宇宙産業への転職はあり?これから求められる職種とは

近年、40兆円もの規模となっているという宇宙産業市場。これからますます成長が期待できる業界といわれているのです。コロナ禍で転職熱が高まる昨今、宇宙産業業界への転職も視野に入れたいものです。

そこで、先日、衛星データ活用コンサルティングなどを行う宇宙事業開発会社「INCLUSIVE SPACE CONSULTING」を設立した、INCLUSIVE株式会社 代表取締役社長の藤田誠さんとともに、新会社の社外取締役を務めるインターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長の稲川貴大さんにインタビューし、これから転職をしたい人が狙い目の宇宙職種をうかがいました!

■この職種におすすめ!宇宙産業の職種

INCLUSIVE SPACE CONSULTING株式会社(以下、ISC)は、宇宙関連事業の開発を目的として設立された会社で、人工衛星から得られるデータを活用した事業コンサルティングとソリューション開発を主軸に、人工衛星の事業への利活用を総合的にサポートしていくそう。

世界の宇宙市場は年々拡大傾向にあり、2018年時点で約40兆円規模の市場が、2040年には波及効果も含め、約160兆円規模になると予測(※)がされているというのです。特に、経済効果が期待されているのが、通信衛星のメガコンステレーション(大規模衛星網)化だといいます。

(※「将来宇宙ロードマップ検討会(KEARNEY社)」の資料より)

こうした背景から、ISCは衛星データ利活用を主軸として、宇宙技術で既存産業を変革する「SX(スペーストランスフォーメーション)」を推進し、既存産業の効率化と課題解決を行っていくそうです。

期待が高まる宇宙産業。どんな職種があるのか気になりますよね。

まずは藤田さんと稲川さんに、宇宙産業の職種について、従来のよくある職種がチャレンジできそうなものを聞いてみました!

1.営業・営業企画 → 衛星データ活用によるソリューション開発・営業

「顧客の課題を把握し、それを解決する提案を行う営業職は、宇宙産業においても必要だと考えています。現場の課題と技術をつなげる社会実装の推進役となると思います」(藤田さん)

2.データアナリスト・データサイエンティスト → 衛星データの解析・評価

「ビッグデータを解析して顧客の課題解決につながる情報を可視化するという観点で、データアナリストやデータサイエンティストは今後ますます宇宙産業に必要な人材になると思います」(藤田さん)

3.システムエンジニア・プログラマ → 衛星データ分析

「衛星データ分析は、実際のデータを統計的に分析し、顧客に提出する資料にまとめる業務です。宇宙のデータは常にビックデータです。地上の問題解決のためにICTを活用し、技術でソリューションを創造することができます」(稲川さん)

4.マーケター → 衛星データによる事業開発

「地球の問題解決するべきものを調べ、ソリューションを作り出す仕事が必要です。市場を見つけることとニーズを見つけることを専門とするマーケターは宇宙に必須の人材です」(稲川さん)

■宇宙産業の職業Q&A!

これまでの職種、十分、宇宙産業業界でも活かせそうですね。そこで宇宙産業にこれから求められる職業について、さらに詳しく聞いてみました!

――宇宙産業の職業は、地上産業の職業とどのように違いますか? 宇宙産業では特にどのような人材が求められますか?

「大きな違いはないと考えていますが、宇宙の先進的な技術を活用して農業や酪農、水産業といった地上の課題を解決することになりますので、異分野をつなげる視野の広さや柔軟な発想が必要になるのではないでしょうか」(藤田さん)

「実は違いは少ないと考えます。違うのは規模が大きいこと。宇宙産業では目の前のことではなく、地球全体、国全体を考えることが多いです。小さい単位でも地域全体のことを考えます。物理的に離れたところの大きな問題解決をすることになります」(稲川さん)

――宇宙産業の業界では、ずばり、稼げますか?

「稼げる事業づくりができる可能性が大いにあります。宇宙を活用することによって、これまで解決できなかった地上の課題解決や、これまではハードルが高かった宇宙空間を利用した新しいエンタメ開発など、新しい価値創出が可能になると考えています」(藤田さん)

「『稼ぐ』の基本は、他との差別化と大規模化です。地上との差を付ける宇宙、そしてこれ以上ないくらいの大規模化が可能なのが宇宙産業です。可能性は大きく広がっています」(稲川さん)

――将来性のある宇宙産業の中のジャンルをお教えください。

「衛星によるインターネットなどの通信領域はもちろんですが、リモートセンシング領域はあらゆる産業に関わり非常に大きな可能性がある領域だと思っています」(藤田さん)

「ブロードバンド、IoTといった通信、リモートセンシングに将来性があると思います」(稲川さん)

■新会社で求める人材とは?

そして新会社、ISCではどのような人材を募集しているのでしょうか。お二人に、職種と理想的な人材像を教えていただきました!

「衛星データ解析を行う人材の採用を行っていきます。新しい事業づくりや価値づくり、技術の社会実装に関心があり、地上のお困りごとを自分ごととして解決しようと努力できる人材を求めています」(藤田さん)

「無から有を作り出す、泥臭く多くの人とコミュニケーションを取りながら手を動かせる人材が理想です」(稲川さん)

宇宙産業は、これから市場としても、働き手としても期待が高まる分野ということがわかりました。「稼げる」というのはすごい! 宇宙に興味のある人は、これからどんどん拡大していく市場を見越して、早々に転職を考えるのもいいかもしれません。

【取材協力】
藤田 誠さん
INCLUSIVE株式会社 代表取締役社長
レガシーメディアのウェブメディア収益化支援を軸に東証マザーズ上場後、SPACE COTAN社への出資やインターステラテクノロジズ社との資本提携など宇宙事業領域へ参入。直近は経済産業省に対し大樹町と酪農・漁業の効率化について共同提案を実施するなど、衛星データ利活用による産業・行政の課題解決「SX=スペーストランスフォーメーション」を推進中。2022年4月にはさらなる宇宙事業の推進のためINCLUSIVE SPACE CONSULTING株式会社を北海道に設立。

稲川 貴大さん
インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長
1987年生まれ。東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了。学生時代には人力飛行機やハイブリッドロケットの設計・製造を行う。修士卒業後、インターステラテクノロジズへ入社、2014年より現職。経営と同時に技術者としてロケットの設計も行う。「誰もが宇宙に手が届く未来を」実現するために小型ロケットの開発を実行。日本においては民間企業開発として初めての宇宙へ到達する観測ロケットMOMOの打上げを行った。また、同時に超小型衛星用ロケットZEROの開発を行なっている。

ニュースリリース「宇宙事業開発会社「INCLUSIVE SPACE CONSULTING(ISC)」を設立」(https://inclusive.co.jp/2022/03/09/inclusive-space-consulting/)

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