『Burnt Weeny Sandwich』:ザッパがフュージョンとドゥ・ワップを組み合わせたご馳走のような逸品

© ユニバーサル ミュージック合同会社

きわめて多作なことで知られるフランク・ザッパ(Frank Zappa)は、1969年10月10日の『Hot Rats』のリリースから間もない1970年2月9日に早くも次のアルバム『Burnt Weeny Sandwich』をリリースした。

厳密にはマザーズ・オブ・インヴェンション(The Mothers of Invention)名義の作品に当たる『Burnt Weeny Sandwich』は、『Hot Rats』のレコーディング・セッションで収録されたものの、発表に至らなかったトラックを集めたものだったが、一方でジャズ・フュージョンや実験音楽、アヴァンギャルド・ロックといったジャンルの可能性を広げた重要なアルバムである。[(https://www.udiscovermusic.jp/stories/frank-zappa-quotes-feature)

ほかのアーティストが最新のスタジオ技術を使いこなせず、ごまかしに走ったり苦戦したりしている中、常人と一線を画すザッパの関心は作曲や演奏それ自体に向けられていた。そして彼は実験的なクラシック音楽と同じくらい、理屈抜きにわかりやすいドゥー・ワップ (そこに突き抜けた馬鹿馬鹿しさがあるのは言うまでもないだろう) も愛好していた。

そのためか、『Burnt Weeny Sandwich』の最初と最後にはそれぞれドゥー・ワップの名曲が配されている。冒頭を飾ったのは陽気な名演となったフォー・デューシズの「WPLJ」 (タイトルは”White Port and Lemon Juice”の略) 、アルバムを締めくくるのはジャッキー&ザ・スターライツの「Valarie」だ。この曲は「My Guitar Wants to Kill Your Mama」をB面に配してシングル・カットもされた。

しかし、アルバムの中核を成すのはこれと真逆の楽曲である。その「Little House I Used To Live In (俺が住んでいた小さな家) 」は、バンドが緊迫感溢れる演奏を存分に見せつける大作だった。

この「Little House I Used To Live In」の最後のパートは1969年6月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでレコーディングされたものである。そこにはザッパが 「ここにいる全員が制服を着ているよ (everyone in this room is wearing a uniform) 」と冗談を言って観客をなだめる様子も収められている。

同曲でザッパは多重録音したピアノに合わせて猛烈なオルガン・ソロも披露しているが、ジミー・カール・ブラック、イアン・アンダーウッド、ホーン・セクションのガードナー兄弟、ドン・”シュガーケイン”・ハリスとった面々も、並大抵のロック・バンドには到達できないハイレベルなパフォーマンスを披露している。

その後、ロサンゼルスで行われたレコーディング・セッションには、後にリトル・フィートのフロントマンを務めるローウェル・ジョージも合流。ジョージがギターとヴォーカルを追加録音したほか、ロイ・エストラーダ (彼もまたローウェル・ジョージとともにリトル・フィートの結成に参加している) も「WPLJ」のスペイン語ラップを含むヴォーカルとベースを演奏した。

ザッパの遊び心が炸裂する『Burnt Weeny Sandwich』は、あっという間に聴き終えてしまうアルバムだ。連続した「Igor’s Boogie, Phase One (イゴールのブギ その1) 」と「Overture To A Holiday In Berlin (ベルリンの休日 序曲) 」の2曲はそれぞれの演奏時間こそ短いが、同じような空気感を持っている。

他方、続く「Theme From Burnt Weeny Sandwich」は、「Lonely Little Girl」 (1967年作『We’re Only In It For The Money』収録) のギター・パートを改作したもの。そのため、この「Theme From Burnt Weeny Sandwich」ではビリー・マンディがドラムを叩いている可能性もある。ザッパとパーカッション奏者のアート・トリップがさまざまな打楽器で彩りを加えたこの曲は、原曲を見事に再利用した1曲である。

『Burnt Weeny Sandwich』のオリジナル盤LPの初回プレスには、両面三つ折りの大きな白黒ポスターが付属しており、現在ではコレクターたちの間で人気のアイテムとなっている。パンキッシュなモンタージュで仕上げられた同作のアートワークを手がけたのは、奇抜な作品で知られるデザイナーのカル・シェンケルである。

他方、怪しげで皮肉めいた響きがさまざまな憶測を呼ぶアルバムのタイトルは、実のところザッパがスタジオで好んで食べていた軽食のことなのだという。フォークに刺したウィンナーをストーヴの火でこんがり炙り、白いパンで挟んで食べていたのだそうだ。

そしてアルバム『Burnt Weeny Sandwich』も、聴き手を選ばず誰もが好きになってしまう、ご馳走のような逸品である。

Written By Max Bell