電車近づく踏切で身動き取れない男性を救出 「看護師の動作、とっさに出た」

感謝状を受け取る永尾さん(左)=京都市伏見区・伏見署

 電車が接近する踏切内で、足腰が不自由で身動きが取れなくなった高齢男性を救出したとして、京都府警伏見署は13日、看護師永尾絵美さん(36)=京都市伏見区=に感謝状を贈った。患者をベッドに寝かす際の補助動作を生かした、看護師歴10年のキャリアが光る救出劇だった。

 伏見署によると、5月1日午後5時10分ごろ、勤務する病院から帰宅中だった永尾さんは、遮断機が下りつつある伏見区のJR奈良線踏切で、自分と反対側から手押し車の70代男性が進入するのに気づいた。足が不自由とみられる男性は、ゆっくりと進んでいたが、途中で手押し車の車輪がレールにはまり、動けなくなった。

 警報器が鳴り、電車が迫る中、永尾さんは男性を助けようと踏切内に入り、腕を引っ張り、外に避難させようとした。でも、身長約155センチの永尾さんの力では、大柄で足の不自由な男性を、立ったままで踏切外へ誘導できなかった。

 そこで永尾さんは、近くの通行人に非常ボタンを押すよう頼んだ後、男性をあおむけに寝かし、肩と腰を持って踏切外に引っ張り出した。ベッドに患者を寝かす際、手を添えて背中からゆっくりと体を倒す看護現場の動作が、とっさに出せたという。「電車が怖いという気持ちよりも、今なら助けられると思った」と振り返る。

 13日に伏見署で感謝状の贈呈式があり、永尾さんは「助けるには、寝かして引っ張り出すしかなかった。(男性を)無理に動かして、痛くなかったか心配だった」と涙を浮かべた。男性はすり傷を負ったというが、西山亮二署長は「けがはしたが、命には替えられない。必死に助けていただき感謝を申し上げる」とたたえた。

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