どん底のフリー走行から2秒の改善。阪口晴南が学んだ“セッティングの導き方”【SF第4戦予選】

 2022年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦オートポリス。開幕戦富士から後方に沈むことが多かった阪口晴南(P.MU CERUMO・INGING)が、今大会では予選Q1のBグループで2番手に食い込むパフォーマンスを披露した。予選Q2では11番手となり、最終的には悔しさを滲ませる結果となったが、阪口はここまでの不調から脱出する“大きなヒント”を掴んだようだ。

■「やっと良いコメントを残せる日がきた」

 昨年はフル参戦初年度ながら、2度の2位表彰台を獲得する活躍を見せた阪口。しかし、今年は一転して開幕から苦戦が続いていた。予選では3戦連続でQ1敗退。第3戦鈴鹿ではQ1のBグループで10番手に終わり、後方グリッドに沈むレースが続いていた。決勝では追い上げを見せるものの、第1戦と第3戦の12位が最上位と、未だポイント獲得には至っていない。

 今回のオートポリス大会でも、朝の土曜フリー走行ではフィーリングが良くない状況で、トップから2.4秒差の20番手という結果に。ひとつ上のポジションにいる三宅淳詞(TEAM GOH)から1秒遅れているという状態だった。

 午後の公式予選も苦しい展開になるかと思われたが、Q1のBグループに出走した阪口は、フリー走行から約2秒も改善、1分25秒038を叩き出し2番手でQ1通過を果たした。続くQ2でも上位に食い込むタイムが期待されたが、コンディション変化に対するアジャストがうまくいかず、最終的に11番手でセッションを終えた。

 それでも、予選を終えた後の阪口は「やっと良いコメントが残せる日がきたなと思います。ここまで1セッションも良い感じで走れていなかったので。Q1はトップではなかったですが、上出来なタイムが出たと思います」と、これまでの3戦とは明らかに違う笑顔をみせていた。

 フリー走行から予選までの短時間で、大きな改善を遂げた阪口。その改善には立川祐路監督と石浦宏明アドバイザーの的確な助言が、助けになったと阪口は語る。

「立川監督とか石浦アドバイザーにアドバイスをもらって、そこで軌道修正をしたことが予選の結果にかなり効きました。具体的には“セッティングの導き方”です。すごく細かい話になるのですが、タイヤ(のパフォーマンス)が落ちていったり、路面が変わりつつある中で、クルマのちょっとした変化に気づけるかどうか……というところです。僕も気づいたことをバーっと言っているんですけど、そこで次のセッションに対して必要としていることが何なのかというのを、僕も言葉では伝えているんですけど、何を絞って、何でいくのか……。そこを、おふたりにかなり補ってもらいました」

 実際にどういったアドバイスをしたのか。その辺を石浦アドバイザーに聞いた。

■“反省点”となったQ2は「分析が必要」

「ずっと調子が悪く、今朝のフリー走行でもいろいろとクルマを変えているのを、僕も無線で聞いていました。コメント的にもずっと迷い続けているというか、明確に『こっちの方が良い、悪い』というコメントじゃなくて、ずっと『グリップしていない』とか、抽象的な感じのコメントが多かったんです」

「結果的にフリー走行中に調子が良くならなかったので、自分の経験値から『逆に悪かった要素があるんじゃないのか?』ということで、『これは悪くなかった?あれは悪くなかった?』というのを一緒に話し合ったりしました」

「僕もスーパーGTで、昨年調子が悪かったのが、今年はちょっと良くなってきたりとか……。そういう経験値の部分で、けっこう似ている話があったので、予選に向けて『こういう方向はどうかな?』というのを、その時は晴南はいなかったのですけど、エンジニアとそういう話をしていました」

「それで予選Q1にいったら、晴南が『え、2位ですか?』と無線で聞き直してくる感じでした。Q2では逆にタイムが落ちてしまったんですけど、フリー走行と予選での流れの違いが、すごく大きなヒントになったというのが、みんな共通で持っていた感触でした」

 こうして、チーム全員が協力して、改善に取り組んだことで、復調の兆しが見えてきたのだが、阪口はこれを“自分の反省点”だと捉えており、早速Q2でうまくいかなかった部分の分析を進めたいと話した。

「こうして、ステアリングを握るまでのところで、もう少し自分でもなんとかできるところがあるのではないかと思います。そこは力不足を感じましたが、僕ひとりで戦っているわけではないので、何か壁にぶち当たった時も、おふたりがいてくれて、一緒に立ち向かってくれるので、そこは心強いです。ただ、これに甘えることなく、自分自身もしっかりとやっていかなきゃいけないと思っています」

「Q2ではタイムを落としてしまったので、そこは分析が必要です。もう一度、データと自分のフィーリングを照らし合わせて、何が良くて、何がダメなのかを判断していく必要はあります。あのクルマ体自体が、一瞬も速く走らない訳ではないということを確認できたのは、すごく良かったです」

 いずれにしても、Q1で速さをみせられたことが、自信を取り戻すきっかけのひとつにもなっている阪口。この流れをさらに加速させるべく、石浦アドバイザーはチーム全体で取り組んでいきたいと語った。

「まわりの人からも『晴南どうしたの?』と聞かれていて……僕たちもなんて答えていいか分からない状況でした。本当にどこが問題なのかを、みんなで取り組んでいるところで、正直辛かったですが、その中で光明が見えたなと思います」

「(今日の結果が今後の起爆剤に)なればいいなと願っております。晴南は昨年も上位を走って表彰台にも登って、彼が持っているパフォーマンスは、みんなわかっていると思います。それで、下位にいるというのはチームの責任でもあるので……。立川さんも僕も含め全員で、なんとか本来のパフォーマンスに戻したいなと思っています」

2022スーパーフォーミュラ第4戦オートポリス 阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)

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