AV出演者救済の新法案が波紋 「本番行為」明確に禁じず

北原みのりさん

 アダルトビデオ(AV)の出演被害救済に向け、13日に固まった議員立法の素案が波紋を広げている。問題は、AVを「性行為映像制作物」と定義し、制作に当たっての性行為に実際の性交、いわゆる「本番行為」を含めている点だ。素案に至る経緯の不透明さも懸念に拍車をかけており、被害女性たちを支援してきた団体は「業者を保護する内容で、制作過程の性搾取にお墨付きを与える」と訴え、丁寧な議論を求めている。

 「特例法を作って18、19歳はAVに出演できないようにすれば済む話だったはず」。ポルノ被害当事者を支援するNPO法人ぱっぷすの北原みのり副理事長は、困惑する。 

 成人年齢の18歳への引き下げを翌月に控えた3月、18、19歳が「未成年者取消権」の対象外となり、AVの出演契約が取り消せなくなる問題が浮上した。対応を協議した与野党議員は4月、AVを「人が性交若(も)しくは性交類似行為を行う姿態」の撮影映像などを含む作品と定義する新法骨子案を提示。若者保護のはずが、本番行為を認める内容にすり替わった。

 「これでは被害者を救えない」と批判が相次ぎ、今月9日の「AV出演被害防止に関する各党実務者会合」で支援団体などへのヒアリングが行われた。ところが4日後の13日に示された法案は、AVを「性行為に係る人の姿態を撮影した映像」などと修正しつつ、本番行為を明確に禁じなかった。「AVの被害を生むのは性行為なのに。これでは業者を守ることになりかねない」と北原さんは嘆く。

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