PWRレーシングが電動化時代のWorldRX参入。グロンホルム、アンダーソンの男女ペア起用へ

 2022年に最高峰クラスがフル電動化を果たすWorldRX世界ラリークロス選手権に、STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権で複数タイトルを獲得してきた強豪PWRレーシングが新規参入を表明。新たにコンストラクション・エクイプメント・ディーラーチーム(CEディーラーチーム)の名称を掲げて“RX1e”で2台体制を敷き、ニクラス・グロンホルムとクララ・アンダーソンを起用、史上初の男女ペアでフルシーズンを戦うとアナウンスした。

 自社開発モデルとなる世界初の完全電動ツーリングカー『PWR001』を手掛けたコンストラクターの顔も持ち、ロバート・ダールグレンやミカエラ-アーリン・コチュリンスキーを擁してSTCCシリーズ制覇も成し遂げたPWRレーシングは、マティアス・エクストローム率いるEKS RXで元チームマネージャーを務めたエミール・アクセルソン主導のもと、初のラリークロス参入を決めた。

 同チームは北欧出自の組織らしくオンとオフの双方で持続可能な未来を先導することに取り組んでおり、WorldRX参戦を通じて電動化へ移行する未来がもたらす興奮を強調しつつ、より多様性と包括性への移行を推進することを目指している。

 レースチームと同じく北欧を拠点としたCEディーラーチームは、ボルボ建設機械グループなど多数の独立した販売業者によってサポートを受け、RX1eの“キット”を組み込んだ2台のマシンを開発する。

「CEディーラーチームにぴったりのカテゴリー参入を発表できてうれしく思う。パートナーとのより持続可能な未来への取り組みを推進し、彼らが世界でもっともエキサイティングな電動モータースポーツを通じて、革新的な製品とソリューションを世に送り出すことをサポートしたい」と語るのは、チームのスポーティング&コマーシャルディレクターに就任したアクセルソン。

 一方、PWRレーシング共同創業者であり、自身もドライバーとして世界戦を経験したダニエル・ハグロフも、同じくこの組織のファウンダーとして名を連ねる。

「僕らにとってWorldRXは新たな挑戦だが、ハイスピードな電動レースカーの製造と開発はその限りじゃない。我々の豊富なレース経験と、産業パートナーの膨大な技術的専門知識により、世界ラリークロス選手権のタイトルを争うという長期的な目標が、最終的に成功するという確信が得られる」と続けたハグロフ。

「僕らのプログラムの重要な追加要素は、モータースポーツがより包括的で多様になるよう変化を推進することだ。これらの要素を取り巻くさらにエキサイティングな詳細を、今後のチーム体制としてアナウンスできることも楽しみにしている」

 そう紹介されたチームの主要メンバーとなるレギュラードライバーには、WRC世界ラリー選手権2冠を誇るマーカス・グロンホルムの子息として、弱冠25歳ながら複数のWorldRX勝利を挙げるニクラスが移籍加入し、その僚友には世界選手権化された8シーズンで初となる女性レギュラードライバー、クララ・アンダーソンの起用が発表された。

STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権で複数タイトルを獲得してきた強豪PWR Racingが新規参入を表明
ロバート・ダールグレンやミカエラ-アーリン・コチュリンスキーを擁してSTCCシリーズ制覇も成し遂げた
世界選手権化された8シーズンで初の女性レギュラードライバーとなった22歳のクララ・アンダーソン

■「ステアリングを握る日が待ち切れない」と語ったアンダーソン 

 かつてのEuroRXでツーリングカー・クラスの勝者にもなったマグダ・アンダーソンの妹で、2021年には地元スウェーデンの国内選手権でクラスチャンピオンも獲得した22歳のクララは、今季よりオリバー・ベネットのペアとしてXITEエナジー・レーシングに加入し、電動ワンメイクSUVによるオフロード選手権エクストリームEへのデビューも果たす(開幕戦は欠場)。

「こうして私がWorldRX初の女性フルシーズンドライバーになることを非常に誇りに思っている。これまでの私の人生でもっとも刺激的なことだし、学ぶことはたくさんあるだろうけれど、長期的な目標は最初の女性世界ラリークロス・チャンピオンになることよ」と意気込みを語ったアンダーソン。

 その彼女は7歳でレーシングカートを始めると、6年間でスウェーデン、ノルウェー、イタリアのトラックで優勝を記録し、2019年から本格的にラリークロスに転向。昨季2021年には世界選手権併催の電動ワンメイク・シリーズとなるFIA RX2eチャンピオンシップにゲスト参戦すると、ファイナル進出を果たして4位フィニッシュを飾る健闘も見せていた。

「開幕前テストでステアリングを握る日が待ち切れない。いくら経験があれど、この500kW(約690PS)の“エレクトリック・ビースト”は私にとって完全に新しいもので、簡単に何かが手に入るなんて期待はしていない。トップに立つためには、私たちの前にたくさんのハードワークが待っていると思うわ」

 一方、新天地からの参戦となるニクラスも「この機会を得ることができて光栄だし、とても刺激を受けている」と抱負を述べた。

「それでも僕らはトップを目指して戦うための強い条件を持っていると思う。チームは新しい組織だが、多くの組み合わせと経験があり、今年はいくつかの驚きをもたらすことができると思っている。クララと一緒に組めるのも楽しみだし、この新しい画期的な旅を一緒に始めることができてうれしく思うよ」

 そのマーカスが率いたGRXタネコ・チームのオペレーションも担当したSETプロモーション代表を務め、自身もドライバーとして欧州タイトルなどを獲得した、経験豊富なユッシ・ピノマキが同チームのマネージャー職に就任する。

「チームとそのパートナーは男女平等を目指して努力しており、我々のプログラムはクララとニクラスを介して、このシフトを推進する上で重要なパートを担う。彼らは生まれ持った才能と経験の点でお互いをうまく補完し、タイトルのために戦うという長期的な目標を可能にする強力なセットアップだと確信しているよ」

2021年は3勝をマークしたニクラス・グロンホルムも、電動化初年度に新天地での活躍を誓う
マーカス・グロンホルムが率いたGRX Taneco teamのオペレーションも担当したユッシ・ピノマキが、チームマネージャーを務める
「この500kW(約690PS)の”Electric Beasts”は私にとって完全に新しいもの」と語ったクララ

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