GDP2期ぶりマイナスでどうなる?米GDPも約2年ぶりマイナスで投資家が見るべきポイント

5月18日(水)に内閣府が発表した2022年第1四半期(1〜3月) GDPが、2期ぶりのマイナスとなっています。

投資家として「GDPマイナス成長」が意味するところを一緒に考えていきましょう。


GDPとは?

GDPとは、Gross Domestic Productの略で「国内総生産」を意味します。国内で1年間に新しく生みだされた生産物や財、サービスの金額の総和です。自国民によって海外で生み出された財などは含みませんが、外国人による国内での生産は含まれます。なお、市場で取引された財やサービスの生産のみが計上されるため、家事労働やボランティア活動などは国内総生産には計上されません。

資産、負債など財そのもののことを「ストック」、生産、消費・投資など財の変化を「フロー」といいますが、GDPはストックに対するフローをあらわす指標です。その国の経済の力の目安によく用いられます。

GDPは経済を総合的に把握する統計である国民経済計算の中の1指標で、伸び率が経済成長率を表します。国民経済計算は国際連合が各国の経済活動を比較できるように定めた基準に基づいて算出されており、日本のGDPは国際的に統一された基準に基づいて内閣府が算出しています。

経済指標としてのGDPの考え方

GDPは一年ごとのものですが、経済の状況を把握するためには四半期GDP速報をチェックすることが必要だと考えます。

四半期GDP速報は第一次速報、第二次速報、確報値があり、第一次速報は当該四半期が終了してから1ヵ月半程度で発表されます。その後1ヵ月程度で数値が改訂された第二次速報が発表され、確報値は4ヵ月半後に発表されます。

GDPは個人消費、設備投資、政府の支出、輸出入などで構成されますが、最大の項目は家計の消費活動を示す「民間最終消費支出」で、約56%を占めています。また、個人消費と並ぶ国内民需の柱である「民間企業設備投資」が約15%。この他、政府部門では公共投資を示す「公的固定資本形成」や「政府最終消費支出」、また海外の需要を表す「輸出」などがあります。

GDPには価格変動が含まれる「名目GDP」、価格変動を除いた「実質GDP」があります。名目GDPはモノやサービスの付加価値を合わせたもので、実質GDPは名目GDPから物価の変動を除いたものです。つまり名目GDPは値段の変化、実質GDPは量の変化といえばわかりやすいでしょうか。

物価上昇の局面では名目GDPがかさ上げされるため、経済成長率を見る場合には、実質GDPを用いることが多いです。また、経済成長率はGDPが1年間でどのくらい伸びたかを表わすものです。経済が好調なときはGDPの成長率は高くなり、逆に不調なときは低くなります。

日本の名目GDPの規模は2010年に中国に追い抜かれて以降、米国、中国に次ぐ3位となってはます。国ごとの物価の違いを示す購買力平価でGDPを換算すると、中国、米国、インドに次ぐ4位となっています。

またGDPは、国内の経済活動の総和ですので、人口の多さに影響されることが考えられます。そこで平均的な豊かさを示す指標としては、GDPを人口で割った一人当たりGDPがよく用いられます。2021年末の時点で一人当たりGDP の1位はルクセンブルク、2位シンガポール、3位アイルランドとなっており、アメリカは7位、日本は24位となっています。実質GDPに対して一人当たりGDPの順位で、日本が大きく下がってしまうのは円安進行と、世界の経済成長と比較して、平成に入ってからは日本の経済は成長しなかった、といえるからだと考えます。

2022年第1四半期(1〜3月) GDP を読み解く

それでは、改めて5月18日(水)に内閣府が発表した2022年第1四半期(1〜3月) GDPを見ていきましょう。

前の3ヵ月と比べた実質の伸び率が年率に換算してマイナス1.0%で、まん延防止等重点措置でGDPの半分以上を占める個人消費や公共投資が減ったことが主な要因です。物価の変動を除いた実質の伸び率は前の3ヵ月と比べてマイナス0.2%です。項目別では輸入が新型コロナのワクチンなどの医薬品など輸入増で伸長している模様です。

財務省が4月20日(水)に発表した2021年度の貿易統計速報で、輸出額から輸入額を引いた額が5兆3748億円の赤字で2年ぶりの貿易赤字となっており、原材料高を背景とした物価上昇=コストプッシュインフレが懸念されているなかで、消費が横ばい、内需も横ばいといった状況だと言えます。

つまり今回のマイナス成長は、消費活動や公共事業の縮小を受け、景気が下降していることを示しています。

GDPと金利の深い関係

GDPは金利にも関係が深いです。一般的には低GDPで、デフレ(物価が下がる状態)だと金利は低くなります。期待インフレが低いということは、その国の成長には疑問符がついている、ということになりますね。また、不景気の時には政府が政策金利を下げることで、個人消費や企業の新規投資を喚起して景気回復対策とすることもあります。とはいえ、金利が低いと銀行は利鞘が稼ぎにくくなってしまいます。

欧米では一般的に、GDPが2四半期連続でマイナス成長となった場合を景気後退=リセッションとみなしています。ここが投資家として見るべきポイントです。

アメリカの商務省が4月28日(木)に発表した2022年第1四半期(1〜3月)の実質GDP成長率(速報値)は1.0%プラス成長が予想されていましたが、それに対して結果は年率1.4%のマイナスでした。これはコロナ禍の影響を受けた2020年4〜6月以来となります。

アメリカでは個人消費や設備投資は強く、経済の堅調さを示しましたが、輸出の伸びが減っていることが影響した模様です。ただし、次に発表される2022年第2四半期(4〜6月)期のGDPは、ウクライナ情勢の影響や上海のロックダウンの影響を大きく受けることが予想されます。

つまり、もし2四半期連続でマイナス成長となればリセッションと判断され、利上げペースが鈍化する可能性もあります。ただ現状ではリセッション懸念が高まっているものの、FRBはインフレ抑制を重視しており、引き締め加速の姿勢は変わっていません。以前お伝えしましたが、金利は株価に影響するので、投資家の方は推移に注目してみてください。

なお日本では他の国に比べて発表時期が遅いことや、四季があるために季節変動が大きくブレが生じることもあり、押さえておきたい経済指標ではあるものの、株価への影響は限定的との見方もあります。

5月16日週「相場の値動き」おさらい

米小売り企業決算を受け、景気後退(リセッション)懸念が高まりました。またインフレへの懸念、スタグフレーション懸念も高まっています。

米5月フィラデルフィア連銀製造業景気指数は予想16.0に対して結果は2.6とネガティブサプライズとなったほか、コストの上昇やサプライチェーン問題などからウォルマートやターゲットなど米小売り大手の決算が軟調なことに対する失望売りが投資家心理を冷え込ませており、ダウ平均とS&P500は年初来安値を更新しています。

また地政学リスクの長引きが意識されるなかで、フィンランドとスウェーデンが5月18日(水)にNATOへの加盟を申請したことも注視しておきたいところです。

日本市場では5月20日(金)の東京株式市場の日経平均株価は、前営業日比336円19銭高の2万6739円03銭でした。5月13日(金)の日経平均株価の終値は2万6427円65銭でしたので、週間では311円38銭の上昇でした。

5月20日(金)に中国人民銀行が住宅ローン基準金利を引き下げたことにより、中国の景気回復期待が週末の相場を支えました。

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