日テレ唯一の出展/フジ国際ピッチファイナリスト、TV局海外展開の今【MIPTV2022レポート】(後編) / Screens

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世界最大規模のTVコンテンツ国際取引マーケットMIPTVが4月4日~6日の3日間にわたってフランス・カンヌ現地で開催された。日本の放送局からは唯一、日本テレビがブース出展し、フジテレビは米FOX提供の国際ピッチイベントで新作企画のプレゼンテーションを行うなど日本がフォーカスされる場面も作られた。3年ぶりに現地開催されたMIPTVで日本のテレビ局の海外展開の今を追った。前編に続き、レポートする。

MIPTV2022に80か国から5000人が現地参加した。

■「MIPTV2022話題のトップ10」に選ばれる日テレバラエティ番組

世界各国で業界イベントのリアル開催実施が増えるなか、昨年秋のMIPCOM2021に続き、毎年春の時期に行われるフランス・カンヌのMIPTVも3年ぶりに復活した。全体的に合理化を目的に縮小されたが、「リアルの場でネットワーキング活動を再開させたい」と話す参加者は多い。前編でレポートしたTBS主催の朝食会をはじめとする個別企画からMIPTV公式企画まで、懇親を図る場は盛況だった。

出展会場も開催期間の3日間を通し、参加者が行き交っていた。日本からの出展はMIPCOM2021からブースを構えた東映アニメーションに加えて、今回は放送局から日本テレビが他局に先駆けてブース展開を復活させ、日本テレビが現地参加した。商談テーブルは連日埋まり、積極的にリアル商談を進めていた。

日本の放送局で唯一ブース出展した日本テレビ

日本テレビの海外セールス新作ラインナップに対する注目度は高く、米最大手エンターテインメント誌のVarietyが発表した「MIPTV2022話題の番組トップ10」の1つに2021年12月末に国内で放送されたバラエティ番組『Dark Doubt』(日本語タイトル『疑場‐GIJOU‐』)が日本のバラエティ番組で唯一選ばれた。イギリスBBCのドラマ『Marriage』や韓国CJ ENM傘下のアメリカEndeavor Content制作のドキュメンタリー『Year Zero』など強力作が並ぶなかで、ホラー要素を利かせた新しい脱出ゲームショーの『Dark Doubt』が評価されている。

日本テレビの海外セールス新作『Dark Doubt』(日本語タイトル『疑場‐GIJOU‐』)ポスター (C)日本テレビ

現地には『Dark Doubt』を企画提案した入局3年目の制作ディレクター淺沼丈生氏も自ら参加した。見本市の現場を実際に目にして「『はじめておつかい』が世界で今流行っているように、世界市場に向けて日本はまだ作品を掘り起こすことができると感じた。それに加えて、ビジュアルをも世界標準に合わせることで次のヒット作が生まれるのではないか」という感想を持つ。海外セールスチームのみならず、制作現場担当者も海外市場の現場を知る機会が日本テレビでは継続して行われている。

■フジ、米FOX提供バラエティフォーマットイベントで高評価

日本の放送局がフォーカスされた場面はまだある。フジテレビが米FOX Alternative Entertainment提供の恒例国際ピッチイベント「MIP FORMATS International Pitch」のファイナリストに日本から初めて選ばれたことも特筆すべきことだ。

FOXピッチイベントは国際展開の番組化が期待されるバラエティ番組フォーマット企画を競うもので、優勝者には開発費として5000ドル(日本円で約65万円)の賞金と、資金調達の機会が得られるFOXファンドのメンバー入りが約束される。なお、審査員は世界ヒット番組『マスク・ド・シンガー』などをプロデュースするFOX Alternative Entertainment代表のアリソン・ウォラック氏なども含まれる。

MIP公式フォーマットピッチイベントとしては2012年から続くもので、4回目となるFOXピッチイベントに今年は27か国、51社から67作品の応募があり、その中から日本のフジテレビほか、フィリピン、トルコ、オーストリア、スペインの5か国がファイナリストに選ばれた。

フジテレビコンテンツ事業部の小宮隆司氏

選出されたフジテレビの企画はファミリー層向けのクイズショー『Million Fall』というもので、フジテレビを代表し、コンテンツ事業部の小宮隆司氏が現地でプレゼンテーションを行った。「落とし穴」を仕掛けたカラフルな美術セットなど番組の見どころを説明し、審査員から日本が得意とする「ノンバーバルの笑い」の要素が組み合わされたことが評価された。最終的にプレゼンテーション力と独自の発想力に長けたフィリピンの企画「Cheat on the Glitch」が優勝を飾ったが、ファイナリスト企画のどれもがFOXで展開される可能性はある。

米FOX 提供の国際ピッチイベント「MIP FORMATS International Pitch」ファイナリストに選ばれたフジテレビ

■世界市場は「コンテンツ・ブーム」

日本からの現地参加はほか、準キー局から唯一のカンテレと、3月にBS局を開局した吉本興業のみ。その数こそまだ少ないが、各国から世界市場向けの新作がリリースされ、国際開発番組が続出し、「コンテンツ・ブーム」が起こっているなか、着々と新たな海外展開を仕掛けている様子が伝わってきた。

MIPTV元マーケット開発ディレクターのテッド・バラコス氏は「日本のコンテンツ市場規模は大きく、ドイツやフランス、イギリスと同等の競争力があるコンテンツが揃う」と、好意的に日本を評価する。

またイギリスのマーケットリサーチ会社K7メディアのコンサルタント、ミシェル・リン氏は世界セールスされる日本のバラエティ番組の傾向について「日本はどの国よりも意表を突く企画が多い。斬新で独創性に富んだそのアイデアは一定の評価を受けている」と考察する。

一方、ドラマやドキュメンタリー番組については「日本はまだ可能性があるのではないか」という声が聞かれる。国際市場において大きく飛躍した韓国と比較されることも多々ある。アジアと欧米の国際共同制作を推進するイギリスのThe Bridge創設者のアマンダ・グルーム氏は「この10年で韓国と差が開いた」と指摘する。

具体的に「韓国も以前は今の日本と同じように具体的な改善策が見つからず、悩んでいたが、この10年で国際共同制作の経験を通じて、海外市場にリーチできる編集力や脚本力を学び、成功している。日本は各国で人気のアニメ作品を持ち、映画『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞で評価されるなど、クリエイティブ力そのものは世界に認められている。グローバル基準の制作スキルを磨くことで乗り越えることができるのではないか」と説明した。

MIPCOM2022は2022年10月17日~20日に開催予定

日本に対して高い評価と厳しい指摘があることは、これまでと変わりはない。だが、今、市場そのものが大きく変化している。コロナ禍のこの2年で配信時代が決定づけられ、競争は激化している。半年後の10月17日~20日に開催予定のMIPCOMでまた一歩進んだ動きが見られることを期待したい。

【前編】TBS、海外セールス新作『天才vs大群』カンヌPRの全貌【MIPTV2022レポート】