会社員もできる努力不要の節約「節税」、実際にいくら減らせるのか知る方法とは?税理士芸人が解説

お金は苦手? 税金なんて知らない? なんて……嘆かわしい!

初めまして、税理士芸人「税理士りーな」と申します。一生付き合っていく「お金」について楽しく発信しすることで、意気込んで勉強しなくても笑いながらお金と向き合う一助になれば、という想いで税理士でありながらお笑い芸人として活動しています。今回から、楽しく気軽に読める税のお話を連載させていただきます。

早速ですが会社からいただいている給与は、事前に税金が差し引かれた残りが支給されています。それゆえに、自分の税金が節税できるなんて思っていない方も多いのではないでしょうか?

今回は税金の入門編として、税金の計算がどのようにされていて、どうすれば税金を減らすことができるのか、その仕組みについてお伝えします。


税の知識で賢く節約

「少しでも多くお金を貯めたい!」と誰しも思いますが、毎日コツコツと節約していくのは、好きなものを我慢したり、楽しみも減って精神的に辛く、なかなか続かないですよね。そこで「知識でできる節約=節税」をしてみてはいかがでしょうか? 実は、給与収入のみの方でもできる節税がたくさんあるのです。

現在、日本にある税金は50種類以上。なかでも、自分の行動で大きく税額が変わる大切な税金が「所得税」です。しかも、この所得税を減らすことで、住んでいる地域に納める税金「住民税」も芋づる式に減らすことができます。この2つの税金は連動しているのです。

会社員の方やパート・アルバイトをされている方は、所得税が給与から事前に引かれて職場から納付されています。「天引き」と言ったりしますね。そのため、金額が勝手に決まって、それを変えることはできないと思い込まれている方が多いと思いますが、正しい知識があれば自分で上手に節税することもできるのです。

税金を減らす近道は?

まず、節税のために所得税の仕組みを見ていきましょう。所得税は、「所得(もうけ)」から「控除(引くもの)」を差し引いた残りの金額に税率をかけて計算します。

計算1.所得(もうけ)― 控除(引くもの)= 税金がかかる分「課税される所得金額」

計算2.課税される所得金額 × 税率 = 税額

この税額を安くするには、どうしたらよいでしょうか? 税率は自動的に決まってしまうため自分でどうこうできないので、「(1)所得を減らす」「(2)控除を増やす」の2つができれば、税額を減らすことができます。

もうけを減らすのはなかなか難しいので、「(2)控除を増やす」ことを考えましょう。所得から引かれる控除のことを「所得控除」と呼び、所得控除はさまざまな種類があります。

  • 雑損控除:災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
  • 医療費控除:医療費を支払ったとき
  • 社会保険料控除:社会保険料を支払ったとき
  • 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済掛金やiDeCoなどを支払ったとき
  • 生命保険料控除:生命保険料を支払ったとき
  • 地震保険料控除:地震保険を支払ったとき
  • 寄附金控除:一定の寄付をしたとき

その他にも、本人や家族の状況に応じて受けられる控除もあります。

  • 障害者控除:自分や家族が障碍者のとき
  • 寡婦控除:夫と死別もしくは離婚した後婚姻をしていないなど一定の条件を満たすとき
  • ひとり親控除:婚姻をしていない場合で生計を一にする子がいるとき
  • 勤労学生控除:自分が勤労学生であるとき
  • 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者の所得が少ないとき
  • 扶養控除:扶養親族の所得が少ないとき
  • 基礎控除:所得が一定以下のとき(所得2,400万円以下なら48万円控除)

これらの控除を活用することで、いったいいくら節税できるのでしょうか?

いい加減な知識だと損するケースも

なんとなく知っているけど、あやふやな知識でいい加減に対策していると、せっかく控除の対象になっていたのに、うっかり控除を逃すこともあります。

例えば、医療費は10万円を超えた部分が控除とよく言われています。「10万円に届かなかった、残念〜!」という声もよく聞きますが、実は所得が少ない時(もうけ部分が200万円未満のとき)は10万円に満たなくても控除が受けられるチャンスがありますし、病院までの交通費やドラッグストアで買った医薬品など、控除の対象となるものを入れ忘れているケースもあります。

また、扶養控除や配偶者控除についても、38万円(一般の控除対象配偶者の場合)の控除を受けたいからと、慌てて12月分のパートを休んだのに、あやふやな知識でいい加減に調整したので、結局休んだ12月分のパート代は1月に振り込まれたので控除を受けられなかった、という話もよくあります。38万円の控除が飛んでなくなってしまうのです。

この「38万円の控除」を使えると、いったいいくらお得なのでしょうか? 住民税は扶養の控除額が33万円で税率は一律10%なので、33,000円とすぐに計算できます。所得税においては、38万円 × 税率分の税が減額になります。

さて、ここで問題です。皆さんは自分の所得税の税率が何%かご存知ですか?

「はい、20%です!」など、自分の税率を答えられる人はほとんどいないと思います。手取り金額を左右する重要な数字なのに、なぜでしょうか?

所得税の税率の仕組みを知る

それは、所得税の税率が「超過累進税率」という階段式に変動する税率だからです。「ちょうか・るいしん・ぜいりつ」と区切って読みますが、漢字が並んで難しいですね……「超かる〜ぅい♪」じゃないですよ!

「超過」つまり、その金額を超えた部分について、税率が上がるということです。階段を上がっていくように、ボーダーラインを超えた分ごとに税率が上がり税金が徐々に増えていく方式なのです。

※出所:国税庁「No.2260 所得税の税率」

税額を求める際、計算2で「課税される所得金額 × 税率」とお伝えしましたが、正確にはここから課税される所得金額に応じた控除額を引いた金額となります。例えば「課税される所得金額」が7,000,000円の場合には、求める税額は「7,000,000円×0.23 - 636,000円= 974,000円」となります。この税率は課税される所得金額、つまり先ほどの所得税を計算するときの計算1で求めた「税金がかかる分」の金額によって変わってきます。

この場合、配偶者控除の38万円があれば、所得金額は662万円になるので「6,620,000円×0.20-427,500円= 896,500円」となり、77,500円の所得税が安くなります。住民税の節税分33,000円を加えると110,500円の減額になります。控除のルールを知らずに11万円も多く税金を払っていたと思うと、「なんて……嘆かわしい!」でしょう?

税金がかかる分の金額「課税される所得」はどこでわかる?

給与から税金が引かれている方で、自分の「課税される所得」を知っている人はほとんどいません。いったいどこを見れば、自分の税率がわかるのでしょうか?

答えは「源泉徴収票」の中にあります。

源泉徴収票は、給与をもらっている人の1年分の所得税の計算過程と税額が載っているA5サイズの用紙で、年末調整のあとに交付されます。ちゃんと見たことはありますか?

※出所:国税庁「令和3年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」

「給与所得控除後の金額」が計算1の「所得(もうけ)」で、「所得控除の額の合計額」が「控除(引くもの)」です。これらの差額を計算して、税率表に照らし合わせると、控除を増やした時に減らすことができる自分の税率が分かるということになります。

節税にアンテナを立てて賢く節税

所得税の計算方法や税率を知っているだけでも、節税にアンテナを張って「控除が使えるかな? 」という意識も働くと思います。

ぜひ自分に合った節税方法を見つけ出して、お買い物を我慢して節約する前に、お金の知識で賢く節税してください。

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