旅の日

 きょうは「旅の日」。江戸時代の俳人松尾芭蕉が「奥の細道」へ旅立った日にちなみ、旅について思索を深めてもらおうと、旅行ジャーナリストらでつくる「日本旅のペンクラブ」が1988年に定めた▲新型コロナウイルス禍で旅行をはじめ移動が制限されていた頃、過去の旅を懐かしく思い返すこともあった。その一つが十数年前に訪れたシンガポールの屋台村だ▲屋台村は「ホーカーセンター」と呼ばれ、中国、マレー、インドなど多様な料理の屋台がひしめく。地元のガイドに薦められ夕食時に足を運ぶと、大勢の人で熱気にあふれていた。食べたチキンライスや海鮮焼きそばは美味。しかも安かった▲シンガポールは共働き家庭が多く、夕食に屋台村が欠かせないのだという。屋台村はシンガポールの生活や多様性の象徴なのだ。2020年にはユネスコ無形文化遺産に登録された▲今年のゴールデンウイークは3年ぶりに行動制限がなかった。久しぶりの旅行を楽しんだ人も多かっただろう。県内も屋外の観光施設を中心に、随分とにぎわいを取り戻した▲一方、医療や介護関係の従事者には、まだまだ旅行なんてできる状況ではない、という方も多いはず。誰もが安心して、自由に行きたい場所に行き、旅情を楽しむ-。そんな日が早く訪れてほしい。(潤)

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