コロナで収入減少なのに副業禁止。29歳独身会社員がこれから取るべき貯蓄戦略とは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、29歳、会社員の独身女性。コロナ禍で残業代がなくなってしまったけれど、会社は副業禁止。貯蓄ができずに悩んでいるといいます。将来を見据え本格的に資産形成に取り組むための貯蓄と転職の戦略は? FPの氏家祥美氏がお答えします。


コロナが流行ってから会社が残業なしになり、給料が減り、またいい歳なので今後のために貯金をしようと思いましたが、なかなか月々貯められずにいます。何からしたらいいのかも分からず、周りから保険には入ったほうがいいと言われ保険に入ろうかも迷い中です。

ボーナスは、満額であれば夏冬合わせて50万円、毎年の業績に合わせて変動します。去年はギリギリ30万円でした。今年はあるか分からないと言われました。

今、相手もいないので、このまま独身かと思うと不安で少しでも働けるうちに貯金したいです。また会社が副業が禁止な為、副業出来る会社に転職しようかも迷い中です。なにからしたらよいでしょうか?もしよろしければアドバイスお願いします。

【相談者プロフィール】

・女性、29歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(北海道)

・毎月の世帯の手取り金額:16万5,000円(住宅手当て含む)

・ボーナス:満額なら夏冬合計50万円。昨年は30万円。今年は不明。

・毎月の世帯の支出の目安:14万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万8,000円

・食費:2万円

・水道光熱費:2万1,000円(年間の合計を割った数字です)

・通信費:1万円(サブスク含みます)

・お小遣い:2万5,000円

・その他:医療費5,000円、日用品5,000円、服・美容など6,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:最低1万5,000円+封筒積立1万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:20万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):93万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円

氏家:お金を貯めたいけれど、コロナで収入は減ったし、副業は禁止されているし、何から始めていいのかわからないという状態のようですね。まずは現在の家計の状況から確認していきましょう。

無駄遣いはしていないのに貯まらない理由は?

【毎月の家計の状況】
収入:16万5,000円
支出:14万円
貯蓄:2万5,000円

月収に対する貯蓄の割合は15.2%。ひとり暮らしでこの貯蓄率は合格ラインです。貯蓄は毎月2万5,000円ですから、12カ月で30万円になります。ボーナスは通常は夏冬合わせて50万円ありますが、コロナの影響で昨年は30万円、今年については先行きが見えません。ボーナスから年間20万円貯蓄ができた場合、年間の貯蓄合計額は50万円になります。

【支出内訳】
住居費:4万8,000円
食費:2万円
水道光熱費:2万1,000円(年間の合計を割った数字です)
通信費:1万円(サブスク含みます)
お小遣い:2万5,000円
医療費:5,000円
日用品:5,000円
服・美容など:6,000円

毎月の支出の内訳は上記のとおりになっています。北海道にお住まいということで冬場の光熱費が嵩むところですが、年間を通した平均額が2万1,000円なっています。全体的に見て特に目立つ特徴的な支出や大きな無駄はありません。

家賃は4万8,000円。29歳会社員女性の住まいとしては、決して高い金額ではありません。しかし、毎月の手取り月収に対する住居費率は29.1%。家賃の目安である25%を大きく上回っています。収入に占める住居費の割合が高いと、その分お金をためにくくなります。貯蓄ができないひとつの原因がここにあります。

続いて、住居費以外の固定費も含めた、固定費割合に注目してみましょう。ご相談者さんの家計に占める毎月の固定費は、住居費4万8,000円、水道光熱費2万1,000円、通信費1万円。合計7万9,000円で、月収に対する固定比率は47.9%です。固定比率が50%を超過すると貯蓄しにくくなりますが、いまのところ固定費全体の割合は問題ないと思っていいでしょう。

生活費半年分の貯蓄はあるものの、心細い金額

【貯蓄残高】
貯蓄残高:93万円

現在の貯蓄残高は93万円。ご相談者さんの生活費が14万円ですから、93万円÷14万円=6.6ということで、6.6カ月分の生活費は貯蓄できていることになります。リスクに備えるお金としては何とか基準をクリアできていると考えられます。

ただし、ご本人も「いい歳なので今後のために貯金」と書いているように、ライフイベント資金として考えた時には心細い金額です。現在の29歳という年齢と、毎年50万円貯められると家計状況を考えると、もっと貯まっていてもいいはずです。これまで貯めた貯蓄も、何か大きな出費があるときに消えてしまったのでしょうか。

今後のライフイベントが結婚なのか、もしくは資格取得や留学などの学び直しなのか、住宅購入なのかわかりませんが、何かをやろうと思った時にお金を使い、リスクに備える貯蓄まで消えてなくなってしまうのは危険です。

家計の状況を俯瞰してみると、倹約して生活している点は本当によく頑張っていますが、貯蓄が足りない状況です。これ以上、大きく節約できる見込みがないため、節約以外の方法を考えていきましょう。

