて人数が半分になる年齢)の経年変化の様子を世界の中位年齢と並べてグラフ化しました。
出典:World Population Prospects 2019
戦後、団塊の世代と呼ばれるベビーブームを経て、少子高齢化が進む中、徐々に中位年齢が上昇し、2020年には過去最高の48.4歳となっています。
この数値は世界と比較しても非常に高く、現在世界の国や地域の中で中位年齢が最も高いのが日本となっています。
ちなみに中位年齢が高い国や地域をランキング化すると以下のようになります。日本の中位年齢は、2位のイタリアと比較しても1歳以上高いことがわかります。
順位
国・地域名
中位年齢(歳)
1
日本
48.4
2
イタリア
47.3
3
マルティニーク
47
4
ポルトガル
46.2
5
ドイツ
45.7
6
ギリシャ
45.6
7
リトアニア
45.1
8
スペイン
44.9
9
香港
44.8
10
ブルガリア
44.6
出典:World Population Prospects 2019
さらに日本の年齢ごとの人口を見てみると、最も多いのが40〜49歳、ついで65〜69歳となっており、0〜4歳は45〜49歳の半分程度の人口に止まっていることがわかります。
出典:人口推計(2018年度版)
少子化による若年層の人口減少傾向は今後も継続すると考えられており、中位年齢は今後も上がっていく見通しとなっています。
国政選挙における年齢別の投票率はどのくらい?
続いて、国政選挙における年齢別の投票率を見ていきましょう。
1967年以降の衆議院選挙における年代別の投票率は以下のようになっています。
出典:総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について
1990年以降全体的に減少傾向が見られますが特に顕著なのが、20代30代の世代です。
年代
2017年の年代別投票率(%)
10歳代
40.49
20歳代
33.85
30歳代
44.75
40歳代
53.52
50歳代
63.32
60歳代
72.04
70歳代以上
60.94
全体
53.68
出典:総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について
2017年の衆議院選挙では50代以降の投票率が60%以上、60代に至っては72%と非常に高い投票率を記録したのに対し、30代未満は他の年齢グループよりも目立って投票率が低く、20代に至っては約34%と60代のおよそ半分の投票率となっています。
日本の政治の意思決定の平均年齢とは?
それでは日本の政治の意思決定の年齢とはいったいどのくらいなのでしょうか?
そこで、今回は、年齢別の人口と年齢別の投票率から、大まかな投票者の平均年齢を計算してみました。
人口と投票率は2017年のものを利用し、年齢階級ごとに仮の平均年齢を下の表のようにおきました。
年齢階級
人口(千人)
投票率(%)
仮平均年齢(歳)
18〜19歳
2462
40.49
18.5
20〜29歳
12519
33.85
25
30〜39歳
14996
44.75
35
40〜49歳
18900
53.52
45
50〜59歳
15748
63.32
55
60〜69歳
17725
72.04
65
70歳代以上
25231
60.94
75
出典:人口推計(2017年度版)、総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について
上記の表をもとに投票者の平均年齢を求めたところ、 2017年の衆議院選挙における結果は、55.6歳となり、中位年齢を7歳程度上回るという結果になりました。
さらに、政治家の平均年齢についてみていくと、2017年の衆院選当選者の平均年齢は54.7歳(前回より1.7歳上昇)、2019年の参議院選挙の平均年齢は54.4歳(前回より0.5歳減少)で、いずれも中位年齢を6歳程度上回っており、上記で求めた投票者の平均年齢と非常に近い値となりました。
このような結果から日本の意思決定を行っている人々の平均年齢はおおよそ55歳程度であるということがわかりました。
ちなみに、10代から30代の有権者の投票率が60代よりも多い75%になったと仮定した場合、投票者の平均年齢は現在より4歳程度若い、 51.6歳になります。
政治の意思決定が重要になる局面だからこそ選挙について考えよう
世界で感染が拡大する未知のウイルスへの対応という未曾有の事態において、様々な場所で政治の意思決定についての意見が寄せられたり、議論が交わされたりしています。
そうした中で、SNSなどで意見を表明することも非常に重要なことですが、意思決定のプロセスを抜本的に変えるためには、まず投票に行くということが必要不可欠となります。
“Bad politicians are elected by good citizens who don’t vote.”という言葉が英語圏ではよく投票しない人に大して発せられていますが、これは「悪しき政治家たちは投票をしない全良な国民によって選出される」という意味です。どのような時代でも政治は日本で暮らす全ての人に関わるものです。 今の時期は特に政治の意思決定が重要になるときです。改めて政治家をはじめとした国を動かす全ての人たちにどういう政治をして欲しいのか考えてみる良い機会なのかもしれません。是非考えてみてください!そして、特に政治に不満を抱いている人は投票する、という権利を放棄しないでください!全ての人の考えが平等に反映される、というシステムにおいて全ての人の考えは平等に大切なものなのですから。
【参考引用サイト】 ・ <a href="https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">World Population Prospects 2019| Department of Economic and Social Affairs</a> ・ <a href="https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/248790/041900138/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">若い世代中心に広がる「民主主義」不信:日経ビジネス電子版</a> ・ <a href="https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200524&tstat=000000090001&cycle=7&year=20180&month=0&tclass1=000001011679" rel="noopener noreferrer" target="_blank">人口推計| e-Stat</a> ・ <a href="https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について</a> ・ <a href="https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-sangiin20190722j-08-w290" rel="noopener noreferrer" target="_blank">【図解・政治】参院選2019・当選者の平均年齢(2019年7月)</a> ・ <a href="https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-syugiin20171023j-12-w340" rel="noopener noreferrer" target="_blank">【図解・政治】衆院選2017・当選者の平均年齢(2017年10月</a>)
(大藤ヨシヲ)