沖縄復帰50年

 沖縄出身の詩人、山之口貘(やまのくちばく)は、故郷が日本復帰する9年前に世を去った。「沖縄よどこへ行く」という一編を残している。〈いまでは琉球とはその名ばかりのように/むかしの姿はひとつとしてとめるところもなく…/沖縄よ/こんどはどこへ行くというのだ〉▲戦時中はむごい戦場となった。戦後は米国に統治され、道路はあちこち舗装されて姿をまるで変えてしまったが、この先どうなる? 詩人は案じている▲〈沖縄よ/傷はひどく深いときいているのだが/元気になって帰って来ることだ〉…と詩は続く。日本復帰からきょうで50年。終戦から26年余りに及んだ米国統治の時代は、日本の復興期と重なる▲「もはや戦後ではない」「所得倍増」「いざなぎ景気」…。戦後日本は経済成長という“光”の道を突き進んだが、沖縄は基地負担という“影”をまとった▲復帰後、今も米軍基地の大半を抱え持つ。詩人が望んだように、深い傷は癒やされ、すっかり元気になったかどうか▲沖縄県の玉城デニー知事は最近の取材に、今もって「本土並みからは程遠い」と嘆いた。〈沖縄よ/こんどはどこへ行くというのだ〉。政府に、私たち国民に、今も向けられている問いだろう。まっすぐなまなざしで答えを探しているかと、きょうという日は胸に語りかける日でもある。(徹)

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