バスティアニーニが三度見せたレース終盤の強さ/MotoGP第7戦フランスGP

 MotoGP第7戦フランスGPではエネア・バスティアニーニ(グレシーニ・レーシングMotoGP)が、今季3勝目を挙げた。彼がカタールGP、アメリカズGPで見せたような終盤の強さはこのフランスGPでも発揮されていた。

 バスティアニーニはフランスGPについて、「かなりアップダウンがある週末だった」と振り返る。初日ではフリー走行2回目にそれまでのオールタイムラップ・レコードを更新するタイムを記録しトップで終え、予選では2列目5番グリッドを獲得した。一方で、週末を通して3度の転倒を喫し、フリー走行3回目ではマシントラブルも発生した。

 ただ、バスティアニーニは「今日のレースでは自信があった」と言う。

「午前中(ウオームアップ・セッション)ではバイクのフィーリングがとてもよかったから。フロントにソフトを履いて走るのが難しかった。この週末、3回も転倒しているんだ。レースではミディアムタイヤが最善の選択肢だった」

 決勝日は雨の予報もあったが、MotoGPクラスの決勝レースはドライコンディション。気温も路面温度も上昇した。こうしたコンディションの中、ポールポジションスタートのフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)などはグリッド上でフロントタイヤをソフトからミディアムに変更している。ただ、バスティアニーニは最初からミディアムタイヤを選んでいた。彼の言葉通り、そのフィーリングに手ごたえがあったのだろう。

 この日、バスティアニーニが繰り広げたレースは、もはや彼の勝ちパターンと言っていいかもしれない。5番グリッドスタートから序盤、中盤、終盤と、じわじわとポジションを上げていった。残り7周の3、4コーナーで、トップを走っていたバニャイアに仕掛け、バニャイアがトップを奪い返すも8コーナーではらみ、さらに13コーナーで転倒を喫すると、バスティアニーニは単独トップでフィニッシュした。

 2022年シーズン、開幕戦カタールGPで最高峰クラス初優勝を飾ってから、第4戦アメリカズGP、そして今回のフランスGPの3レースで、バスティアニーニは後半の強さによって優勝していた。詳しく見てみれば、カタールGPとアメリカズGPでは残り5周、そして今大会では前述のとおり残り7周でトップに立っている。

 バスティアニーニはこの日のレースについて「自分がどのくらいのペースかわからなかったから、作戦はなかった」と言う。また、「僕はいつもレース終盤で速い。このレースでは、タイヤの摩耗がほかのライダーみたいにさほど大きくはなかった」とも述べている。

 バスティアニーニのレース終盤での強さについては、2位を獲得したジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)が触れていた。

「彼はいつもレース終盤で速い。うまく走っているし、タイヤの使い方がうまいんだ。彼は今日、完ぺきなレースをしたと思う。ミスしなかった」

 ミラーは以前、アメリカズGP後も同様のコメントを残している。ミラーやバニャイアが走らせるデスモセティチGP22よりもバスティアニーニのGP21の方がタイヤのマネジメントがうまくいっているのか、という質問に対し、「それは彼の走り方によるものだ」と。ミラーの見解を借りるならば、バスティアニーニのライディングによるタイヤマネジメントが今季の強さを生んでいるということになるだろう。

 一方でバスティアニーニは自身の課題について「安定していないレースもある。僕はフロントタイヤを多用するライディングスタイルだから、フロントに問題があるとうまく走れない。解決策を考えているけど、すぐに判明すると思う」とも語っている。

 シーズンの3分の1となる7戦を終え、チャンピオンシップはトップにファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)がつけ、4ポイント差でフランスGPを3位で終えたアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)、そして3番手に8ポイント差でバスティアニーニが続いている。バスティアニーニの強さに安定感が加われば、タイトル争いの中でさらに脅威の存在となることだろう。

© 株式会社三栄