河北春秋(5/22):鹿折川上流域の瀬音を聞きながら山道を登る…

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 鹿折川上流域の瀬音を聞きながら山道を登ると、閉鎖された坑道入り口にたどり着く。気仙沼市の鹿折金山跡。周囲にはトロッコの軌道跡や鉱石を投棄した「ズリ山」も点在する。かつて人々が情熱を傾けた「夢の跡」だ▼「モンスターゴールド」の異名を取った世界最大級の金鉱石が1904年、ここで産出された。重さ2.25キロ、金含有率83%。通常は鉱石1トンで耳かきですくうほどしか金が採れないというから、まさに規格外だ▼当時米セントルイスで開かれた万国博覧会に出展され注目を集め、その後行方不明に。日露戦争の戦費調達に使われた可能性もあるという。かろうじて6分の1の塊が産業技術総合研究所地質標本館(茨城県つくば市)に保管されている▼幻の輝きを再現しようと今春、気仙沼市観光協会が発見時の推定模型を作った。残った写真などを手掛かりに金箔(きんぱく)などを貼って仕上げた外観は実にリアル。鹿折金山資料館で公開している▼マルコ・ポーロが東方見聞録で紹介した「黄金の国ジパング」は有数の産金地だった奥州の歴史と深く関わる。鹿折金山は半世紀前に閉山したが、人間の体で言えば額程度の面積しか採掘されていないとか。今も「怪物」が眠っているのでは-。金価格高騰の折、想像するだけで胸が高鳴る。(2022.5・22)