値上げに追い討ち?熱波で農作物への影響懸念、物価上昇を景気浮揚に繋げる一手とは

インドと隣国のパキスタンに、早すぎる熱波が到来しました。

“世界一蒸し暑い” “人類が住むには暑すぎる町”などとも言われているパキスタン北部のジャコババードでは、2022年4月30日と5月1日に、2日連続で気温が49.0度まで上がりました。ちなみに3月も記録的な暑さとなって異常気象が引き起こす農産物への影響が心配されています。

今月に入り、特にインドでの高温に対するニュースが増えています。


小麦の先物価格が最高値を記録

北西部の道路では62度に達する地域もあり、一般的に50度を超えるとアスファルトが溶けると言われています。この熱波は、低気圧が発生しなかったために、雨が降らず、晴天が続いたことなどが原因のようです。

今回の熱波で打撃を受けているのが農作物で、特に小麦へのダメージが大きく表れています。インドは世界で2番目に多くの小麦を生産していて、インド北部には広大な小麦畑があり、春は生育に重要な時期ですが、熱波の被害が広がっているようです。

一方でロシア(世界3位の小麦生産国)によるウクライナ(世界8位の小麦生産国)への侵攻で、世界的な小麦不足の状況もあり、5月17日には小麦の先物価格が今年3月に14年ぶりにつけた最高値をさらに更新しました。インド政府は世界的な小麦価格の値上がりで市民生活への影響が広がっていることから、5月13日、国内の食料安全保障を図るためなどとして小麦の輸出を直ちに禁止すると発表しました。輸出していた分はインド国内に振り向けることで、自国の安定供給を促す方針です。

日本の消費動向

国内の動きとしては、自民党が取りまとめる食料安全保障強化策の原案が明らかになりました。原材料価格の高騰対策で輸入に頼っている小麦や大豆を増産し、肥料を安定的に確保するため調達先を増やすことや米粉の生産を増やし、国産の原料への切り替えを進めていくことなどが盛り込まれています。ただ、直ぐに増産は難しいのが現状だと思います。

総務省が5月20日に発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.4で前年同月比2.1%上昇となり、7年1ヵ月ぶりに2%を超えました。消費増税の影響(いわゆる増税前の駆け込み需要)を除けば13年1ヵ月ぶりの高水準となっています。資源高で電気代やガソリン価格など、エネルギー関連が大きく上昇した事に加え、原材料高で食料品も値上がりしました。

消費者物価指数の「2%上昇」は、日銀が目標としてかかげている数字です。物価上昇の割合が安定して上がることで、企業収益の拡大や賃上げにつながり、経済が活性化し好循環が生まれると考えられているからです。

6月から既に値上げが決定しているのは小麦粉や食用油、酢などです。また、カップ麺、袋麺、菓子類、茶類、ペットボトルや紙パック飲料水、酒類、などの個別商品の値上げも実施され、食生活に直接影響のあるものばかりです。

私のサイトでは6月から値上げする商品の詳細を掲載しています。参考にして頂ければ幸いです。


冒頭部分で触れた熱波が本格的に作物へのダメージにつながってしまうと、更なる値上げもあるかもしれません。日本は食品の原材料など、ほとんどを輸入品に頼っているため、世界的に物価上昇が起こると画一的に反応せざるを得ない状況です。家計を預かる方にとっては、日々の献立に頭を悩ませることが増えそうです。

経済成長の鈍化が浮き彫りになっている日本では物価上昇はかなりの痛手ではありますが、企業が賃上げに踏み切れば、日本の物価上昇は他国と比較して小さいだけに、景気浮揚も考えられます。

消費者物価指数の「2%上昇」をきっかけに、経済の好循環を期待したい気持ちです。

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