心や体を落ち着かせる効果があるとされるマインドフルネス。慌ただしく不安が尽きない日々の中で、生活に取り入れてみると少しは気持ちが楽になるかもしれない。すでに実践している人も未体験の人も、今号を読んでマインドフルネスについての理解を深めよう! (取材・文/中沢絵里奈)
誰でも簡単に始められる!
マインドフルネスの実践方法とは?
ここニューヨークでは、街の至るところに禅センターやメディテーションスタジオが点在している。ストレスフルな環境で過ごすニューヨーカーにとって、心の安らぎを得られる方法として浸透しているマインドフルネスだが、今回はその定義や実践方法を、ニューヨークを拠点にダンサー兼マインドフルネス講師として活動する鶴原谷(つるはらたに)圭さんに聞いた。
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「マインドフルネスとは、目の前で起こっていることに意識が向き、今この瞬間とつながっている状態のことです」と鶴原谷さん。今の自分と向き合い、セルフコンパッション(自分への思いやり)を育むことで、ネガティブな感情の渦に飲み込まれそうな時も、自分を優しく受け入れられるようになっていくという。
もともとは仏教や禅を起源とするマインドフルネスだが、マサチューセッツ大学医学部マインドフルネスセンター創設者であるジョン・カバットジン博士は「マインドフルネスとは宗教性を排除したものである」と語り、その効能は医学的にも証明されている。
コロナ禍によるストレスや不安がきっかけで瞑(めい)想を始めた人も多いが、鶴原谷さん自身も6年前、人間関係の悩みから鬱(うつ)とパニック症状を発症したことでマインドフルネスに取り組むようになったそう。それで多くの効果を実感した上で、「ストレス軽減などの目的を持つと、頭で理解しようとしてしまいます。それはマインドフルネスの本来の概念からは遠ざかってしまうものです」とも言い、効果を期待して行うよりも「気付く」体験こそが本来の目的なのだと教えてくれる。
日常の中でできるマインドフルネス
マインドフルネスといえば、目を閉じて呼吸に集中する瞑想(メディテーション)を思い浮かべるが、「今につながる方法は日常にあります」と鶴原谷さん。
例えば、手を洗ったり、お皿を洗うという普段の動作の中で、その感触、匂い、見た目を捉えている自分の感覚に意識を向けてみる。もしくは安心や怒り、イライラといった感情にもピントを合わせていく。そうやって普段無意識に過ごしてしまいがちな日常の中での体の感覚や感情に意識を向け、今感じていることをチェックする習慣を付けていくことがマインドフルネスへの第一歩なのだとか。
「不安や焦り、怒りの感情を抑え付ける必要はなく、『自分は今そう感じているんだな』と認めてあげるだけで嫌な感情も自然と収まってきます。そんな心の姿勢を育んでいくことが、今と向き合うということなのです」。
また、瞑想と聞くと「難しそう」「毎日やるのは大変そう」と敷居の高さを感じがちだが、「集中できなくても集中できていないことに気付いてあげることでいいんです」と鶴原谷さん。
マインドフルネスの練習は、身の回りのことが落ち着いている時にこそ始めるのがベストタイミング。すぐに効果を実感するものではないが、継続していくことでその感覚を習得することができるはずだ。
最近は、有名講師のクラスがオンラインで受講できるようになり、コロナ禍で閉業していた対面クラスも続々と再開している。一人で取り組むのもいいが、小グループで何人かと一緒にメディテーションすることで新たな癒しのコミュニティーを見つけることもできるだろう。ニューヨークならではの自分に合うメディテーションスポットを見つけて、ぜひ実践してみよう。
鶴原谷圭さん
ダンサー・俳優、マインドフルネス講師としてブロードウェーで活動中。
メトロポリタンオペラでも6シーズン出演を果たす。
ニューヨーク初のメディテーションスタジオ「MNDFL(現在は閉業)で、仏教と西洋科学の両方を取り入れたマインドフルネスの講師資格を2016年に取得。
最近はMBSRの講師として、ブラウン大学でも資格を取得。
keitsuruharatani.com
マインドフルネス瞑想を
極めるための心得!
ジョン・カバットジン博士が提唱するマインドフルネスストレス低減法(MBSR)では、マインドフルネス瞑想は以下の7項目がポイントだとされる。難しくても意識してみることが大事!
❶ 評価も判断もしないこと
❷ じっと我慢すること
❸ 初心を忘れないこと
❹ 自分を信頼すること
❺ 頑張らないこと
❻ 受け入れること
❼ 手放すこと
市内のおすすめ
メディテーションスポット!
