<レスリング>「選手と一緒に作っていく時間を大事にし、一緒に世界を目指したい」…伊調馨アントラージュ・コーチが始動

 

(文=保高幸子)

 全日本女子チームが5月16日、東京・味の素トレーニングセンターで合宿をスタート。初日に、オリンピック4連覇の伊調馨(ALSOK)がアントラージュ・コーチとして初めて参加し、練習後、赤石光生・強化本部長とともにzoomで報道陣の質問に答えた。

全日本合宿に参加したあと、zoomで取材に答える伊調コーチ

 赤石本部長は、アントラージュ・コーチについて、2024年パリ・オリンピックで昨年の東京オリンピック以上の結果を出すために新設したと説明。任期はパリ・オリンピックまで。伊調のほか、和田貴広・国士舘大監督が就任。具体的にどんなことをするかは決まっていないとしながら、「アスリートが強化コーチに相談しづらい悩みなどを、アントラージュ・コーチを通じて強化委員会に伝えることにより、円滑な強化推進をはかれると思っている」と話した。

 また、アスリートの目標達成のためには、経験豊かで実績のある人材の経験談などを共有してもらうことも重要だとした。今後、どういった役割を担ってもらいたいかという質問には、「まだお互い緊張しているので、あまり重荷にならないよう、様子を見て徐々に、経験を生かしてもらえるようにと思っている」と答え、具体的な内容や海外遠征の帯同などについても決まっていないと言う。

これまでの経験、技術、知識を後輩に教えていく

 伊調コーチは「レスリングという競技が好きで、ここまできていろんなものを得た。これまでの経験、技術、知識を後輩に教えてほしいと打診され、少しでも自分が力になるならば、と思いました」と、オファーを受けた経緯を説明。

 今でも選手として日体大の女子選手たちと切磋琢磨していると言い、「コーチ半分、選手半分なので、選手が疑問に思ったことを聞かれれば経験談を話したりしますが、まだ自分の(コーチとしての)引き出しは少ない。選手と一緒に作っていく時間を大事にし、一緒に世界を目指して行ければいいなと思います」と目標を話した。

 さらに、「私にできることを一生懸命やりたい。(パリ・オリンピックまで)あまり時間がないので、求めてくる選手には、なるべく早い時間で解決できるアドバイスができればいい。何を求められているのか、選手やほかのコーチともよく話していきたい。選手たちには疑問に思うことや聞きたいことがあれば、個人的に聞きに来てください、と伝えました」と話した。

 この日の練習では、試合前の気持ちの作り方やスパーリングで気をつけるべきところなどの質問を受け、答えるなどしたことを説明した。

(注)アントラージュとは「取り巻き」「環境」という意味のフランス語で、日本オリンピック委員会でも積極的に使用されている言葉。スポーツ界では「アスリートがパフォーマンスを最大限発揮できるように連携協力する関係者」という意味で使用される。

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