慢性期病床の確保も困難に 高齢者感染の急増で負の連鎖

 新型コロナウイルスの医療体制では、急性期病院の隔離期間を終えた後も療養が必要な患者を慢性期病院に転院してもらうことで病床を確保してきたが、長期療養になりやすい高齢者の感染急増で、慢性期病院でも病床確保が難しくなっている。感染などによる医療従事者の欠勤も影響しており、県慢性期医療協会の名嘉栄勝会長は「高齢者の感染を抑えないと慢性期病院もマンパワー不足で病床が回せなくなる」と述べ、県民に感染対策を求めた。

 県はコロナ患者を受け入れる慢性期病院の施設数や病床使用率を公表していないが、2021年は約300人が慢性期へ転院している。その多くが高齢者だ。

 県立中部病院入退院支援室の東嵩西寿枝看護師によると、高齢者はコロナ症状と併せて、食事制限による体力低下や誤嚥(ごえん)性肺炎、尿路感染症などのリスクも増加する。病院という閉鎖的な環境に加え、感染対策による面会制限で認知症が進行する恐れもあり「コロナによる入院で負のスパイラルに陥りやすい」という。

 慢性期に転院する患者は、車いすや寝たきりなど医療的ケアが必要な状態も多く、家族が介護問題に直面する例もある。西崎病院地域連携室の齋藤真琴主任によると、経済的に厳しい家庭では「入院や福祉施設入所の費用をまかなえず、家族が在宅介護を選択することもある」という。その場合、面会制限中の院内で家族に介護や看護の指導を行い、行政や福祉サービスへとつなぐ。

 介護や療養の面でコロナ診療を支えてきた慢性期病院だが、5月以降は社会福祉施設からの入院患者が増加。施設でクラスター(感染者集団)が発生した場合は、通常運営に戻らないと患者は退院できないため、医療体制の出口が目詰まりを起こしかけている。

 高齢者は身体機能が悪化すると回復に時間が掛かり、リハビリを止めるとフレイル(虚弱)に陥りやすい。医療体制と高齢者を守るため、名嘉会長は「社会福祉施設では、職員の体調管理や検査を徹底するとともに、入所者の重症化予防のためにもワクチンを接種してほしい」と呼び掛けた。

 (嘉陽拓也)

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