「悩み共有 輪広げたい」 子どもの高次脳機能障害 長崎県内に家族会

クラフトペーパーで作ったバッグなどを前に、これまでの歩みを振り返る西川友子さん(左)と雅人さん=長崎市内

 交通事故や脳卒中などによる脳の損傷で、記憶や思考の機能が低下する「高次脳機能障害」。ただ外見からは分かりにくく、特に子どもは症例が少ないため情報も少ないという。14日、長崎県内の同障害の子どもや小児期に発症した成人の計7家族は「高次脳機能に障害をもつ子どもと家族の会」(通称・よりよりホームズ)を発足させた。飯田彰吾代表は「子どもならではの悩みを共有する場として輪を広げたい」と話している。
 県長崎こども・女性・障害者支援センターによると、県内では65歳未満で年間120人前後が発症すると推定され、うち18歳未満は10~20人程度とされる。子どもが当事者の家族会は少なく、九州では福岡県にしかない。
 長崎県内の家族は4年前から、同センターの支援を受け交流や学習会を重ねてきたが、より主体的に活動することで情報発信力や連携を強めたいという。誰にも相談できず孤立している家族もいるとみられ、当事者同士で支える体制を整える。
 会立ち上げの中心となったのは、副代表の西川友子さん(54)=諫早市=。長男の雅人さん(25)は9歳だった2006年、脳腫瘍を患った。短期間で再発を繰り返し、1年で3回の開頭手術と、放射線治療を受けた。
 手術後、物忘れがひどくなったり、順序立てて作業ができなくなったり、すぐに体にだるさを感じたりするようになった。記憶障害、遂行機能障害、易疲労性-。だが当時、障害を知らない友子さんは怠けや思春期が原因と思い、雅人さんを責めた。雅人さんも自分にあたるようになった。
 高次脳機能障害と分かったのは中2の時。特別支援学校の先生に勧められ、病院で検査を受けた。友子さんは初めて聞く診断名に驚きながらも病気が原因と分かり、ほっとした。
 友子さんはそれまで雅人さんだけでなく、親として自分をも責めていた。だがどこに相談すれば良いかも分からなかった。診断後、成人の当事者の家族とつながったが、成人と子どもでは悩みが異なる部分も少なくなかった。学校生活、成長段階に応じた接し方、進路-。友子さんは「こうした悩みを分かち合う人がほしかった」と言う。
 現在、雅人さんは日中は福祉施設で焼き菓子を作り、帰宅後はクラフトペーパーで小物やバッグなどを作っている。口コミで評判が広がり、数年前から注文も来るようになった。友子さんは「できないことを克服するより、子どもの特性を生かそうと考えるようになると、障害も受け入れられるようになった」と話す。
 14日、オンラインで開かれた家族会の発足総会では、▽会員の交流▽情報交換▽相互支援▽障害への理解促進▽社会への啓発-などの目的を確認した。問い合わせは電子メール(yoriyorihomes@gmail.com)で受け付ける。


© 株式会社長崎新聞社