ニュルブルクリンク24時間名物のオペル・マンタが火災に見舞われる。50回記念への出場は断念か

 5月26〜29日に、ドイツのニュルブルクリンクで開催されるADACトタルエナジーズ24時間レース(ニュルブルクリンク24時間レース)。2022年は50回の記念すべき年だが、そのレースを間近に控え衝撃的なニュースが入ってきた。毎年ニュルを戦っている名物マシンのひとつ、オペル・マンタが火災に見舞われてしまったという。

 ラベノール・モータースポーツが走らせてきたマンタは、ドライバーでもあるオラフ・ベックマンが所有するもので、20年以上もマンタでニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)やニュル24時間をはじめ、ツール・ド・ヨーロッパの長距離ラリーでトルコのイスタンブールやモロッコ等でも活躍してきた。

 1988年に初めて参戦し、すでにホモロゲーションも切れているマンタだが、チームが長年ダメージを受けるたびにていねいな修理や整備を重ね、主催者からもニュルに欠かせないものとして出場が認められてきた。チューニングを受け255馬力を誇り、トップスピードは248㎞/hを叩き出すなど、そのポテンシャルはもちろんのこと、コクピットのぬいぐるみやルーフのアンテナに取り付けられた“フォックステール”など特徴的なルックスで、NLSや24時間レースのスタートでは、どのマシンよりも盛大な歓声と拍手が沸き起こるほどの人気者だ。

 2022年も50回の記念大会に向け、オーナーである76歳のベックマンをはじめペーター・ハース、フォルカー・ストレイチェク、ユルゲン・シュルテンという全員が50〜70歳代のおなじみのシニアカルテットでSP3クラスから参戦を予定していた。

 そんなマンタが、まさかの事態に見舞われた。ニュル24時間本番を目前にした準備作業に追われていた5月15日、北ドイツのハンブルグ近郊のザンデスネーベンにあるファクトリーで、マンタのリヤに搭載していたリチウムイオン電池部分から突如炎が上がった。

 リチウムイオン電池の火災とあり、消火活動は容易ではなかったそうだが、ファクトリーにいた従業員や地元ザンデスネーベン、シェーンベルク、フランツドルフから急遽駆け付けたボランティア消防団の迅速な消火活動により、かろうじて建物への延焼は防ぐことができたものの、煤と消火剤まみれとなったマンタは甚大な被害を受け、ニュル24時間レースの参戦を断念せざるを得なくなったようだ。

 参戦しないときもあったが毎年のようにニュルを走り、日本にも多くのファンをもつマンタだが、50回大会への出場が叶わないとなると、関係者やファンにも大きな衝撃ともなる。

 チームに所属する女性マネージャーによると、「私たちの大切なマンタを助け出すことができずに、言葉にならないくらいにショックです。怪我人がひとりも出なかったことは救いですが、精神的なショックと疲労でとても辛いです」と言葉を選んでインタビューに応えてくれた。

 なお、出火原因や当時の詳しい状況等については、現時点ではコメントは控えたいとのことだった。

最新のマシンに混じってニュルを戦っていたオペル・マンタ

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