保育園で使った紙おむつ、自宅持ち帰りに苦悩 「体調確認」理由も衛生面懸念

使用済み紙おむつを回収日までためておく専用のごみ箱。園で廃棄するため新しく設置された(大津市内の保育園)

 子どもの体調確認などを理由に、滋賀県内の市町の8割が公立保育園で使用済み紙おむつを保護者に持ち帰らせている。民間会社の全国調査では、おむつを持ち帰らせている自治体の割合が滋賀は全国で最も高かった。自宅での処分を求められる保護者だけでなく、保育士たちの負担にもなっているとして、識者は公費での処分が適切と指摘している。

 京都新聞社が今年4~5月に県内19市町に取材したところ、大津市と草津市、近江八幡市以外の16市町は全公立保育園で使用済み紙おむつを保護者に持ち帰らせていると答えた。大津と草津は本年度、園での廃棄に変更しており、近江八幡は廃棄と持ち帰りの園が両方あった。

 持ち帰りとしている市町の多くは、便を家庭で確認することで健康チェックができたり、使用済みおむつの減少で排せつの自立を実感できたりすることを理由に挙げる。その一方で「おむつの処分費用が確保できない」、「ごみ収集日まで置いておく場所がない」など、園や自治体側の事情を明かす市町もあった。

 大津市は一部園舎の耐震改修をきっかけに、市立の全14園で園廃棄に変更した。男児(2)を預ける派遣社員の女性(35)は「すごく助かる。おむつを入れたかばんは臭くて、帰りにスーパーに寄るのがためらわれるくらいだった」と持ち帰りの廃止を喜んだ。

 大津市内の保育園は昨年度まで、トイレに園児分のバケツを置き、おむつ交換のたびに保育士が仕分けして保管していた。園長(57)は「仕分けに間違いがあってはいけないので、(廃棄方法の変更で)保育士も気持ちや作業面で楽になった」と話す。排せつの変化は帳面などで連絡することで、保護者に伝えることは可能という。

 市立全13園で園での廃棄に変えた草津市は、大型ごみ箱などの備品購入に約90万円、ごみの処分費が年間約200万円増えた。だが、担当者は「感染症対策にもなる」と持ち帰り廃止の利点を挙げる。

 民間会社がつくる「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」(大阪市)が今年2~3月、全国1741市区町村に調査したところ、使用済みおむつの持ち帰りが「あり」とした市区町村は575(39%)で、「なし」は718(49%)だった。滋賀県内で持ち帰りにしている市町の割合は89%で全国で最も高く、京都府内の自治体は73%で全国4番目だった。滋賀大の安井惠子非常勤講師(幼児教育)は「汚れたおむつを自宅に持ち帰るのは不衛生。便の状態を伝えるなら口頭や写真で十分だ」とし、「保護者や保育士の負担を減らすためにも公費で廃棄すべきだ」としている。

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