戦争、芸能人の急死、高まる不安が「コロナうつ」に拍車 億劫にならず「人間関係」の回復を 医師が語る

「コロナうつ」という言葉を聞くことが増えてきた。新型コロナとの”戦い”は長期化し、社会と経済の不安も高まっている。そんな中、勃発した戦争の悲惨さに心は痛み、芸能界でも、渡辺裕之さん、上島竜兵さんが相次いで死去した。やるせない出来事は疲弊を高め、心身の不調にもつながりかねない。「たにみつ内科」(兵庫県伊丹市)の谷光利昭院長は、よろず~ニュースに寄稿し、人とのつながりが持つ大切さをつづった。

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最近は新型コロナの感染もやや下火になり、世間ではマスク着用をどうすべきかなどと議論がされていますが、もっと大きな課題がたくさん残されていると感じます。

病院では、面会制限が解除されていません。以前であれば末期の患者さんなら、ご家族が寝ずに付き添うことがよくありました。最期は家族と一緒というのが多かったと思います。

現在も病院によっては院長の配慮によって面会制限が緩和されているところもあるかもしれませんが、私の知る限りでは死にそうになっているのにも関わらず、家族でさえも面会制限がかかる状態はまだ続いています。また、病院では、感冒症状の患者さんはまだまだ診察できないところもたくさんあります。

人と人とのコミュニケーションにおいても影響は出ています。コロナ前と比較すると、随分と希薄になってきているのではないでしょうか?私に関して言えば、以前は頻回に会っていた高校の友人たちとコロナ禍になり、会えていません。みんな勤め先などの事情があり、多人数では集まれないのです。また、マスクを外して行う稽古事は実質やめた形になっています。

久しぶりに会う友人なら握手やハグをして再会を喜びあったりしたいと思いますが、今はそれができにくい状況です。会話する際にもマスクが邪魔になり、相手の微妙な気持ちを読み取ることができないこともあるのではないでしょうか。他人とのスキンシップにも気を使います。

日々、診察にあたっていると、そういった希薄にならざるを得ない人間関係からストレスをため込んでいる人も多く見られます。以前は気にすることなくしていた井戸端会議ができない。毎日友人と行っていたモーニングを中止した。友人との散歩をやめた。スポーツクラブに行けなくなった…。私を含めて、多くの人が、誰かとかかわること自体が億劫(おっくう)になってしまった気さえがします。さらに、テレビから流れてくる過剰なコロナ報道に敏感になっている、など患者さんが様々なストレスを受けている状況もよく伺います。

もちろん、感染対策は必要ですし、弱毒化に向かっているとしてもコロナを軽視することは危険だとは思います。完全な形でビフォーコロナに戻ることは難しいかもしれません。けれど、人間が生きていく上で大切なことは、やはり「人間関係の構築」ではないでしょうか。

それは、「からだ」と「こころ」のすべてにリンクし、大きな力の源になるからです。今できることから、でいいと思います。このような時だからこそ、どのような形であれビフォーコロナの人間関係に戻る努力をすることは大切でしょう。

★「日本いのちの電話」相談窓口★ 厚生労働省は悩みを抱えている人に対して相談窓口の利用を呼びかけている。

◆ナビダイヤル0570・783・556(午前10・00~午後10・00)◆フリーダイヤル0120・783・556(毎日:午後4・00~9・00、毎月10日:午前8・00~翌日午前8・00)

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