チェルシーやユニオンスクエアを中心とした、市内にあるいろいろなメディテーションスタジオを訪れてみよう。
The Well
ユニオンスクエアにある「ザ・ウェル」は、トータルウェルネスサービスを提供する複合施設だ。スタイリッシュな店内には瞑想スタジオ、コンサルルーム、ジム、サウナ、ショップ、レストラン&カフェを併設。機能性医学を用いたメディカルコーチング、マッサージ、はり治療、ヨガ、メディテーションなどにより、腸の健康からストレスマネジメント、睡眠・体重管理といった心身の健康を全方位的にケアすることができる。
また、地下にある瞑想用ルームでは、メディテーションクラス(30分、20ドル〜)を毎日提供。アーユルベーダティー付きのサウンドバス(音浴)クラスも一押しだ。
コスメなどホリスティックなグッズも販売し、訪れるだけで心も体も健康になれる空間となっている。
施設内ではマインドフルネスに関するグッズや本も
2 E. 15th St.
646-560-8080
the-well.com
Standard Dose
ピンクを基調とした落ち着いたカフェのような雰囲気の「スタンダードドーズ」。CBDやプラントベースの商品を中心としたウェルネス商品を販売する同店は、2019年にフラットアイアンにオープン。「Stress」「Pain」「Sleep」「Sexual Wellness」のカテゴリー別に、パーソナルな悩みに効くサプリやスキン・ボディー・ケア・アイテム、美容家電など独自にセレクトされた幅広いウェルネスグッズが手に入る。
また、店内奥には天窓の付いたメディテーションスペースを併設。日が優しく射す空間でリラックスしながら瞑想ができる(30分、20ドル〜)。またグループ・ブレス・ワークやピラティスの他、毎日無料提供する、音を全身で浴びるサウンドバスのクラスも注目だ。
地中海をイメージしたという居心地の良い店内
1145 Broadway
347-970-2794
standarddose.com
The Rubin Museum of Art
チェルシーにある「ルービン美術館」は、チベットやヒマラヤのアート・文化を展示する、近未来的なデザインでも話題の場所だ。
5フロアで構成される館内では、現在「Healing Practices(癒しの実践)」を展示中で、アートに加え、チベット仏教で実際に用いられてきた実践的な癒しの儀式などを伝授。3階の「マンダララボ」では瞑想スペースや五感を刺激する体験型のインスタレーションを設置しており、「怒り」や「ねたみ」といった負の感情を知恵に変えていく過程を実験的に体感できる。
歩いていると寺院の中にいるような神聖な気持ちになり、感情が静まっていくのを感じることができる。毎週金曜午後6時から10時までは入場料が無料になるので狙い時だ。
怒りを思い浮かべてドラを鳴らし、水に沈めると怒りも
150 W. 17th St.
212-620-5000
rubinmuseum.org
Kadampa Meditation Center
New York City
1994年からチェルシーに構える「カダンパ・メディテーション・センター・ニューヨーク・シティー」は、チベット地方に広まった宗派の一つ、カダンパ仏教を伝える瞑想センターとして、ニューヨーカーに長年親しまれているスポットの一つだ。
人種、性別、年齢、宗教に関係なく、瞑想に興味があれば誰でもウェルカムな雰囲気なのがうれしい。
平日は毎日30分間のモーニング瞑想(午前7時30分〜)、ランチ瞑想(午後12時15分〜)、アフターワーク瞑想(午後6時〜)を1回2ドルのオンラインで開講。働きながら瞑想を取り入れやすいクラスとなっている。またプージャと呼ばれる祈りの儀式も無料で開放。現在中断しているキッズクラスも再開予定なので、HPでチェックしよう。
