カンテが高級車メルセデスではなくミニクーパーに乗り続けるワケ

今冬のワールドカップで日本と戦うドイツ代表。主力であるDFアントニオ・リュディガーは今季限りでチェルシーを退団することになった。

その彼が『The Players' Tribune』に「親愛なるチェルシーへ」という長文を寄稿。エンゴロ・カンテについてこう綴っていた。

アントニオ・リュディガー(ドイツ代表DF)

「サッカー界で最も素敵なひとりについて話しておかなければいけないね。

もちろん、エンゴロ・カンテのことさ。

チェルシーに加入する前から、彼の美しい話は全て聞いていた。

常に笑顔だとか、いまだに古いミニクーパーに乗っているとか、絶対に声を荒げることがないとかね。

でも、サッカー界がどんなものか知ってるでしょ?実際にはそんな人間などいない。

プレッシャーも失望もあまりに大きいからね。

僕らはみんな人間だ。常にクールでいられる人間などいない。不可能さ。

で、エンゴロに会った。

こちらが何を言っても、彼はこっちを見てうなずく。僕の言うこと全てが本当に興味深いかのようにね。

彼がやることを文章でどう説明していいのか分からないな…」

「僕が話す度に彼は口で「Click、click、click」とやるんだ。

『NG(エンゴロ・カンテの頭文字)、食べ物でも買ってくるかい?』

『Click、click』

『NG、プレッシングにいく時さ…』

『Click、clock、click』。

彼はどこかがおかしいと思った。ある日、ついに聞いたんだ。

『NG、どうしてそんな話し方なんだい?どうしたんだ、兄弟』

『何が?』

『Clickのことさ、兄弟!どうしたんだ?』

彼は笑顔で『あぁ、僕の地域だとこうなんだ』と話してくれたよ。

彼が育ったパリ郊外では、いつもそういう発音をする。

『Yes』のスラングみたいなものさ。始まりは分からないけれど、そこではそうする。

『Yeah、OK、クール』っていうような感じさ。

とても面白いと思ったね。自分もドイツの似たような地区出身だから。

でも、ああいうのは全く聞いたことがなかった。ずっと彼にからかわれていると思っていたよ!」

「NGの全ては本物さ。ミニクーパーもね、みんな笑うけれど、裏には本当の話がある。

NGにとって、プレミアリーグで活躍するのが夢だった。

そんな彼がフランスからイングランドにやってきて、初めて買ったのがミニだった。

だから、彼にとっては単なる車じゃない。深い意味があるんだ。

いつも選手たちはそのことで彼と冗談を言い合っているよ。

でも、彼はとても礼儀正しく、聞きたいことをそのまま伝えてくれる。

誰ががこう言ったとしよう。『NG、どの車がクールか知ってる?メルセデスさ、兄弟。君が黒のメルセデスを乗り回す姿が目に浮かぶよ』。

すると、NGは純粋な目でこう言う。『そうだね、考えてみる。ありがとう、いいアイデアだね』と。

でも、彼は戯れているだけなのさ!

結局は彼が今後も10年はそのミニで練習場にやってくるのを見ることになるはずさ。

僕はいつも言っているんだけど…。謙虚さがあって、そして、NGがいるんだ」

謙虚の塊のような存在であるカンテにとって、ミニに乗り続けることには大きな意味があるようだ。

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なお、ベルリン生まれのリュディガーだが、母親がシエラレオネの出身。

彼は「僕は人生であらゆることを経験してきた。貧困、差別、疑いの目、スケープゴート。チームから除外されていた数か月後にCL優勝を果たした。自分の出生的にも意味がある。ただ、うちのロッカールームを見てくれ。多くの選手が同じようなバックグラウンドを持っている。お腹を空かせて寝るのがどんなものかを覚えている選手が多くいる。そこから、全員ブルーズになり、全員チャンピオンになったんだ」という話もしている。

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