お金を増やす方法は、「節約」「仕事」「投資」の3つに分けられます。今以上の節約が難しいので、「仕事」で収入を増やす道について考えていきましょう。

全国平均月収を目指し収入を上げたいところ

現在のご相談者さんの収入は手取りで月額16万5,000円です。この金額は世間相場からみてどうなのでしょうか。

総務省家計調査(令和2年度)によると、ひとり暮らしで仕事をしている34歳以下の女性の勤務先からの定期収入は24万7,000円、ボーナスを含めた年収÷12カ月では32万5,000円となっています。この32万5,000円のうち、税金や社会保険料として5万6,000円支払っていますから、1カ月あたりの手取り月収(ボーナスも含む)は26万9,000円
になります。

ご相談者さんの場合、月収(手取り)が16万5,000円、これにひと月当たりボーナス(手取り)が4万1,000円(50万円÷12カ月で計算)です。合計すると、ボーナスを含めた1か月あたりの手取りは20万6,000円と計算できます。

同年代の働く女性の全国平均月収に比べて、手取りで6万3,000円少ないことがわかります。この全国平均月収並みに収入アップができれば、いまよりも余裕をもって貯蓄ができるようになります。

転職の基準は「副業可」だけ?

副業や転職をして収入アップを目指したいという思いは、「会社が副業禁止なため、副業できる会社に転職しようか迷い中です」というご相談者さんの言葉にも表れています。

ただし、この言葉を読んで気になったことがあります。それは、「収入アップをするために給与の高い会社へ転職する」「やりがいのある会社に転職する」のではなく、たんに「副業できる会社」を求めているところです。

自分の仕事ぶりに対して今の給与が見合っていないというのであれば、適切に評価をしてくれる会社に移ることができれば収入はアップするでしょう。また、いまの業種や勤務先では限界がみえているから、もっと高い給与を得るために、スキルアップをして給与の高い業種に転職する、という考え方もあると思いますが、そのような気概もご相談者さんの言葉からは感じられません。

転職で収入アップを目指すやり方はいろいろあると思いますが、「副業をできる会社に転職」という言葉からは、本業での収入アップへの期待が見られないだけでなく、副業についても特に「これがやりたい」といったこだわりが見られないところがもったいないと思いました。

今後を見据えた転職の戦略を熟考しよう

このまま、同じ地域で今と同じ業種や職種でなんとなく転職活動をしても、会社を取り巻く状況は大きく変わらないため、大きく収入がアップするとは思えません。景気のいい業種を捜して転職する、時代に求められるスキルを身につけて転職するなど、なにか工夫や努力をしたほうが、これからの人生に役立つ転職ができるのではないでしょうか。

現在と似たような会社で「副業可」のところに転職した場合でも、これまで残業できずに空いた時間を、コンビニやファストフードなどの時間給のアルバイトで埋めることで収入を得ることはできるでしょう。それも悪くはありませんし、とても現実的な道だとは思います。ただし、それで同年代の独身女性の全国平均賃金との差額6万3,000円を埋めると考えた場合、時給1,000円だったとすると毎月63時間を副業に使うことになります。税や社会保険料の負担増を考慮せずに63時間です。かなりへとへとに疲れますね。

まだ29歳。ご相談者さんはたくさんの可能性を秘めていると思います。たんに時間を切り売りするのではなく、転職を考える今の時間を、よりやりがいを感じられる生き方、より自分の価値を高められる働き方を考える機会に変えてみてください。

医療保険は入るべき?注意点は?

「周りから保険には入ったほうがいい」と言われているということなので、最後に保険についてアドバイスをしておきます。保険は病気が見つかってからでは加入しにくいもの。元気なうちに加入しておきましょう。

ただし、現在の家計の状況を見る限り、保険にまとまったお金を割く余裕はありません。保険料としては月額2,000円以下で探してみましょう。例えば、民間の保険会社だったら、「定期医療保険」という商品があります。10年更新型の定期医療保険の場合、今後10年間は保険料が上がりません。現在の苦しい状況を脱するまでの数年間は定期医療保険に加入しておき、ひとまず安い保険料で病気や将来の妊娠出産のリスクに備えましょう。転職などを経験して家計が安定してきたら、一生保障が続く終身医療保険に入り直すといいでしょう。

民間の保険会社以外では、共済も選択肢に入ります。月額2,000円程度で入れるものが多く、組合員から集めた保険料が余ったら年に一度割戻金が戻ってくるため、実質の保険料はもっと安くなります。

そのほか、周囲の人からは、終身保険など貯蓄性の保険も勧められているかもしれません。しかし、貯蓄性の保険はお金を長期で保険に固定することになるため、貯蓄が少ないいまのご相談者さんにはお勧めしません。困ったときにはすぐに使える現金が必要です。当面は月額2,000円以下の保険料で、医療保険だけに加入しておき、あとは貯蓄を増やすことを心がけてください。

© 株式会社マネーフォワード