インディ500初日トップの好スタートを切った佐藤琢磨「最初はどうなることかと思ったが最後はうまくまとめることができた」

 第106回インディアナポリス500マイルの決勝を5月29日に控え、17日からインディアナポリス・モータースピードウェイ(IMS)でプラクティスが始まった。

 先週末のGMRグランプリから中二日の休みを置いて、コースをスーパースピードウェイのレイアウトに作りかえ、各チームともマシンをスーパースピードウェイの仕様に変更してきた。

 ベテランからルーキーまで全33台がエントリーし、インディ500優勝経験者はデイルコイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングの佐藤琢磨を含め8名。初めてインディ500に出場するルーキーは7名が名を連ねている。

 プラクティス初日となった17日は、午前中の9時から11時までがベテランの走行時間で12時から15時まではルーキーオリエンテーション&リフレッシャーの時間となり、最後15時から18時までが全ドライバー、一斉のプラクティスとなる。

 先月の20、21日にはこのIMSで合同テストが行われており、そこでは2番手のタイムを出していた琢磨は「このタイムはトゥを使って出したものだったけど、マシンのフィーリングは良かった」と語っていた。

 今回はインディ500用に用意したマシンにデータとセッティングをコンバートして、このプラクティスからマシンをシェイクダウン。本番に臨むことになっていた。このマシンはカラーリングは表面の凹凸を無くすためにすべて塗装され、カッティングシートは使用されていない。それほどまでにインディ500は空力に繊細だ。

スーパースピードウェイ仕様のマシンに乗り込む佐藤琢磨

 朝9時のプラクティス開始に合わせ、マシンをピットに並べて、シェイクダウン走行を始めた琢磨。確認のインスタレーションラップを終えると、一度マシンを降りて、各部のチェック。しばらく置いて再びマシンに乗り込むと、1周2.5マイルのコースに出ていった。

 しかし、2周、3周と走ったところで琢磨はマシンをピットに向けた。

「最初、ん? おかしい?って思ったんですが、スピードが出たら変わるかなと思って走り続けていたら、今度は底打ちをし始めたので、すぐにピットに戻りました……」

 フィーリングに違和感を感じた琢磨は、再度マシンを降りてチームはチェックを始める。

「データ上はテストの時と同じものをマシンにインストールしているんですが、フィーリングが全然おかしい。ガレージに戻って、フロント周りのアーム類やダンパーなども徹底的に調べました」と琢磨。

 琢磨は4ラップしただけでガレージに引き上げ、マシンの総チェックに午後3時までのほとんどの時間を使ってしまう。

「チームの過去のデータを見たら、このマシンを使う時は、少し車高に修正する値があったみたいで、どうしてそうなったのかはまだ不明です」

13回目のインディ500に挑む佐藤琢磨

 100パーセントの原因判明とはいかなかったものの、マシンを修正して15時からの走行に出てきた琢磨は、まずは単独走行でマシンのペースを上げ始めた。219mphまでは着実にペースを上げ、全体で30番手前後のタイムで落ち着いていた。

 ある程度のスピード領域で走れるようになると、今度はトラック上のトラフィックを探し、グループランに入っていく。

 そしてプラクティスの残り時間もあと10分という頃、琢磨は228.939mphのスピードをマークして、トップタイムを叩き出した。それまで上位3台はスコット・ディクソン、ジミー・ジョンソン、マーカス・エリクソンというチップ・ガナッシの3台が占め、トップ10のうち5台がガナッシ勢という状況だったのを、最後にひっくり返したのだ。

「グループランで前のクルマのトゥを使って、しかもニュータイヤだったので良いタイムが出たなというのは感触でわかりました。ノートゥ(前にクルマのいない状態)でもトップ10には入っていたのかな」

「でも、まだグループランでのフィーリングで気になるところもありますし、今日のデータをしっかり見て明日の走りに備えたいですね。まだ初日ですけどね、気分は悪くないですよ(笑)」

「チームメイトのデイビット・マルーカスも7番手だったし、最初はどうなることかと思ったけど、最後はうまくまとめることができたと思います」

 初日トップというのは、琢磨がインディ500に出場し始めてから初めての事。だがアメリカのメディアが琢磨のトップタイムに驚きもしないのは、琢磨がすでにインディ500の二冠に輝いているからだろう。琢磨はそれだけインディ500で一目置かれている。

 インディ500決勝までの道のりは長いが、琢磨は好スタートを切った。

午後のプラクティスは64周を走行した佐藤琢磨

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