公園増加も事故続き…問われる安全管理 佐世保市、集約と整理目指す

事故を受け座板が撤去されたベンチ=佐世保市早苗町(4月28日撮影)

 長崎県佐世保市早苗町の早苗公園内で4月20日、ベンチの座板が跳ね上がり、座っていた高齢女性が打撲を負う事故が起こった。同市内の公園では2012年度以降、けがをしたり、車などが破損する事故が計10件発生している。事故が続く背景には安全管理の甘さや遊具の安全確認の難しさといった要因がある。一方、公園は増え続けており、今後の管理の在り方も問われている。
 早苗公園のベンチは、老朽化でぐらつきがあったため、市は昨年8月末に「使用禁止」の表示を設置。だがその後、表示が外れ、そのままになっていたという。事故後の4月末に現場を訪ねると、公園を頻繁に利用するという地域住民は「考えられんこと」「役所の怠慢だ」と漏らした。
 市公園緑地課によると、今回事故があったベンチについては「次年(22年)度の予算で対応」と決めただけで、撤去や補修など具体的な対応をしていなかった。同課の担当者は「まさかベンチで事故が起こるとは(考えていなかった)」と、認識が甘かったことを認める。
 ベンチ事故を受け市は、使用禁止中のベンチや遊具など120施設を緊急点検したところ、表示が外れた施設が13あった。いずれも外れた時期は不明。市は表示をやり直すとともに、使用禁止中の施設を7月中旬までに撤去または補修する方針を固めた。対応が完了するまでは、表示が外れていないかどうかの確認を続けていく。
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 12年度から22年4月までに起きた事故の内訳は物損が7件、人がけがを負った事案が3件。
 12、13年度には公園ののり面の石が隣接地へ落下したことによる自動車などの破損が続いたため、民有地に隣接する公園を優先的に補強するなどの対応をしてきた。20年4月にはスプリング遊具、ブランコ上部のつり金具が破損し、遊んでいた子どもがけがをする人身事故が相次いだ。スプリング遊具は金属部分の劣化把握が難しく市は同種遊具を撤去するとともに、年1回だった点検回数を3回に増やした。

破損し事故を起こしたスプリング遊具(2020年4月撮影)

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 事故が続く一方、市が管理する公園数は増加の一途をたどっている。08年度は369だったのが、21年度には437に増えている。一定面積の宅地造成をする際は、公園または緑地などの設置が義務付けられるからだ。設置された公園は原則、自治体の管理となる。
 「施設がすぐに老朽化するわけではない」として、市は公園数の増加と事故発生がリンクしているとは考えていない。だが公園が増えれば管理も増える。こうした事情から市は条例を改正し、本年度から公園設置が必要となる面積の規模を0.3ヘクタールから1ヘクタールに緩和した。市は「公園は既に充実している。小さい公園だとあまり利用されていない実情もある」とし、将来的には公園施設を集約・整理する考えだ。
 ある保護者は遊具での事故について「安全だと思って遊ばせているのに」と不安げ。一方で「古いという理由で撤去していくと、今度は利用できる遊具が減るし…」と複雑な心境をのぞかせる。


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