Vol.62 DJI Mini3 Pro登場!超高性能な機能をじっくり検証・後編[Reviews]

2022年5月20日に新発売のDJI Mini 3 Pro。これまでのMiniシリーズと違い"Pro"がついた所以ともいうべき高性能・高画質が特徴的です。具体的には…

  • 1/1.3インチセンサー/f1.7のカメラを搭載
  • ハイコントラストなHDR映像(4k30fpsまで)を直接出力
  • 縦向き/60°上方など自由度の高いジンバル
  • H.265/D-Cinelikeなど上位モデル搭載の映像フォーマット
  • 48MP(8k相当)のRAW静止画撮影可能

など、これだけでも"ミニ"とは思えません。ほかにも、おなじみの自動撮影機能フォーカストラックやマスターショット、ハイパーラプスなどもできるので初心者でも扱いやすく、上級者でも満足できる機体がDJI Mini 3 Proと言ってよいでしょう。

なめらかで素直な操作性!飛行感覚としてはMavic 3に近い動きと飛行時間

DJI Mini 3 Proを初めて飛行させた印象は「なめらか」「素直」でした。DJI RCの操作性も相まって、飛ばしたい飛行ルートにスッと入ってくれるイメージです。最近のDJI機体の味付け方法なのか、筆者としてはMavic 3+DJI RC Proの組み合わせに近い動きと感じました。プロペラ音もMini2と比較してもとても静かです。

また、大容量バッテリーの飛行時間(最大47分)は大満足です。Mavic 3でも感じたことですが、パイロット側のほうが先に疲れて着陸させたくなるレベルの飛行時間です。今回のレビュー撮影時も、いろいろと撮って満足したときに残バッテリーを確認するとまだ50%というレベルでした。

ただ、スピードは全般的に速いわけではないので、広い移動範囲の撮影時は多少気だるさも感じました(水平10m/s・上昇3m/s、Mavic 3は水平15m/s・上昇6m/s)。おそらく、小型の特性をいかして近い範囲内でゆっくりと飛ばしながら撮影するのに向いている機体だと思います。ジンバルの可動範囲の広さも活用しながら、被写体に近いところで自由度の高いアングルから撮影するのにぴったりですね。

DJI Mini 3 Proを使っていろいろと撮ったダイジェスト映像を下記にまとめてみましたのでご覧ください。

センサーサイズを超えた高画質!HDRのレンジの広い映像

DJI Mini 3 Proで筆者が期待している撮影機能はHDRです。「ハイダイナミックレンジ」の略で、明るいポイントに合わせて設定した撮影と暗いポイントに合わせて設定した撮影を同時に行うことにより、明るいところが白飛びせず、暗いところも黒く潰れないメリハリのきいた映像を撮影することができます(通常撮影では明暗のどこかを基準に設定するので、明るいポイントに設定を合わせれば暗いところが潰れがちに、暗いポイントを基準に設定すれば明るいところが白飛びしがちになる)。

動画設定で「HQ」アイコンがついているのがHDR撮影。4K60fpsまで撮影はできるがHDRが適用されるのは30fpsまでとなる

旧Mini2が1/2.3インチセンサーの4k30fps映像を撮影できるので曇り空の灯台で比較してみました。DJI Mini3 Proの映像はMini2と比較してとても自然な色の映像に仕上がっているのではないでしょうか

4K30fpsの映像から切り出しした写真(カメラ設定:オート)。右のMini3 Proは明るいところから暗いところまで自然な色合い。左のMini2は暗いところが潰れてしまっている

続いてちょっと薄暗い夕景での比較です。Mini2 の映像は少しノイズが乗っていますが、Mini 3 Pro の映像はとてもクリアです。

夕景の比較。色の階調の変化がMini3 Pro が優れているように見える
夕陽部分の2倍拡大。Mini3 Pro のほうがf1.7の明るいレンズ効果もあってかノイズが少ない

自由度の高いジンバルを搭載!縦向きアングルの撮影はSNSにぴったり

DJI Mini3 Proのもうひとつの特徴は、何と言っても自由度の高いジンバルです。上方60°まであおり撮影ができるので近距離の巨大な被写体や高高度を下からあおる撮影なども可能なほか、何よりカメラを縦向きに回転できるので、縦長の被写体を撮ったり、その画角をそのままスマートフォン向けSNSなどに掲載することもできます。

