屋外不要論

 数日前、東京に住む学生時代の友人からこんなメッセージがLINEで届いた。〈お上の許しがでたのでマスク外して散歩に出たら周りほとんど以前のままってどうなん東京〉-もう何年も会えていないが、困惑顔が浮かぶ▲お上の許し…。新型コロナ対策のマスク着用について、松野博一官房長官が「屋外で、人との十分な距離が取れる場合は不要」との認識を示したのはちょうど1週間前▲分かりにくいのはここからだ。岸田文雄首相は翌日の国会審議で「今の段階で緩和することは現実的でないと考えている」と述べた。一方で、官房長官の“屋外不要論”については「これまでもそう申し上げてきた」という趣旨の答弁をしている▲マスクの着用を国民に義務付けたいくつかの国と違い、日本の場合は「お願いベース」で事が進んできた。ただ、国民の側は事実上、「ルール」や「義務」と受け止めて着け続けたマスクだ。軌道修正はやっぱり政府の仕事▲バラバラに見えるメッセージが発信された末に、最後は自身で判断を-と言うのなら、それは社会の実情を見誤った責任放棄でしかない。首相の分かりにくい論法はどうだろう。もし「閣内不統一」の批判回避が最優先なのだとしたら、どこを向いて仕事をしているのかと問いたい▲3回目の夏が近い。(智)

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