“ふたりのセブ”が両者リタイアの波乱。パンク頻発のデイ2はエバンスが首位/WRCポルトガル

 WRC世界ラリー選手権の2022年シーズン第4戦ポルトガルは5月21日、デイ2のSS2~9が行われ、TOYOTA GAZOO Racing WRTのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位に浮上。チームメイトのカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)も総合2番手につけ、トヨタ勢がワン・ツー体制を築いた。また、日本人WRCドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)も総合4番手の好位置につけている。

 前日19日(木)に開幕したラリー・ポルトガルは、古都コインブラでのSS1から一夜明け競技2日目に移行。本格的なグラベル(未舗装路)ラリーがスタートしたこのデイ2では暑さと砂埃が選手たちを襲い、岩だらけのステージがラリー1カーを容赦なく攻撃した。その結果、多くのドライバーがパンクなどのダメージを受け、ラリー2日目にして早くもサバイバルの様相を呈している。

 そんななか総合首位でデイ2の計8ステージ走破したエバンスは、オープニングステージとなったSS2と続くSS3でベストタイムをマークした。SS4終了時点ではスポット参戦のセバスチャン・ローブ(フォード・プーマ・ラリー1)に首位を奪われたものの、元9連覇王者が午後のループのオープニングステージで、まさかのクラッシュを喫しデイリタイアとなったことから首位を奪還。
 
 その後もSS6とSS9でも最速タイムを記録したエバンスは、SS7とSS8でベストタイムを出し、SS8後に総合2番手に浮上してきた僚友ロバンペラに対し13.6秒リードして競技2日目を終えている。

「今日は本当に長くてタフな1日だった」とデイ2の戦いを振り返ったエバンス。

「とくに午後のステージはクルマの中がとても暑く、コンディションも過酷で大変だったよ。午前中は、朝一番のステージからすべてが順調だった。タイヤ選択については少し攻めすぎたかもしれず、最後に苦労したけど、全体的にはいいスタートを切れたと思う」

 先頭走者となり路面の表面に堆積した滑りやすい砂“ルーズグラベル”を掃きながら走る“掃除役”を担うことになったロバンペラにとって、金曜日を総合2番手を終えたことは望外の結果といえる。

 そのロバンペラは、「車内で大量の砂埃が舞っていた。息ができなくなるし、何も見えなくなるときもあった」と笑みを浮かべながら厳しいコンディションであったことを伝えた。

セバスチャン・ローブ(フォード・プーマ・ラリー1)はSS5のスタート直後、左コーナーで右リヤをヒットさせデイリタイアとなった
勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル

■勝田貴元、ソルドと5.2秒差の総合4番手につける

 ヒョンデi20 Nラリー1に乗り込みこの第4戦で2022年シーズンを開幕させたダニ・ソルドは、ロバンペラからは30.8秒、トップからは44.4秒遅れの総合3番手でヒョンデ勢の最上位につけた。彼と5.2秒差の4番手には勝田のGRヤリスが続いた。

 勝田はSS6でハーフスピンを喫したものの、それ以外のステージでは安定したペースで走行。SS7とSS8では3番手タイムを記録し、デイ2最後のSS9ではエバンスに次ぐ2番手タイムをマークしている。

 一方、トヨタ勢で唯一完走することができなかったのが“現チャンピオン”のセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)だ。開幕戦モンテカルロ以来の出場となった8冠王者は、ライバルのローブがリタイアを喫したSS5の終了時点で総合3番手につけていた。しかしSS6とSS7で立て続けにタイヤのパンクに見舞われ競技続行が不可能に。この結果、ポルトガルの金曜日は“ふたりのセブ”がともにデイリタイアするという、まさかのドラマを生むことになった。

 Mスポーツ・フォードWRTのガス・グリーンスミス(フォード・プーマ・ラリー1)もタイヤトラブルに見舞われたひとりだ。彼のクルマもコクピットにダストが入り込み、その影響でペースが上がらなかったが、トップから1分遅れの総合5番手に食い込んだ。チームメイトのピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1)が14.9秒差の総合6番手で続いている。

 SS7が終わった段階でエバンスにもっとも近い位置にいたティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)は、直後のリエゾン(移動区間)で足回りが破損。さらにフロントのドライブシャフトにダメージを負ったまま残るふたつのSSを後輪の駆動のみで走ることになったため、大幅なタイムロスを強いられた。この結果、ランキング2番手につけるベルギー人は総合7番手まで順位を落としている。

 総合8番手となったクレイグ・ブリーン(フォード・プーマ・ラリー1)はパンクや土手への接触によりタイムを失った。Mスポーツの僚友であるアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)が9番手で続き、その後方では2度のパンクを喫したオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)がトップ10オーダー最後の枠を埋めている。

 引き続きグラベルステージでの戦いとなる21日(土)のデイ3は、ポルト北東に広がるカブレイラ山脈を中心に、3本のステージを日中のサービスを挟んで各2回走行する予定だ。さらに、1日の最後にはポルトに戻り、ドウロ川の河口沿いでスーパーSSが実施される。SS10からSS16まで合計7本のステージの合計距離は今大会最長となる164.98km、リエゾンを含む総走行距離は643.14kmだ。

ダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル
ガス・グリーンスミス(フォード・プーマ・ラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル
ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル
2度のパンクによってスペアタイヤを使い果たしたためデイリタイアとなったセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第4戦ポルトガル

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