【新型コロナ】マスク着脱、政治主導は妥当? 「お願い」がルール化

 新型コロナウイルスの感染対策で、屋外マスク不要論が高まる。「距離があれば不要」という松野博一官房長官の発言が契機だが、着用は海外のように義務でなく、あくまで「お願い」(厚生労働省)だ。着けるも外すも、当初から個人の判断に委ねられていたのでは? 政治主導は妥当なのか。

 「人との距離が十分とれれば、屋外では必ずしも必要ではない」。11日の定例会見後、官房長官発言が速報されると、ツイッターで「屋外マスク」がトレンド入り。不要論が一気に高まった。

 岸田文雄首相も12日の参院委員会で、「今の段階で緩和するのは現実的ではない」とした一方、「屋外で人との距離が十分な場合には、マスクを外すことを奨励している」と答えた。

 政府が言及し始めた着脱の是非を市民はどう感じているか。鎌倉市の内田直生さん(71)は首をかしげる。「いちいち、お上に決められなきゃいけないの?」

 コロナ禍の情報を検証する楊井人文弁護士は「着脱は完全に任意。何ら法的根拠はなく、公権力は私人の生活に介入する立場にない」ときっぱり。時と場合に応じ、要否を決めるのは個々人のはずだ。

 岸田首相自身が好例だ。外遊先のイタリアで4日、「海外出張先、相手国のルールに沿って対応する」として、ローマ教皇と素顔で会談した。国内でも11日、首相官邸でフィンランド首相を出迎えると、あえてマスクを外している。「自分だけノーマスク」とネットでたたかれたが、「着けなくてよい場面と判断すれば外せばいい。国民も同様だ」と楊井さんは擁護する。

 政府が着用を「お願い」として推奨し始めたのは、全国に緊急事態宣言が発令された2020年5月。専門家会議が提言した感染対策の「新しい生活様式」に基づく。コロナ流行前からマスク社会が根付いていた日本と、コロナを受けて着用が法的義務となった欧米では根本的に異なるが、いつの間にか「新しい生活様式」自体が「半ば強制のルールのように根付いてしまった」と楊井さんはみる。

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