EQS SUVはEQシリーズの中で最もメルセデスの顧客が求めるカタチを実現した! 大柄なボディサイズを感じさせないスタイリッシュな一台

メルセデス・ベンツが2022年4月19日に発表した新型電動ラグジュアリーSUVである「EQS SUV」。このEQシリーズの最新作の実車(量産前プロトタイプ)を、幸運にも見せてもらうことができた。実車をみて感じたEQS SUVの出来栄えをジャーナリストの竹花寿実さんがレポートする。

上質な乗り心地と快適性が感じられそうだ

全長5125mm、全幅1959mmと大柄なボディサイズを感じさせないスタイリッシュなデザイン

EQS SUVを見せてもらったのは、ドイツ・フランクフルト市内にあるメッセ・フランクフルト。2019年までIAA(フランクフルト・モーターショー)が開催されていた場所である。今回はフランクフルト市内で行われていたEQEの国際試乗会に合わせて、各国から集まったメディア向けにお披露目された。

ホテルからシャトルで向かったメッセ・フランクフルトは、イベントも行われておらず、ひっそりと静まり返っていた。メルセデスのスタッフに指示されたホールに入ると、厳重なセキュリティに守られてEQS SUVが置かれていた。

メルセデス・ベンツ EQS SUV

初めて目にしたEQS SUVは、とてもスタイリッシュだった。もちろん全長5125mm、全幅1959mmと大柄なのだが、全高が1718mmと低く抑えられていて、デザインも洗練された印象のため、全体的にとても都会的なイメージが漂う。

フロントマスクは、他のEQモデルにも用いられているブラックフェイスで、ルーフラインもEQSやEQEのような「ワン・ボウ(ひと張の弓)」とまではいかないが、緩やかなカーブを描き、傾斜したテールゲートにつながっている。前後のバンパーもボディとスッキリと一体化したデザインで、オフロードテイストはかなり控えめな印象である。

スタイリッシュな都会派SUV然としたデザイン

インテリアは物理スイッチをなるべく抑えた先進的な作りで高級感あふれる

インテリアも、車名のとおりEQSと同等のラグジュアリーな仕立てとなっている。インパネにはEQSから採用されているMBUXハイパースクリーンを搭載して、物理スイッチを最小限に抑えたデザインとなっている。

また最上級のナッパレザーやリアルウッドとアルミニウムを組み合わせたパネルをふんだんに使用。極めて先進的で上質な仕立ては、EQSと非常によく似ている。

物理スイッチを最小限に抑えたインテリア

キャビンは3列7人乗りで、2列シート仕様も選択可能だ。ホイールベースがEQSと共通の3210mmと長いだけあり、2列目はとても広々としている。ヘッドレストにはSクラスにも備わるフワフワのクッションが備わり、ラグジュアリーなことこの上ない。

3列目はそこまで広くはなく、天井もそれほど高くはないが、身長180cm程度の人でも問題なく着座できるスペースは確保されている。

またラゲッジには最大4つのゴルフバッグが積載可能だというから、3列シートSUVとして十分な実用性は確保されていると言っていいだろう。

EQS SUVのシートアレンジ

大柄なボディでも取り回し性を向上! 日本の道路でも見た目ほどは苦にならない最小回転半径11mを実現

メカニズムについては、車名の通り「EQSをベースにしたSUV」である。プラットフォームは、EQSやEQEにも使用されているバッテリーEV専用に開発された「EVA2」を採用。フロア下に搭載されているリチウムイオンバッテリーは、容量が107.8kWhでEQSと共通だ。

ただし、航続距離は最大で660kmと、EQS(WLTPモードで最大782km)には及ばない。それでも2.5トンを超える(EU仕様)車両重量やEQSよりエアロダイナミクスの点で不利なことを考えれば、十分に長い足を確保している。

航続可能距離は最大660kmを誇る

シャシーには、EQSやEQEにも採用されているリア・アクスルステアリングを搭載。低速走行時には、前輪に対して後輪が逆位相に最大4.5度、オプションでは最大10度も切れることで、取り回し性を高めている。

最大10度のモデルは、最小回転直径が11.9mから11mに小さくなるので、日本の道路事情でも取り回しはそれほど苦にならないかもしれない。

取り回し性も考慮したリア・アクスルステアリングを搭載

EQSなどと同様に、OTA(無線通信でデータを送受信すること)によるアップデートにも対応している。これはインフォテインメントシステムやADAS(先進運転支援システム)、エネルギーマネジメントなどのアップデートにとどまらず、一部の機能オプションも含まれている。まさに未来の電動ラグジュアリーSUVといったところである。

未来の電動ラグジュアリーSUVを体現したインフォテイメントシステム

日本市場への導入モデルはまだわからないが、現時点で判明しているラインアップは、360馬力と568Nmを発揮する後輪駆動モデルのEQS 450+と、合計で380馬力と800Nmを発揮する4WDモデルのEQS 450 4MATIC、そして544馬力と858Nmを絞り出すEQS 580 4MATICの3タイプ。標準仕様のほかに、内外装をスポーティに仕立てたAMGラインも選択可能となる予定だ。

現時点で3つのグレードが用意される

プロトタイプとはいえ、実車を見て感じたのは、EQS SUVは現時点で発表・発売されているEQシリーズの中で、「最もメルセデスの顧客が求めるであろうモデルとなっている」ということ。デザインは若干コンサバかもしれないが、先進的で高級感に溢れ、使い勝手の点で妥協はなく、航続距離も十分に長い。おそらく実際に乗ってもGLSを明確に上回る上質な乗り心地と快適性を実現していることは想像に難くない。

上質な乗り心地と快適性が感じられそうだ

「市場の状況が許せば」という条件付きだが、メルセデスは2030年の全販売モデルBEV化に向けて、着々とラインアップを拡充している。それらすべてが、とてもメルセデス・ベンツらしい出来栄えであることは恐れ入るとしか言いようがない。今後登場するEQシリーズも期待大である。

なお、EQS SUVは米国アラバマ州のタスカルーサ工場のみで生産される。今後はひと回りコンパクトなEQE SUVも登場する予定だ。

【筆者:竹花 寿実】

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