“転職ネイティブ世代”新入社員の転職はあり? なし? 20代が議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、Z世代の論客が“新入社員の転職”について議論しました。

◆今後は"転職ネイティブ世代”が増加!?

転職サービス「doda」によると、4月の新社会人の登録者数はこの10年間で約26倍に増加。全世代で見てみると約5倍の増加にとどまっていることから、若い世代での急増が顕著です。

doda編集長・喜多恭子さんは、近年入社直後から今後のキャリアを見据えて行動する人が増え、数年後には就職活動時から転職を意識する"転職ネイティブ世代”が増加すると予測しています。

今年で社会人4年目のキャスター・田中陽南は、周囲でも就職後2~3年目あたりから多くの人が転職を考えている節があると実感を語ると、キャスターの堀潤は「流動性が増えていくからいいと思う」とこうした風潮を歓迎。

株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは「(転職は)悪いことではない。むしろ、ひとつの会社で働き続ける前提のほうが今は難しいというか、おかしい」と見解を示します。

ただ、「今の仕事が自分に合っているのか、向いているのかわからないタイミングで転職しているんじゃないかと思う部分もある」とも。企業側からしてみれば採用にもお金がかかり、すぐに辞められると困るため「最初からミスマッチが減れば」と惜しみます。

一方、社会人4年目の食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんは「会社に問題があって転職するのであれば賛成だが、"石の上にも3年”という言葉があるように、3~4年は我慢してみないと、入ったばかりでは(自分に合っているか)わからない。仕事ができるようになるまでには結構時間がかかると思う」と憂慮。

これに対し、生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは「3年神話は私も信じていたが、そもそもその根拠はなんなのか?」と疑問を呈すと、「3年の背景には企業側のロジックが結構ある」と小幡さん。企業側としては3年程度働いてもらわないと「採用した分のコストが回収できない」とその側面を語ります。

長内さんが、企業に育ててもらっているという観点からすると「3年程度で辞めてしまうのは企業に申し訳ない気持ちになる」と語ると、谷口さんは「企業に教えてもらう部分もあるが、自分がいなければ企業は成り立たない。フェアな関係だと思うので、どちらかが合わないのであれば転職すべき」と話し、意見が分かれます。

堀は過去、12年間NHKに勤めた後にフリーに転身しましたが、「ある程度自分のなかで辞めどきは決めていた」と当時を振り返ります。その基準は勤続年数ではなく、現場リポーターや取材、そしてキャスターなどやりたかったことができたかどうか。そんな自身の経験からも「3年で思い描いていたことを全部やったと思ったのであれば、転職してもいいと思う」と持論を述べます。

実際に転職経験のある若者に話を聞いてみると、「いい会社だったがチャレンジしたい気持ちがあった。同じ会社に一生いるわけではないし、いろいろな会社でいろいろな経験をすればいい(25歳 男性)」、「やりたいことがあり大手からベンチャー企業に転職。社会人なりたての頃はお金がもらえ、遊べるようになって楽しかったが、そこから先が見えなくなり、その会社でしか生きていけなくなってしまうのではと不安だった(32歳 男性)」といった声が。

◆問題は終身雇用と年功序列のミスマッチ!?

働き方に関しては、法整備など年々改善が進んでいますが、会社を辞める若者は減りません。リクルートワークス研究所の古屋さんによると、最近は企業がホワイト過ぎて不安を感じる若者が増えているといいます。

2019年に働き方改革関連法の施行で残業時間が20年前の半分になり、2020年にはパワハラ防止法が施行。直近では"4人に1人が叱られたことがない”というデータがあるなど、職場環境は改善されているものの、最新の大卒社員の3年以内の離職率は3割を超えています。

その理由としては「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」、「学生時代の友人・知人と比べて差をつけられているように感じる」、「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」など。古屋さんは「転職の理由が不満から不安へ変化している」、「SNSで情報が手に入りやすく、自分の状況に不安を感じているのではないか」と推察します。

こうした状況に、長内さんはあくまで転職には賛成なものの、同年代へ向けた苦言として「新入社員は本当に会社で通用しているといえるのか」と疑問視。そして、「ホワイト過ぎて不安になるというのは非常に甘えていると思う」と不満を述べます。

また、小幡さんは企業側の立場から言及。働き方の問題については昨今かなり気を配り、社員のことを考えて作った制度も多いだけに「『ホワイト過ぎる』と言われても……」と苦笑い。

他方、谷口さんは「パワハラが少ないから、残業が少ないから、叱られたことがないから転職するわけではないと思う。個人的な理由に回収されてしまっているが、私は構造的な問題が大きいと思う」と主張。その上で「終身雇用→なし・年功序列→あり」(終身雇用は終わっているのに、年功序列はある)と問題点の根本を指摘します。

「ずっと雇われるわけではないのに、今は給料が低いというなかで、やはり自分が頑張らないといけないとなるのは当たり前で、そこで不安を感じるのは当然」と終身雇用と年功序列のミスマッチが生じていると説明します。

◆Z世代の論客からの提言「学生と企業を早く繋げる」

こうした若手社員の状況に先輩社員はどう思っているのか。街頭で取材してみると「向上心があり、いろいろなことにチャレンジしようという若者が増えていることは悪いことではないと思う。企業のぬるま湯体質に対し、向上心の強い若者は物足りなさを感じているのではないか(40代 男性)」、「会社を転々とするより、ひとつの会社に腰を据えて長く勤めてもらったほうが日本的でいいと思う。やりがいや働きやすさ、若い人目線で会社の環境を作ってあげられれば(50代 男性)」といった声がありました。

谷口さんは「若い人目線で会社を作ることは、結局みんなにとって働きやすいことだと思う」と言います。というのも、新入社員は当然スキルがなく、人に頼らざるを得ないだけに、そういう人が働きやすいというのは、それこそ産休明けの方や療養明けの人なども働きやすいから。そして、「甘えとかではなく、それがインクルーシブな社会を作るということなんじゃないか」と投げかけます。

前述の古屋さんは、現在の新入社員は「大人化」している、学生時代から社会的活動経験が豊富なため、会社に入ってワクワクできない、成長できないと感じているのではないかと指摘。そして、その打開策としては、社員は職場を使って自分が育つという意識を持つこと。さらには、上司や企業に要望を伝えること。一方、企業側は、囲い込みは逆効果であり、離職後も人材として活用していくことを提案します。

小幡さんからは、経営者側からしてみれば「会社に育ててもらおうというのは甘い」と厳しい声が。「(将来などに)不安を感じるなら、副業するなり、いくらでも成長できる機会は作れる」と言い、「(学校のように)会社に育ててもらおうとするのは間違いだし、そういう人は社会では厳しい」と力説。

構造的な問題に関して、谷口さんは「下の人たちをワクワクさせるといっても、結局決定権は上にある」と言い、多くの企業がトップダウンの構造で、新入社員は学生時代に比べ縛られた環境にあると主張。また、副業や起業という選択肢があるものの、会社員となると残業が少ないとはいえ拘束時間が長く、それ以外の時間に何かをするのは相当な体力とリソースを必要とするため「もう少し企業そのものの体制が変わるといいのではないか」とも話します。

最後に小幡さんはみんなを代表し、「学生と企業を早く繋げる」と提言を発表。新入社員と企業、どちらが悪いわけではなく、要因は「マッチングのミスマッチ」と指摘。

現状としては入社してみないとわからない部分が多いため「もっと早いタイミング、就職をする前にお試し期間があったり、インターンだったり、学生と企業が繋がる機会がより増えることで、ミスマッチも減っていくと思う」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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