不動産投資と税金還付の関係、よくある会社員向け広告文「節税対策になる」は本当なのか?

会社員向けに案内されているような不動産投資のキャッチコピーは「家賃収入で不労所得」「不動産を購入して節税対策」「老後の資金作りに向いている」など、どれも魅力的です。しかし、投資にはリスクが付き物で、不動産投資の仕組みを理解していないと、リスクの対策もできません。

そこで、不動産投資とはどういったものなのか、またどのようなリスクや罠があるのかを見ていきましょう。


不動産投資で区分所有を販売している理由

不動産投資と言ってもその物件は多岐にわたります。会社員向けに紹介される物件で多いケースは新築ワンルームや新築1LDK、2LDKなどの区分所有と呼ばれる1部屋の購入です。

区分所有を販売している理由としては、一般的な会社員の場合、区分所有くらいのサイズ感であればローン審査を通ることが多いため、販売しやすい区分所有を提案することになります。また、新築物件は入居者がいないためまとまった数を扱えることや提案時の見栄えが良いこと、新築プレミアムと呼ばれる上乗せ価格が入っていることが多く、不動産会社として利益が出しやすいこともあるでしょう。

不動産投資の流れ

不動産投資における、購入前から購入後までの大まかな流れは下記になります。

1:物件を探し、見つける
2:物件の現状や周辺を確認する、新築で建設中の場合は周辺を見ておく
3:周辺の家賃相場を確認する
4:家賃から想定利回りを計算する
5:不動産売買契約を不動産仲介業者と取り交わしつつ、金融機関に不動産ローンを打診する
6:ローンが通り契約成立
7:物件を管理する(一般的には購入した不動産会社が管理することが多い)
8:退去や不具合が発生した時に原状回復や修理などを対応する
9:年間の収支を計算して確定申告を行う

5でローンを打診する際、一般的には「ローン特約」という、ローンが通らなければこの契約は流れるという特約を付けます。これにより、不動産ローンが通らなかったら場合は売買契約が成立しない、買主側を守るための制度といえます。

ローン打診時の注意点

不動産の売買価格は高額であるため、多くの会社員の方はローンを利用することになるかと思います。このローンを打診する際に、注意すべき点がいくつかあります。

まず不動産ローンではなく、住宅ローンで購入を考える方がいますが、住宅ローンは投資用不動産には使えません。これは契約違反になるため、仮にローンが通ったとしても契約内容の違反によりローンの一括返済などを求められることがあります。投資用不動産に使えるのは基本的に不動産ローンだと覚えておきましょう。なかには、住宅ローンを勧めてくる不動産会社もあると聞きますが、そういった企業と付き合われるのはオススメしません。

また、金融機関への提出書類なども正しいものを使ってください。少し前に大問題になりましたが、銀行預金の数字が変更されていたケースなどもありました。そのことを契約者がどこまで把握していたかはわかりませんが、あとで問題にならないように、正しい資料を提出してください。この部分で何か提案してくる企業とも付き合いはオススメできません。

不動産投資にかかる主な費用

不動産投資への理解を深めるために、費用面について主だったものを列挙します。

  • 不動産会社への仲介手数料(物件価格の3%+6万円)
  • 不動産ローン締結時の諸費用
  • 不動産取得税(おおむね半年後)
  • ローンの利息(毎月)
  • 固定資産税(毎年)
  • 管理会社への管理費(毎月)
  • 物件に対する損害保険料(毎年や毎月など)
  • 退去や不備が出た場合の原状回復費
  • 新規入居者募集時の仲介業者への広告宣伝費(家賃の1~2ヵ月分が目安)
  • 利益が出たときの住民税や所得税など
  • 確定申告時の税理士報酬

この中で負担感が大きいのは、出費をあらかじめ予想しておくことが難しい原状回復費用です。ここで手を抜くと、次の入居者が決まりにくくなることがありますが、管理会社任せにすると費用が高くなる傾向にあるので、ご自身で信頼できる業者を探すことも費用を抑える手段の一つです。

