【マレーシア】東方政策、始動から40周年[経済]

提唱者マハティール元首相ら講演

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東方政策40周年を記念したオンラインセミナーで、参加者からの質問に答えるマハティール元首相=18日(NNA撮影)

マレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)は18日、日本と韓国の経済成長を手本とするマレーシアの「ルックイースト(東方)政策」導入40周年を記念したオンラインセミナーを開催した。同政策の提唱者であるマハティール元首相や高橋克彦駐マレーシア日本大使らが講演し、マレーシアと日本の2国間関係や今後の展望などについて語った。

マハティール氏は、東方政策を開始した当時を振り返り、「『なぜ西方(欧米諸国)ではなく、東方を手本にするのか』と問われたが、西方の産業は労働倫理や労働慣行の面から競争力が低いと認識していた」と説明。そこで、第2次世界大戦後に復興と高度経済成長を遂げた日本を手本にすることを決めたという。

マハティール氏は、1回目の首相就任後の1981年に東方政策を提唱し、82年2月に同政策を開始。日本人の労働倫理、学習・勤労意欲、道徳、経営能力などが日本の発展の原動力であるとの考えの下、これらを日本から学ぶことで、マレーシアの経済・社会の発展を目指した。

東方政策では教育に重点を置き、マレーシアから日本に数多くの留学生や研修生を派遣してきた。マハティール氏によると、1回目の首相在任中の2003年までに1万人以上が派遣され、これまでの累計は2万6,000人を超えるという。一方、マレーシアには日本企業1,500社近くが進出し、マレーシア人40万人以上を雇用している。

現在96歳のマハティール氏は、昨年末から体調を崩して入退院を繰り返し、1月下旬には容体が悪化して集中治療室(ICU)に入っていた。現在は自宅療養中だが、18日のオンラインセミナーでは基調講演に臨むほか、セミナー参加者からの質問に答えるなど、元気な姿を見せた。

■高橋大使、4つの提案

高橋駐マレーシア日本大使=18日(NNA撮影)

セミナーで講演した高橋駐マレーシア日本大使は「過去40年間に日本とマレーシアを取り巻く環境や国際情勢は変化し、両国間の関係も影響を受けてきた。東方政策始動から40周年を迎えた今年は、日本とマレーシアにとって同政策における立ち位置の見直しについて話し合う絶好の機会となる」との見解を示した。

高橋氏は「東方政策の下で推進している事業は、現在の国際・社会情勢に合わせて更新していかなければならない」と指摘。今後注力していくべきこととして、▽新型コロナウイルス禍からの経済復興での協力▽マレーシアが抱える災害リスク軽減や水資源管理、高齢化といった課題や平和・安全保障への取り組みでの協力強化▽多民族を抱えるイスラム国家であるマレーシアの多様性を生かした施策の知見の共有▽日本からマレーシアへの留学生派遣の推進——の4つを提案した。

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の熊谷氏=18日(NNA撮影)

東方政策は、日本とマレーシアの経済関係においても重要な役割を果たしている。マレーシア経済などを専門とする、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の熊谷聡氏(開発研究センター・経済地理研究グループ長)は、ジェトロが在マレーシア日系企業を対象に実施した調査で、マレーシアの利点として「政治的安定性」との回答が上位3位に入ったことに言及。「マレーシア政府が企業、とりわけ日系企業に優しいことを反映している」と述べた。

熊谷氏は「これまで東方政策では、マレーシアが日本から学んできたが、日本もマレーシアから学ぶべきことが多く、今後は互いに学び合う『ルックイーチアザー(Look Each Other)政策』に転換すべきだ」と主張。「日本の若い世代に、マレーシアの文化・言語・民族の多様性や、マレーシア人の前向きな姿勢について学んでもらいたい」と述べた。