【動画】ウミガメ剥製361体 40年間引き取り手なく…博物館寄贈へ 乱獲の歴史伝える

 「鶴は千年、亀は万年」と言われ、沖縄の日本復帰前は縁起物として新築祝いの贈り物の定番だったウミガメの剥製。1980年のワシントン条約発効で捕獲が禁止されて以来、贈り物の慣習は急速に廃れていった。浦添市内間の食品卸会社の倉庫には、70年代にフィリピンのセブ島で乱獲されたウミガメの剥製計361体がひっそりと眠っていた。引き取り手がいなく廃棄される可能性もあった剥製群は、復帰50年の節目の年に国立科学博物館に寄贈が決まった。乱獲の負の歴史を伝えるとともに、ウミガメの生態解明や保護への活用も期待されている。

 剥製群はいずれも環境省と国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されるタイマイ95体とアオウミガメとアカウミガメの計266体。大きい個体で甲長1メートルもある。10日に一斉搬送された。

 ウミガメを研究する岡山理科大の亀崎直樹教授は「これだけの数の標本が産地が分かる形で残っているのは奇跡だ。研究が進み、将来的な保全につながる可能性がある」と語った。国立博物館の吉川夏彦研究員は「乱獲された歴史は残念だが、未来のために保存して、研究で活用することができる。ゆくゆくは展示したい」と話した。

 剥製群は鹿児島県出身で貿易会社を営んでいた故人の男性が同県志布志の工場などで製作したものだ。工場はワシントン条約を見据えて閉鎖され、残った剥製群は約40年間放置されていた。

 2010年に生前の男性から剥製群の処分を託された元貿易商の漢那用哲さん(79)=宜野湾市=は、鹿児島から浦添に移送し、販売や学校教材としての活用を模索した。

 ワシントン条約発効前に捕獲したウミガメだと証明するために、当時輸入した際の書類や工場の元従業員の証言などを集めて環境省に申請し、国際希少野生動植物登録票を得た。

 それでも引き取り手は見つからず10年が過ぎたころ、亀崎さんとつながり、国立科学博物館への寄贈が決まった。

 漢那さんは「ウミガメの剥製の贈り物は沖縄の一つの文化だったが、若者には『怖い』と忌避されるようになり、時代の変化を感じる。このままでは廃棄するしかなく、心配していた。学術標本として利用してもらうことになり安心した」と語った。

 (梅田正覚)

<用語>ワシントン条約
 野生動植物の特定の種が過度に国際取引に利用されることのないよう、保護することを目的として、1973年に米ワシントンで採択された条約。絶滅が危惧される野生動植物と剥製、加工品の国際取引を規制する。日本は80年に国会で承認・発効した。

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