後継者や事業譲渡先が見つからない!事業継承の現状と課題

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FM FUJIの番組『Bumpy』のコーナー「CLOSE UP TODAY」(木曜17:35~)の5月19日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演。後継者難などによる休業・廃業について解説しました。

松田 )今日は事業承継の現状と課題についてお話します。山梨県は中小・零細企業が多いですが、後継者や事業譲渡先が見つからず、廃業に追い込まれる「ギブアップ廃業」が高水準で推移しています。5月6日に山梨新報で報じた記事のポイントを解説します。

渡辺)まず、後継者難などによる休業・廃業は山梨県ではどのくらいあるのでしょうか?

松田)指標の数字をいくつか紹介します。帝国データバンク甲府支店によると、2021年の県内の中小・零細企業の休廃業・解散件数は2年ぶりの増加で401件となりました。これで120億円の売り上げが消えたといいます。経営余力を残した資産超過の会社が6割を超え、とてももったいない話ですね。過去5年の推移は年400件前後で増減しています。2つ目は、この休廃業・解散した企業の代表者の平均年齢は過去最高の71.4歳で、70代が約4割を占めます。同店の別の調査では、県内企業の社長の平均年齢が過去最高の61歳。ここから推測できるのは、61歳の社長は70代まで頑張った末、後継者や事業譲渡先が見つからず、廃業せざるを得なくなったのではないか――ということです。

麻耶)社長さんの平均年齢が61歳で、その後10年以上、頑張っても廃業に追い込まれるとすれば切ないですね。企業が事業承継で相談できる窓口はあるのでしょうか?

松田)はい、これが3つ目の数字なのですが、公益財団法人で「やまなし産業支援機構」という組織があり、そこの事業承継・引継ぎ支援センターへの相談件数は右肩上がりで増加、2021年度は過去最高の302件でした。内訳は、M&A(合併・買収)による第三者への事業譲渡などの相談が163件――これは役員や社員への譲渡も含みます。そして、親族への承継――これはいわゆる「世襲」ですが126件で、2つで全体の96%を占めました。

麻耶)それぞれのメリット、デメリットについて教えていただけますか?

松田)分かりやすい方からいきましょう。親族内承継のメリットは、①現在の経営トップをはじめ関係者の納得性が高い②後継者の早期決定が可能である一方、デメリットは①親族内に適任者がいるとは限らない②複数の候補者がいる場合、調整が難しい――などです。

一方、第三者への譲渡の方は2つに分けて考えます。まず、役員や社員への承継。メリットは、①後継候補者の適性を見極めやすい②事業内容や業界事情を熟知している③役員・社員だと従来の経営の継続性が維持しやすい――など。デメリットは、①役員・社員といえども資質や能力に課題がある場合もある②株式の買い取り資金が必要――などです。もうひとつ、M&Aでまったく別の企業に譲渡する場合、メリットは広く承継先を探せることですが、一方、デメリットとしては、①希望する買い手の会社を見つけるのが意外と難しい②仲介会社への手数料が発生する――などが挙げられます。

麻耶)窓口相談の後、実際に事業承継ができた企業は多いのでしょうか?

松田)世襲の企業はさておき、第三者への譲渡相談に絞ると、センターによると、「過去3年間で およそ200件の相談に対し、譲渡が決ったのは およそ60件で、多くは同業者や取引先に譲渡されました。残り140件は休廃業・解散に追い込まれたとみられる」と分析しています。

麻耶)事業承継は本当に難しそうです。県はどのような支援を用意しているのでしょうか?

松田)県は2018年に商工団体や金融機関と共同で、事業承継を検討する企業の「事業承継診断」や「承継計画の策定支援」を始め、21年度の診断件数は途中段階ですが2234件でした。県産業振興課によると、「事業承継のネックの一つは、企業が自身の企業価値を知らないことで、これがないと事業承継の交渉にも入れない」とのことでした。このため県は2021年4月、上限50万円の「事業承継促進事業費補助金」を創設。担当者は「企業価値の簡易算定や事業引継ぎマニュアルの策定などに活用してほしい」と強調しています。

麻耶)事業承継の促進へ向け県や公益法人が頑張っている状況も分かりました。松田さんは今後の課題についてどう思われますか。

松田)問題の本質は、中小企業、零細企業であっても休廃業や解散に追い込まれるというのは、顧客・商品・サービスの地域からの喪失を意味し、かつ、従業員の失業など地域経済にとって大きなダメージになるということです。社会的ニーズがなくなった事業や企業なら市場からの退場も致し方がないかもしれないが、経営余力があって、惜しまれての休廃業や解散は、絶対に避けたい。そのためには第三者への承継の円滑化に向け、譲渡側と譲受側――譲る側と譲り受ける側のニーズのマッチング機能――これは山梨を含め、全国の産業支援機構にあり、また、民間の仲介サイトもあるにはありますが、まだ、機能は十分に発揮されているとは言えず、さらに高める必要があると思います。

Bumpy

放送局:FM FUJI

放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分

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