ロビーには仏教関連書籍がずらりと並んでいる
127 W. 24th St.
212-924-6706
meditationinnewyork.org
BE Time
約15分間のカジュアルな瞑想体験ができるのは、移動式のバススタジオ「ビータイム」だ。車内に入るとクッションが置かれたスペースに座り、手渡されるヘッドフォンとスマホを装着する。ヘッドフォンから流れるBGMと音声によるガイダンスにより呼吸に集中していくと、あっという間に自分の世界に没入できる。
創業者のカルラ・ハモンドさんは、多くの人に瞑想を体験してもらうため、フードトラックからこの移動式スタジオのアイデアを思い浮かんだとか。「都会の環境から自分を一旦切り離し、自分とつながってみてください」とカルラさん。
現在はポップアップとして予約不要、無料で瞑想体験を提供。バスが稼働する日時と場所はインスタで随時シェアされる。
この日は午前11時からユニオンスクエアにバスが停車。老若男女の通行人が続々とバスに乗り込んでいった
info@betimepractice.com
betimepractice.com
Three Jewels
ノーホーにある、一見普通のカフェの佇まいの「スリージュエルズ」も、実はニューヨーカー憩いのメディテーションスポットである。
チベット仏教のゲルク派を伝えるため1996年に書店としてオープンした同店は、当初は人々が仏法を聞いたりお茶を飲んだりするために集まるシンプルなスペースだったが、時を経て現在の瞑想スタジオへと成長した。今では人々が集まるコミュニティーとして親しまれている。
対面でのメディテーションクラスが毎日開催され、「インナーガイド」「ラブ」などのテーマ別に熟練の講師たちの指導のもと、瞑想に取り組める。対面のメディテーションクラスは20ドルで、通い放題コースは月172ドル。オンラインクラスは無料で受講できる。
入り口は普通のカフェ。本場のチャイティーラテは濃厚な味わいで美味だった
5 E. 3rd St.
646-964-5736
threejewels.org
瞑想アプリをチェック
瞑想初心者であればいきなりスタジオに行くのは勇気がいるかもしれない。そんな人は、まずはアプリから始めてみるのがおすすめだ。
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Calm
世界で5000万人以上が利用しているという人気の瞑想アプリ。川の流れなど気持ちが落ち着く音楽をBGMに、初心者向けの「How to Meditate」から、呼吸エクササイズ、ストレス・不安の軽減、睡眠導入、集中力アップに効果のあるプログラムまで幅広く取り組める。音声ガイドは日本語に切り替えることも可能。無料版は利用できるサービスが限られるため、有料版がおすすめだ。
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Headspace
元僧侶とマーケティングのプロの2人が立ち上げたというアプリ。「スターウォーズ」のチューバッカなどかわいいいキャラクターが「吸って〜、止めて〜、吐いて〜」と一緒に深呼吸してくれる。瞑想、睡眠、運動をガイドするものはもちろん、仕事に集中するためのBGM「フォーカス」も実用的だ。瞑想した日数を記録できるので、後から振り返ることができるのも便利。
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Breethe
初心者から上級者に向けた1700以上の豊富なプログラムが楽しめる。深い眠りに導く睡眠音楽や瞑想トラックが人気で、特に睡眠前に聞くことで効果が実感できる。実際、アプリを起動中に流れるリラクゼーション音楽や、たった3分のプログラムを聞いているだけで非常にリラックスできた。ボットとのやりとりだが、的確なアドバイスをくれる上、悩みに合わせて最適なプログラムを提案してくれるセラピー機能も頼もしい
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Insight Timer
マインドフルネスの権威や脳科学者、心理学者、ハーバード大学の講師、モデルのジゼル・ブンチェンといった、幅広い講師陣が登場するのが楽しいアプリ。瞑想について理解を深めることができるだけでなく、ヨガのライブストリーミングを配信したり、アプリ内で他のユーザーと交流できるソーシャルアプリでもある。自身で瞑想する際に便利なタイマー機能も充実。ほとんどを無料で楽しめるのも同アプリの魅力だ。
自分を癒すグッズを手に入れよう
メディテーション以外にも、ストレスや不安から解放される方法はさまざまある。リラックス効果のあるグッズも活用して、よりマインドフルな自分を取り戻していこう。
■Reset Body Oil
Photo by The Well
「ザ・ウェル」のオリジナル商品「リセット・ボディー・オイル」は、アボガド、ココナッツ、スイートアーモンドオイルなどサステナブルな原料のみを使用したエッセンシャルオイルを配合。ベルガモットの心地よい香りと、ベタベタしない使い心地でリラックスさせてくれる。香りは全部で3種類。
100ml/68ドル。
the-well.com
■Vybes Variety Sampler
Photo by Standard Dose
ストレス軽減やリラックス効果のあるCBDアイソレート入りのドリンク。飲むだけで気分が落ち着く、ハニー・クリスプ・アップル・バジル、ストロベリーラベンダー、ピーチジンジャー、ジンジャーレモネード、ブルーベリーミントなど全6種類が12本のセットに。オーガニックでグルテンフリーの体に安全な原料のみを使用している。
12本パック/72ドル
standarddose.com
■The Good Patch
Photos by The Good Patch
経皮吸収型のパッチ型サプリメント。プレミアムヘンプを15mg配合した「Be Calm」は、手首に貼るだけで、ストレスや軽度の痛みを和らげてくれる。肌になじんで目立ちづらい極薄のパッチは、グルテン・パラベンフリーで、植物エキスなどの天然成分でできているのも安心だ。最大12時間まで装着可能。
4枚/16ドル。
thegoodpatch.com