メクル第627号 「新しい色」ちりばめ 布製品に絵描くアーティスト 田中虎明さん(9)

© 株式会社長崎新聞社

「絵を描く時間は大切。喜んでもらえるかなと思って作品を作る」と話す田中虎明さん=長崎市、きまま焙煎所

 紫(むらさき)やピンク、緑の色の粒(つぶ)をちりばめたラクダに、赤色にさまざまな色を混(ま)ぜた小さなうずまきで描(えが)くキノコ-。目が覚めるような色づかいの絵があしらわれたTシャツやポーチを手に取り、大人も子どもも「うわ、すごい!」と目を輝(かがや)かせました。
 これらの作品を手がけたのは、布製品(ぬのせいひん)に絵を描くアーティスト「crazy Tiger」こと田中虎明(たなかとらあき)さん(9)。5月3、4両日に初めての個展(こてん)を長崎市脇岬(わきみさき)町の喫茶店(きつさてん)「きまま焙煎所(ばいせんじょ)」で開きました。
 もともと絵が好きだった虎明さんは、同店を営(いとな)む菅原真希(すがわらまき)さん(37)が教える絵画造形(ぞうけい)教室に通っていました。

「お父さんのプレゼントに」と虎明さんが初めて制作したTシャツ

 布に描き始めたきっかけは昨年の父の日。虎明さんは父親の慎一(しんいち)さん(39)の力強さをイメージしてゴリラをTシャツに描いて贈(おく)り、「こんなすてきな物がもらえるだなんて」と驚(おどろ)かせました。その後も家族や親戚(しんせき)の記念日のプレゼントとして次々に作りました。慎一さんがインスタグラムで作品を紹介(しょうかい)すると「作ってほしい」と依頼(いらい)が入るようになりました。
 作品には布用の絵の具と筆を使います。主なモチーフは大好きな動物。クーピーで下描(したが)きの線を引くと、“助手”で母親の早希(さき)さん(37)が縁取(ふちど)りをしてから色を塗(ぬ)ります。何種類もの絵の具を混ぜて新しい色が現(あらわ)れる時が楽しい瞬間(しゅんかん)で、「描けば描くほど夢中(むちゅう)になった」そうです。
 菅原さんは「元気な色と暗い色をバランス良く配置している。絵の具が盛(も)り上がるようにしたり、点を重ねたりするなど、描くほどに表現(ひょうげん)の幅(はば)が広がっている」と魅力(みりょく)を語ります。
 個展は虎明さんの自信になればと慎一さんが提案(ていあん)しました。虎明さんは細かな作業で目が疲(つか)れることがあり、個展のために作品を多く作ることは不安でした。それでも「みんながうれしい気持ちになるならやってみよう」と頑張(がんば)ったそうです。
 3日は個展の開場前からたくさんの人が集まりました。虎明さんは絵画造形教室の仲間と一緒(いっしょ)に音楽に合わせて絵を描くオープニングアクトを披露(ひろう)し、「来てくれてありがとうございます」と堂々とあいさつしました。会場には約60点を並(なら)べましたが、いくつもの作品が売れました。

「どれがいいかな」。大人も子どもも虎明さんの作品をじっくり見つめた

 初めての個展を終えた虎明さんは「ここまでよく頑張ったと自分をほめてあげたい。たくさんの人が作品を見てくれてうれしかった」と振(ふ)り返ります。「絵を描くことは大切な時間。ズボンや貝殻(かいがら)などにも描いてみたい」と今後の目標を話しました。