「普通に撮った映像を縦比率にトリミングすればいいじゃん」というお声もあるかと思いますが、カメラを物理的に縦向きにして撮影すると…

  • 解像度を損なうことなく縦向き構図にできる
  • 画角をキメやすい

特に2つ目の画角については、通常の横向き画角だと被写体を中央に常に入れておかないと縦向き構図にした際に画面から外れてしまうため、とても気を使い、しかもどこまでが縦向き構図で映るのかわからないので背景の切り取り方などが難しくなります。しかし、初めから縦向き構図であればそのようなことも一目瞭然です。解像度はSNSを考えるとそこまで大きなものは必要ないので、筆者としては画角のキメやすさが何よりも便利でした。

下記、実際にSNSに投稿した別の縦向き撮影映像です。スマートフォンの縦長画面でSNSを直接見ると画面いっぱいに映像が広がります。

■Instagram

■facebook

D-Cinelikeでフラットで上質な映像も

DJIカメラではおなじみの「D-Cinelike」モードでの撮影も可能になりました。よりフラットな色で撮影できますので、カラーグレーディングなどする方には調整しやすい映像素材とすることができそうです。

静止画も高画質!48MP高解像度写真も

忘れてはならないのは、Mini3 Proは静止画撮影用カメラとしても優秀なことです。最大48MPの8k相当(8064×6048)の解像度でRAWデータ(無加工データ)保存もすることができます。以前もMavic 2 Zoomでは48MP撮影ができたのですが、Mavic 2 Zoomの場合は複数枚の写真をソフトウェアで自動的につなげることで実現していたので撮影に時間がかかっていました。Mavic 3 Proはそのような擬似的な48MPではなく、シャッター1発の通常撮影の中で48MPの高解像度写真を撮ることができます。

48MP撮影。合成ではなく通常撮影として撮れるのでとても自然な仕上がり※画像をクリックすると実際のデータが見られます

同時間に同アングルで撮影したデータがあるので参考に12MPと48MPの写真のきめ細かさを比較します。写真中央やや左下に写り込んだサーファーの方をほぼ同じサイズに拡大したものが下記ですが、一目瞭然に48MPの写真のピクセルのきめ細かさがわかります。

ほかにも、縦向き撮影を活用した縦向き構図写真や、これまでもあった複数枚の写真を合成する「パノラマ写真」も撮ることができますので、用途に応じてさまざまな作品を作れるのも魅力です。

APAS 4.0で障害物を避けながら自然な飛行

いろいろな撮影ができるMavic 3 Pro ですが、撮影に夢中になってしまうと周辺確認がおろそかになりがちです。そんな純粋なカメラマン・パイロットのために飛行安全性が大幅に向上しているのも見逃せません。

機体に搭載された前方・後方・下方の障害物検知センサーを活用して障害物を避けながら飛行することが可能になっています。

障害物回避アクションの設定。「迂回」設定時はその直下にある「左右方向への飛行を無効化」のチェックを外さないと左右に動けなくなるので注意

障害物回避パターンは「迂回」「ブレーキ」「オフ」の3つがあり、特に「迂回」では障害物を回避しながら自然な飛行・撮影をすることができます。

ただし、あまりに障害物の感覚が狭いところなどでは全方向障害物を検知してしまって動けなくなってしまったり、意図せぬ方向に障害物を回避して撮影がうまくできなくなったりすることもありますので注意も必要です。

基本的には、周囲の障害物を注意しながら「ブレーキ(障害物の手前でストップ&ホバリング)」設定で万が一の衝突に備え、「迂回」で障害物を回避しながら飛ばせるようなところ(実際に想定する飛行ルートを「迂回」設定でゆっくり飛行してみるのがよいかと思います)は「迂回」をサポート機能として利用するのがおすすめです。自動車のブレーキアシストも同じなのですが、機能を過信せず、あくまで最後のサポート機能として活用してください。

まとめ:初心者、上位機種を持っている人でもほしくなるDJI Mini3 Pro

小型で持ち運びも楽で撮影クオリティも妥協なし、飛行持続時間も気にすることなく撮影できてSNSで投稿する際にも縦向き撮影で"映える"DJI Mini3 Proは、間違いなく初めて購入するドローンとしてベストな機体と言えます。

嬉しいのは、Mavic 3などの上位機種を持っている方でも欲しくなるその機能性です。小型ゆえに狭いところでも飛行させやすく、画質もYouTubeなどのSNSに掲載する映像制作であればMavic 3の映像に差し込んでも違和感がありません(実際に冒頭のダイジェスト映像にはMavic 3の映像カットが一部あるのですがわかりますでしょうか)。

初めて買うドローンとして、Miniシリーズの買い替え用として、そして上位機種を持っている方の新しい選択肢としても楽しめるDJI Mini3 Proをぜひ一度お試しください。

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