また確定申告も、ご自身で申告することで税理士報酬分を節約できます。毎年のことですし、お金への理解を深める一助にもなります。

不動産所有と税金還付の関係

「不動産投資をすると、払いすぎた税金が還ってくる」というのは、どういった仕組みなのでしょうか? この説明には、課税の基本を知っておく必要があります。

まず税金が還付されるということは、そもそも納税をしている必要があり、その納税は皆さんが日ごろ仕事をして得ている給料があるからです。

例えば給与による収入が600万円、手元に入る所得を500万円、元々の納税額が100万円だったとします。ここに不動産所得でマイナス100万円が発生すると、給与所得と不動産事業は損益通算できるため、下記のようになります。

給与所得:500万円+不動産所得:-100万円=総所得400万円

元々は所得500万円に対して課税され納税額が100万円でしたが、不動産所得のマイナスを損益通算した結果、総所得が400万円に減っているため、課税対象金額が100万円減るので、税率が同じ20%だとすると納税額は20万円下がり、80万円になります。この時に差額の20万円が還付されます。

これが不動産投資における還付の簡単な流れです。実際には不動産の減価償却が関係するので一概に言えない場合もありますが、単純に考えれば不動産投資が赤字になっている状態であり、「払い過ぎた税金が還ってくる」ことを不動産投資の目的とするならば、赤字でいることが前提になります。節税という利益を得ようとして、それ以上の赤字を出し続けていては、投資を始めようと考えた本来の目的と乖離してしまうのではないでしょうか?

不動産投資と老後資金の関係

家賃収入は魅力的な言葉であり、これがあるから不動産投資は老後対策に向いているとの考えがありますが、基本的にそんなに簡単な話ではありません。これはシンプルな話で、皆さんが老後を迎える時は物件もそれなりに年数が経過しているため、満足な家賃を取れるかわかりません。むしろマンションやアパートの修繕積立金が年々上がるように、経年劣化による維持・管理のコスト増加を想定しても不思議ではありません。

また、基本的には物件そのものの価値は、築年数と共にどんどん下がっていきます。いざ「売ろう」と考えたときに、期待していたほどの金額にならないことはよくあります。しかも不動産価格は将来のその時にならないといくらになるか相場が全くわかりません。あるのは予想だけです。

不動産投資は物件を買って終わりではなく、買った物件の維持や管理、そして物件の入れ替えを計画的に行っていかなければなりません。

不動産、自宅用と投資用での考え方の差

不動産を自宅用として購入した場合、考えなければいけないことは、収入や資産と住宅ローンのバランスです。では、不動産投資の場合はどの数字を見るのか。それは複数ありますが、絶対に確認しないといけないことは家賃と物件価格の利回りです。

例えば物件価格が2,000万円、年間の家賃収入が100万円の場合、利回りは下記のように計算します。

家賃収入:100万円÷物件価格:2,000万円×100=利回り:5%

ここで計算した利回りを「表面利回り」と呼び、物件検討の際は最低限計算して、テーブルに乗るかどうかを考える必要があります。利回りは物件ごとに異なりますが、属性ごとにある程度の幅に集約されがちです。その中でいま目の前の物件利回りが状況を加味した場合どうかが感覚的にわかるようになることは重要です。

なお、利回りには経費などを含めた「実質利回り」もあります。こちらは「(家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100=実質利回り」と計算し、より実態に即した利回りを計算できます。新築物件の場合は、設備も新しいのでメンテナンスのコストが低く、管理費などもまだ決まっていない場合もあるため、諸経費などを含めない表面利回りを用いるケースが多いです。

ちなみに筆者であれば、新築区分所有で表面利回り5%物件が目の前にあったとしても検討にも上がりません。理由は不動産ローン金利や諸経費など、実質利回りを考えた場合に収支がマイナスになる可能性が高いと感じられるからです。

不動産に限らずですが、投資を検討する上でマイナスの可能性が高い先に投資しようとは思えないのは、皆さんも同じではないでしょうか?


不動産投資は多額の現金や借り入れが必要になるため、致命的な失敗をするとリカバリーが困難になることがあります。そのような状況にならないためにも、マイナスを前提とするような「罠」にかかることなく、しっかりと利回りを考え、見分ける力をつけておく必要があります。

世の中そんなに簡単に楽をしてお金が手に入ることはありません。経済的な安心を手にするために、判断できる知識をつけた上でチャレンジしてください。

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